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風にのって鈴の音が 8-1


 勝負宣言もなく行きがかり上始まった、3対1のバトル。
 奴らはおそらく遊びの延長なんだろう。対するオレには急がなきゃいけない理由がある。
 こちらはオレの単騎という不利があろうとも、そこはオレのプライドが負けを許すわけはない。
 だって仮にもオレは特攻隊長なのだから。
 そして敵方3人の中には、オレの宿敵、向こうの特攻隊長・ハンゾウの姿がないのだから。
 
 3人のうちの2人までを交わして、あとはコウヘイとの一騎討ちまで漕ぎつけた。
 いよいよ雪が本格的に降ってきている。
 強い風に舞いながら路面に落ちていく雪のかけらを蹴散らして、オレは懸命に先へ先へとマシンを駆る。
 今日のコウヘイには余裕があった。遊びの延長と考えるところからくる、それは余裕に違いない。こんな天気でもいつもどおりのノーヘルがそれを物語る。
 余裕という面に関してはいつもだったらオレがひけを取るようなことはないんだけれど、今日は違う意味で追いつめられていたというか、本来ならば余計なことに気を取られている場合じゃなかったから、焦りがあったんだと思う。
 右側からマシンを寄せてくるコウヘイを、一瞬やり過ごし損ねた。
 ハンドルが大きく左にとられる。
 すぐさま体勢を戻そうと試みるけれど、そのときにはすでにコウヘイのマシンはオレの前を遮っている。
 
 嗚呼――こんなときでさえなかったら。
 胸ポケットにいるフウカを想うと、そこが隙になるのは承知。オレの心の動きなんて知るよしもないコウヘイに、敢えてふたたび並ばれて横やりを入れられる。
 けれどもオレは踏ん張らなきゃいけない。
 今日は誰も助けてくれない。というよりも、オレは単車勝負においては誰の助けも必要ないだろ?
 自己暗示だって重要なテクニックなんだから――オレがいちばん速いんだから!!!

 そう意識したとき。
 オレのマシンはまるで追い風を受けたかのように、否、まさにそのときひときわ強く吹いた風に煽られて、ぽんと前に出たように思えた。車体がやたらと軽くなったような錯覚。
 同列に並んでいたコウヘイのマシンも同じように煽られなければ嘘だとは思うんだけど、どういうわけかオレひとりに吹いた、それは追い風だったようにも感じた。

 とにかく、理屈なんてどうでもよくなっている。
 オレはこの場を切り抜けようと必死で体をマシンに預けた。
 もう信じられるのはお前しかいなのだから――と言い聞かせて。
 オレをこのまま先へ急がせてくれと祈りながら、エンジンを全開へと導いた。

 最初に振り切ったゴンタとタカシはもとより、気づけばコウヘイをもはるか後ろに置いてきていたみたいだ。
 オレの周りにまとわりつく派手な単車の姿はひとつもなかった。
 そればかりか、さっきまで国道を埋めていた悪天候で先を急ぐ車の列さえも、まるで神隠しにでも遭ったかのように消えていたんだ。
 不自然なほどの静寂と、不自然なほどの空白感がオレの四囲を満たしている。

 前を見ても後ろを見ても、見慣れた国道4649号線には人影も、車の姿も見あたらない。
 ただごうごうと唸る強い風に舞う雪の白い礫だけがオレの視界をちらちらと遮っている。
 思い立って路肩に単車を停めて、胸ポケットをのぞき込む。
 フウカの紺色の瞳がオレを見ていた。
 相変わらず風が音をたてている。今日のオレはメットもかぶっているし本当の意味で聞こえたのではないと解るけれど、オレは聞いたんだ――先を急いで、と。近頃では耳に馴染んだかわいらしい声を。
 まるで鈴を振ったときのような、かわいらしい音色を――。

 うん、了解、と合った視線の先にそう応えて、オレは先を急ぐことにする。
 きっと近いと予感しているんだと思う。フウカの目指すところが。
 そしてオレは不自然なほどに無機質に思える海沿いの国道を突っ走ったんだ。
 しばらく先へ行くと、左手に暗黒水産高校。そして右手には『夕映え木立』。
 何かがあるなと鈍感なはずのオレにすら、鳥肌のたつような予感があった。


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