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風にのって鈴の音が 8-2


 以前にも奇妙な体験をした暗黒水産の向かい側、『夕映え木立』が見えるところまで来た。
 いよいよ吹き付ける風雪は激しさを増している。
 もともと雪が降ること自体がそう多くない海沿いの鬼浜町を包む天気は、吹雪と呼ぶにふさわしい感じだ。
 ここで単車を停めないといけないような気分がしたので、オレは己の第六感に従うことにした。
 
 「フウカ」
 呼びかけて胸ポケットに視線を落とす。中からフウカを取り出すには風が強すぎた。
 「ハヤト。近いと思うの」
 「うん。このまま先でいいの?」
 「たぶん。ああ、早くしないと。やっぱりあるじがこちらに近づいている証拠かもしれなくて、この風と雪の具合」
 「そう――なんだ」
 「あるじが直接こちらに働きかけると、こうなりやすいの。だからわたしたちがお遣いをするために存在するの。そのわたしたちが手間取っていたから、きっと……」
 空からあるじのお遣いでやってきて、その途中でフウカは仲間とはぐれてしまったと言った。
 出会ってから数日来、オレは仲間を捜すためにフウカと一緒に奔走していて。
 ――いよいよなのか、という緊張感がオレを包んでいる。
 「よし。じゃあもう少し走ろう」
 こくりとフウカは頷いた。
 オレはふたたび雪の中、不自然なほどに車の姿のない国道を行く。

 次の大きなカーブを超えたら暗黒水産の目の前を通り過ぎる。
 なぜだかわからないけれど、オレの心臓は鼓動を早くしていた。
 何かの予感――そう、オレはその『何か』を心のどこかで確信していたんだと思う。

 奴の姿が瞳に映った瞬間に、どこか安堵したような気がするから。

 一目でわかる見慣れた、そして闘い慣れた奴の単車が暗黒水産の手前の路地から国道へ乗り出してきた。
 予期したとおりハンゾウのマシンだ。
 オレの勘なんて鋭いわけじゃないのに、どういうわけかここでハンゾウに遭う気がしていた。
 
 初めて見るメット姿のハンゾウ――おそらく奴からしてもメットをかぶったオレは初めてだろう。
 お互いに顔はわからなくても無視できる間柄ではないから。奴とオレは。

 単車を駆っているときに公道で出会ったが最後、とでも言うか。
 遊んでなんていられない、こんな大事な時なのに。
 ハンゾウよりももっと気にかけるべき相手が間近にいるのに。
 心ではわかっている。
 なのに、目に見えない何かに駆り立てられているかの如く、オレは一歩先を行くハンゾウに単車を寄せていった。
 
 空からは吹雪。
 強い風、それから体にたたきつけるように降る雪。
 海沿いの鬼浜町には有り得ない光景だ。
 メットからはみ出した髪の毛がもつれて、凍えてる。
 がらがらの国道には、前にも後ろにも人気がなくて、見えるものといえばハンゾウのマシンと、並んだオレのマシンだけ。
 バトルなんてしてる場合じゃないのに、体が止まるのを厭う。
 
 爆音マシン2台が火花を散らしあっているにも関わらず、まったくの無音が国道に流れているようだった。
 風の音にかき消され、雪の質感に吸い取られ――
 そしてオレは何かに取り憑かれたかのように、ハンゾウに激しくつっかかっていった。
 タイヤが滑る感じが皆無なのが不思議のようで、当たり前のようにも感じられて……。


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