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我が名にかけて 1-1

 「たまにはあっちにも挨拶行かねえとな」
 「ああ、美山瀬。そうだね。でも山は寒いだろうな。早く春になるといいのに」
 「わはは、また寒いとか言ってるよ、ハヤトは!!!」
 「うん。だって、こないだ電話したら、雪が積もったって言ってたから。テツが」
 「いいじゃねえかよ。むしろ湖が凍ったら楽しいと思わねえ? ワカサギ釣れるかもな!!!」
 「え、いや……あそこはいないんじゃない? ワカサギ」
 「そうか?」
 なんて、雑談しながらの帰り道。
 まだまだ冬真っ盛りだけど、すっかり日が長くなったことだけは明らかに感じられる。
 春もそんなに遠くはないのかも。

 「そういやこないだ、千晶ちゃんがな」
 と、思い出したようにリュウジが言いかけた矢先だった。
 並んで歩いていたリュウジとオレの真ん中を通って、何やら茶色の物体が駆け抜けていく。
 それは長毛種のでっぷりとした犬だった。ちらっとオレの目をかすめたのは、その犬の口にくわえられた黄色いもの。
 「お。元気なのが通ってったな」
 背の低い後ろ姿をリュウジが目を細めて追いかけた。
 「あはは。リュウジは犬好きだからね」
 「オウ!!!」
 とか言ってたら、次に聞こえてきたのは火のついたような泣き声だった。
 ちょうど通りかかった路地から聞こえてくるそれは、ちいさな子供のものとおぼしい。

 「うわ~~~ん、ぼくのぼうしが……」
 路地をのぞき込むと泣き声の出所はすぐそこにいた。横にはお母さんらしき人がおろおろしている。
 「あら、そんな泣いたら……でも、困ったわね」
 「ん? どうかしたのか?」
 リュウジが声をかけた。お母さんは振り向いて、男の子のほうは泣きながらリュウジに答える。
 「――っ、ぼくの……ぼうし。わんちゃんがね」
 「風に飛ばされたところを、持っていかれちゃったんです」
 お母さんがそう付け加えてくれた。

 「犬――さっきのか?」
 「ああ、そういえば何か黄色いものを咥えてた。さっきの」
 「よっしゃ!!! ちょっと待ってろや!!!」
 言うが早いかリュウジは来た道を駆け戻る。
 視界の先にはさっきの犬がいる。
 リュウジのこんなときの走りは見事だなあと見守りながらオレは思った。これだけ走れるんならちゃんとやったら体育の成績は芳しいだろうにな。もっとも出席日数が物を言うのか。
 体の大きなその犬の走る速度があまり速くないのも幸いしたみたいだ。
 リュウジは犬に追いついて、後ろから羽交い締めにしたっぽい。
 距離があるのでよくは見えないけれど、きっとリュウジのことだから解放してやったときには頭か背中かを撫でてやったんだろうな。よしよし、いたずらするなよ、なんて言いながら。
 
 オレと親子のいるところまで意気揚々と戻ってきたリュウジの右手には、毛糸でできた黄色い帽子が握られていた。
 てっぺんにぼんぼんがついてる。ハンドメイドの風合いだ。
 「リュウジ、おつかれ」
 「オウ、返してもらえたぜ、ハヤト!!! あいつ、意外とものわかりのいい奴で助かったぜ。よかったな、ぼく」
 男の子の目の前にしゃがみこんで、リュウジは戦利品を男の子の頭にかぶせてやった。にっこりと笑いかけている。
 「うん!!! ありがと、おにいちゃん」
 「どうってことねえぜ。それよか今度は風が吹いたらちゃんと押さえておけな。その帽子、気に入ってるんだろ?」
 「うん。そうするね。これ、ママがつくってくれたの。だからだいじなの」 
 涙に濡れた目をこすりながら男の子はリュウジに笑いかけた。そしたらリュウジは帽子ごと、男の子の頭を撫でてやる。
 うん、さっきの犬にもこうやったんだろうな。なんとなく想像できる。


テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

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