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我が名にかけて 3-1

 
 ゲーセンの入り口扉に近い一角にあるクレーンゲームでリュウジが腕前を披露して、コツとやらを伝授されたダイゴが数百円に及ぶ健闘ののちに景品を釣り上げ――
 そうした喜びの瞬間をオレが見守っていたその時だった。

 「あ――兄貴ぃ……」
 入り口の自動ドアが開いたと思ったら、弱々しい声とともに見慣れた姿が現れて、リュウジの顔を見るやいなやその場にくずれおちたんだ。
 「うわ、ノブオ? 一体どうした!!!」
 「お、遅くなって……すみませ――ごほっ」
 「そんなことどうだっていいってのに!!!」
 リュウジが大声を上げると、店内にいたお客や店員たちが一斉にこっちを向いた。
 そう、彼らの注目の的になっているのは膝を折っているリュウジと、入り口付近に倒れ込んでいるノブオ――ノブオの服は泥だらけで、顔は鼻血を出していて、口の端も切れていて。
 とにかく尋常な雰囲気じゃなかったから、オレたちはノブオを連れて店の外へ出た。
 ダイゴがノブオに肩を貸してやって、ここから一番近いリュウジの家まで移動する。
 
 夜の営業を前にした昇龍軒は、厨房では仕込み中のようだ。
 客席のテーブルに怪我をしたノブオを座らせて、とにかく話を聞こうということになった。
 リュウジが家からもってきた救急箱を開けて、消毒液でノブオを手当してやる。
 「あつッ!!! しみるっスよ、ハヤトさん……」
 「そんなこと言ったって、仕方ないだろ? 怪我してるんだし、しみるのは当然だってば」
 「もっとやさしくしてくださいっス~」
 「ノブオ。飲むか?」
 ダイゴが給水器から水を注いできて、ノブオに差し出した。
 「あ、すみません、ダイゴさん……うわ、口の中もしみるっス」
 ノブオは顔をしかめた。あ~あ、目の上、ちょっと腫れてるな。
 
 「で? 一体何があったんだ?」
 いったん厨房に顔を出しに行ったリュウジが戻ってきて、ノブオに問うた。
 ダイゴが貼ってやった絆創膏を撫でながら――ほっぺたの、リュウジのやつと同じ位置だ――ノブオは答える。
 「えっと――裏の公園のところを通ったときに、ですね。そばの路地でたぶん中学生だと思うんっスけど、カツアゲされてたんす」
 ここまで言って、ノブオはコップの水を飲み干した。
 「ほう。それで?」
 「ええ、兄貴。オレ最初、その声だけ聞いて、あれ?――って思って、見てみる気になったんっス。で、路地をのぞいたらですね。中学生から小銭を巻き上げようとしてたのが知った顔だったんっスよ」
 「何――?」
 「で、オレ、出てってひとこと言おうとしたら、そいつ、中学生に向かってこう言ったんっスよ。『俺は鬼浜工業のリュウジって者だ。文句があったら鬼工まで来るんだな』って!!」
 「は? 何だと?」
 リュウジが気色ばむ。まあまあ、とオレはリュウジの膝に手を置いた。
 「それ聞いたら、オレ、いてもたってもいられなくなって。で、その場でそいつをとっつかまえて――ええ、喧嘩っスね」
 「ノブオ、お前――」
 「あ、兄貴!!! そんな怒らないでくださいっス。反省してるっス。いつもひとりで勝手に喧嘩するなって言われてるの、忘れてたわけじゃなくって。どうしても許せなかったんっス!!!」
 
 なるほど――とオレたち3人は顔を見合わせた。
 たしかにノブオはよくリュウジに言われているんだ。独断で勝手にことを起こすな、って。
 でも、こんなことに出くわしたら、オレだって黙っていられないだろうな……。
 だって、リュウジは感謝されるべきときにだって名乗ったりしないんだから。
 「それで、ノブオ。お前が喧嘩した相手とは? 知った顔だったのだろう?」
 「はい、ダイゴさん。どうってことない奴っスよ。兄貴とは似ても似つかない奴っス。あんな雑魚ごときに手こずった自分が恥ずかしいんっスけど……」
 「もしかして、タカシ?」
 「ええ……そうっス、ハヤトさん」
 本日の熱き殊勲者は、うつむきながらそう答えた。


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