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海に降る夜の雪 1-2


 呼びかけたオレに向かって、ハンゾウはゆっくりと首を動かした。
 「何を思ってる?」
 「――別に」
 ハンゾウの応えは素っ気なかった。あくまで装った声だったかもしれない。
 「あのさ、あのちいさな子とは?」
 「ああ。夕映え木立の前で遭った。困っていると言ったから手を貸す約束をした。それだけだ」
 なるほど。夕映え木立――不思議を隠した林で、か。なんだか納得できるな。
 それに、さっきあそこに近づいたときにフウカの様子が変わったんだったな、と思い出す。
 「ハヤトはどうした?」
 「オレは、うん。駅前で露天商から買ったキーホルダーの付属品で……」
 
 そしてオレはハンゾウを相手にフウカとの日々を語った。
 別に話してほしいと言われたわけじゃない。聞いてくれと頼んだわけでもないからハンゾウが真剣に聞いているかどうかはわからなかったけれど、それでもよかった。
 ただ、この数日のフウカとの記憶を口に出してみたかっただけ。
 思い出して、話して、それをあらためて記憶にとどめておけたら――話しているうちにどんどんそんな気持ちがふくれあがってきていた。

 ひとしきり話したオレは、心臓をきゅっと冷たい手でつかまれたような苦しさに捕らわれた。
 ああ――そうか。これってずっと前に失恋したときと似たような気持ちだな。
 そのときは拒絶されただけだけど、今回はそうじゃなくて。お互いに想いを残したままなのに別れなければいけなくて。しかも相手――フウカはこの世界の外の住人で。

 「フウカたちって何だったんだろうな、ハンゾウ」
 黙り込んだら物思いに沈没しそうだったから、オレはハンゾウ相手に無理矢理言葉を紡ぐ。
 「聞かなかったのか?」
 「何を?」
 「彼女らのことを」
 「ああ、ちょっとはね。なんか空の方からお遣いで来たとかって言ってたね」
 「そうか。ハヤトはその程度しか知らないのか」
 
 そしてハンゾウは話し始めた。
 「彼女らは、天候を司る存在の使いなんだそうだ」
 「司る――神様ってこと?」
 「さあ。そこまで立ち入ったことは畏れ多くて聞けなかった」
 なるほど。オレはちいさく頷いてみせる。

 「聞くところによると、使いの役目は俺達の世界を見張ること。季節はずれに台風が起きたり、異常な気候になったりの前兆があったら報告するのが役目。そして彼女らの通り道がちょうどこのあたりにあるのだとか。そこを通る際にほころびに吸い込まれたとかで、ふたりは互いにはぐれた――これが顛末らしい」
 「へえ……そうだったんだ」
 なんでフウカはオレにそれを話してくれなかったんだろう、と思いを馳せる。
 だって、そんな大切な存在だってわかっていたら、オレはきっとこんなふうにフウカに思いを寄せたりしなかっただろうに。それこそ畏れ多くて……。
 いや、違うのか。
 オレは一目でフウカにとらわれたんだ。だからフウカは、オレには言えなかったのかもしれない――オレはまたも想いに絡め取られそうになる。

 「じゃあもしかして、フウカたちって定期的にこっちに来るのかな? 見張り役って言ったらさ」
 ふと、オレは声を出した。
 そのことに思い至って、まるでハンゾウにすがるように訊いてみる。
 「そうじゃない? こっち来ることもあるんだよね? そしたらまた会えるんだ、フウカと」
 「……さあ。それは俺が知る由もない。けど」
 素っ気なくハンゾウは言う。
 けれどもハンゾウだってオレと五十歩百歩の心持ちでいるはず――それはなんとなく解る。
 あえて素っ気ない物言いのハンゾウは、よほど胸に秘めるタイプなのかもしれない。
 駄々をこねるようなオレを正面から見据えて、ハンゾウはあくまでも現実主義を貫くように言った。



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