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真夏の精神修行 5

 足かけ2日がかりの草取りも無事終えて、オレたちはすがすがしい満足感に浸っていた。
 作業終了後にまた昼食をごちそうになって、それから少々昼寝なんてさせてもらって。そんなこんなで時間はもう、ひぐらしの鳴くころになっていた。

 「じゃあ、また寄らせてもらいますんで夜露……もとい、どうぞよろしく」
 「はいはい、またいつでもいらっしゃい」
 と、ダイゴのご両親に見送られてオレたちは鬼浜寺を後にしたのだ。

 そして、のんびりと町まで歩いていった。
 見送りがてら、と言ってダイゴもついてきたので、4人で肩を並べて。
 「それにしても、想像以上に満足だな、気分的に」
 「そうか。それならばこちらとしても良かった。こき使って気が咎めていたので」
 ダイゴが安心したふうに言った。

 「オレもひとまわり精神的に逞しくなったっス!」
 「ほお、言うね、ノブオ」
 「そりゃもう、ハヤトさん。暗がりに行くときはダイゴさんの後ろに隠れてたら安心ってことがわかっただけで、もうオレ最強っス!!!」
 ノブオは相変わらずの調子だった。ある意味誰より逞しいかもな。

 「なあ、今日は花火とかやらねえ? 打ち上げってことで」
 急に思い立ったように、リュウジが言った。
 「お、花火か。オレ、今年はじめてだ」
 「わ~い、オレも初っス~! やりましょう!!!」
 ここ2日が苦しいながらも楽しかったから、確かにこのまま家に帰るのはもったいないような気がオレにもしていた。

 「おし。じゃあ決まりだ! ダイゴはどうする? 帰らねえとマズいか?」
 「いや、問題ない。この人数で2日もあれだけ働いておけば、しばらくは親父の覚えもめでたいはずだ。少々遅くなっても平気だろう」
 「そう来なくちゃ!」
 オレはダイゴの肩をぽんと叩いた。ううむ、やはりこの筋肉は雑巾がけが作ったんだろうか。オレも精進しよう。

 「まあ、暗がりに行くときは、ダイゴがいねえとノブオが最弱になるからな。いてくれて助かるぜ。なあ、ノブオ?」
 「もう、兄貴ぃ~~~」
 などと、冗談交じりにオレたちは行きつけのコンビニに向かったのだ。
 
 「お──?」
 歩き慣れた道すがら、ときどきダイゴが背後を気にしているような素振りを見せた。気付いてオレは問うてみる。
 「何? どうかした? ダイゴ」
 「いや。気のせいだろう」
 「何だ? 何か出たか?」
 「ぎゃ~~~、兄貴、やめてくださいよぅ」

 「いや──背後に気配を感じたような。だがおそらく気のせいだろう」
 なんだか一瞬、ぞーっとした。
 「なあ、ノブオ。ダイゴの後ろって、あんまり安全じゃないかもな」
 「うえ~ん、ハヤトさん。オレもそんな気がしたっス~」
 「ははは、からかいがいがあるなあ、ノブオは」
 オレは笑い混じりに弱気を追いやってみた。

 だが──わずかな時間の後、オレたちは気付く羽目になったのだ。
 ダイゴの感じた背後の気配が、まったくもって気のせいなどではなかったことに。

 コンビニに着いたオレたちは、打ち上げ花火にロケット花火、線香花火、ネズミ花火、それからお子さま向けの手持ち花火セット──しこたま夏をかごに盛り、レジで会計を済ませた。

 と、ご丁寧にレシートを改めていたリュウジが、きっと振り返って言う。
 「おい、ちょっと待て。誰だよ、へび玉なんてかごに入れたのは?」
 「ち、違います、兄貴。オレじゃないっス」
 「ああ、それオレだ」
 右手を挙げて、オレは応えた。
 「おい、ハヤト。これは明るいところでやるもんじゃねえの? 暗がりでやっても面白くねえだろ?」
 リュウジに指摘されて──そう言われればとようやく気付いたオレがいる。

 「あ、そう言えばそうか」
 「どこかとぼけてるんだよなあ、ハヤトは」
 「あははは、ホントだ~」
 「うむ。ハヤトらしい」
 「オレらしいって……ダイゴはいつもオレをどう見ているんだ?」
 なんだかみんなに笑われた。オレって、そういうキャラクターだったんだな……。

 みんなで手分けして袋を持って、いつもの河川敷へ向かう途中のこと。
 ゲーセンの裏手にある公園の前にさしかかったときだった。
 「おい待て、貴様等」
 オレたちを足止めする獰猛な声。
 それを合図に、小路に停めてあった数台の単車の影から人影が姿を現した。

 「ほう、ご挨拶じゃねえか」
 「ふん、挨拶なんてするかゴラァ!」
 声の主は、言わずと知れたコウヘイだった。当たり前のように暗黒一家も揃い踏み。
 
 しばし雄弁な沈黙を挟んで対峙するリュウジとコウヘイ──それへ割って入ったのはダイゴだった。
 「お主ら、なにゆえに尾けてきた?」
 コウヘイはちらりと視線をダイゴに移す──が、それへの応えはない。

 ただ、なんとなく、だが──ダイゴを見たときのコウヘイの表情が一瞬硬くなったような気がオレにはしていた。

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