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海に降る夜の雪 2-1

 
 夜の海。止みそうではあるけれど雪が舞っている。
 今更ながらに寒さを感じてオレはすこし肩を震わせた。
 いや、寒かったからじゃないかもしれない。
 ハンゾウの口がそれを語ることへの恐れだったのかもしれない。

 「ただ、仮にこちらに再臨したとして、俺たちに見分ける術はないと思う」
 「どうして? だってフウカはオレと波長が合ったんだって言った。そういうのって変わるもんじゃないだろ?」
 「――それは多分。でも、俺たちのほうでそうだとしても、彼女らは意志で隠すことができるはず。波長というものを」
 「隠す? だからどうしてその必要があるんだよ!!!」
 つい語気荒くオレは言った。
 わかってるんだ、本当は。ハンゾウがオレを諭すために次に発する言葉なんて。
 聞きたくない。
 けれども――誰かに言われなければ納得できないって心のどこかで思ってる。

 「わかるだろう? 彼女らは本当は、俺達如きと親交をもつような存在でないことを」
 「そんなの、オレにはわからない!!!」
 何て言ったところで無駄なのはわかっている。
 往生際の悪いオレ自身へ心の中で皮肉に笑うオレがいた。

 「姿を消していたって絶対に見分けるから。オレ、もしすれ違ったら絶対わかるから。どんなに些細な気配だって見過ごすわけないから!!!」
 「――ハヤト」
 憐れむようにハンゾウはオレを見る。国道を行く車のクラクションが鳴った。
 「気持ちはわかる。けれど俺達如きに逆らえるようなことじゃない」
 「何だよ、それは!!! ハンゾウはそれでいいのかよ」
 「いいとか悪いとか、そういうことでもない」
 
 わかってる。ほんとはわかっている。
 ハンゾウが理路整然と語ることがらが正しいことなんか、わかっているんだ。
 だけどそれじゃオレがかわいそうだ。
 それからハンゾウもかわいそうだ――オレはそう思う。

 「ハヤト。彼女らのことは今夜眠って、朝起きたら忘れているから」
 「え――? 何……だって?」
 「別れ際にセツカが言った。そういう術を俺達にかけておくから心配いらない、と」
 「術? 心配? そんなの必要ないじゃん!!!」
 「確実に必要。少なくともそこまで取り乱しているハヤトには」
 きっぱりとハンゾウは言った。
 「そんな想いの虜になるのはいいことじゃないはずだ」
 「――!!! 相手を想うことにいいも悪いもあるわけないだろ!!! とにかくオレはフウカを忘れたりしないから」
 そう叫んで静かに雪が降る海に背を向けて、オレはハンゾウから逃げるように単車に戻った。
 怖かったんだ。真実を突きつけられるのが。
 だって今現在のオレがフウカを忘れてしまうなんて、そんなこと納得できない。
 そうするのは寂しすぎるじゃないか――

 オレはふたたび泣いているのかもしれなかった。

 闇雲な勢いで単車をふかす。
 できるだけ大きな音に紛れ込みたかったんだ、オレは。
 国道を横切って、町を目指す。もう海も雪も嫌だった。
 
 ときにおのれの感情を抑えきれないオレ。
 常に感情を露わにしないタイプのハンゾウ。
 その違いがおそらく普段の勝負にも出てるんだろうな――なんて、あえて違うことを考えながら速度を上げた。
 情が入った勝負ほどオレは熱くなる。
 逆におそらくハンゾウは、いかなる場合でも一定の力量で臨むんだろう。
 どっちが有利かって、それは状況次第。そんな理由で互角なんだ、オレと奴は。
 オレにはわかる気がする。おそらくハンゾウだって本音はオレと大差ないってことを。
 それを隠して平静を装うなんて芸当、オレには到底できない。
 そうするにはオレはフウカへ恋しすぎていたのかな……。

 あらゆる物思いに捕らわれたオレは、無意識にここへ来ていた。
 ここへ来てどうするつもりだったんだろう。
 理論的な思考なんて、すでにどこかに置き忘れてきてる。
 感情だけに突き動かされるオレが行き着いた先がそこだったのはそんなに不思議なことじゃないとは思う。
 なんだかんだ言って、どんなときでも頼れる漢が身近にいるんだからオレはしあわせな奴だ。

 「オウ、ハヤト!!! なんだ、こんな天気なのに走ってたのか? 寒かったろ。まあ入れや」
 店先に顔を出すと、赤いリーゼントがいつもと同じ威勢のいい声でオレを出迎えてくれた。
 そしてオレは、詰めていた息を長々と吐き出したんだ。


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