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我が名にかけて 4-1

 昼休みが終わる寸前のこと。
 「あ~、もう駄目だ。ハヤト、俺もう我慢できねえから帰るぜ」
 なんだかそわそわしてるなあと思ったら、リュウジはいきなり立ち上がって言うなり、鞄を手元に引き寄せた。
 「え? 何を突然……」
 「いやな、今日は楽しみにしてた漫画の新刊の発売日でな。放課後まで待ってたら売り切れるかもしれねえって思ったらいてもたってもいられねんだ。だから俺、もう行くわ。後は頼んだぜ!!!」
 「漫画? って、おい、リュウジ――あ~あ」
 思い立ったら即行動のリュウジを止めることなんて、オレにできる芸当じゃないな。赤いリーゼントはあっという間に廊下に消えていった。

 幸か不幸か5時間目は自習だった。英語の担当の先生が昨日から風邪で休んでいるんだそうだ。
 オレは苦手な代返をする機会がひとつ減って大いにほっとした。6時間目は実技だからきっと大丈夫のはず。
 あとは帰りの学活で赤ジャージの目をやりすごせればいい感じかな。
 なんて考えながら昼寝でもしようかな――といったところで、教室の前の扉ががらりと開いた。
 
 「リュウジ、ちょっと来い」
 そう言いながら姿を現したのは赤ジャージだった。
 え――? 何でよりによってリュウジなんだ? これ、さすがに代返効かないよな?
 「なんだ? リュウジはいないのか?」
 嗚呼、もう逃げも隠れもできないな……。
 「ええと、リュウジは頭痛と腹痛でさっき休暇に出ました」
 「なんだと? そんな苦しい言い訳が通るとでも思っているのか? ハヤト」
 「さあ」
 としか答えられないオレって、つくづく応用力がないよな。

 「とにかくリュウジはいないということなのか?」
 「ええ、まあ。諸事情で」
 「仕方ないな。ではお前が代理で来い、ハヤト」
 「ええ!!! 何で?」
 「いいから早く来るんだ。あまりお待たせできる相手ではない」
 しぶしぶオレは席を立って赤ジャージについて廊下へ出た。

 「まったく、こんな時に。お前も少しは止められないものか? ハヤトよ」
 「え、オレ? 絶対ムリだな。相手が悪いよ」
 「そうか」
 などと話しながら、着いた先は応接室。
 少なくとも普段のオレにはまったくもって関係のない一室だ。入学してから一度たりとも扉の向こうを見たことさえなかったし。
 赤ジャージは軽く咳払いをしてから扉をノックして、続いてノブに手をかけた。
 「失礼します」
 深く頭を下げる赤ジャージにつられて、オレもお辞儀をしてから中へ視線を巡らせる。

 「ご苦労さん。して、リュウジ君は――?」
 切り出したのは教頭だった。応接室のテーブルについていたのは教頭と、もうひとり。
 見覚えのないおばあさんだった。
 「ええ。それが、教頭先生、体調が思わしくないとかで早退をしたようでして。誠に申し訳ありません」
 そして赤ジャージは、入室するときよりもさらに深々と礼をした。
 「まあ――風邪でもひいてしまったのでしょうか。いけませんわ。だとしたら、それはやはり私どもの責任ではないのかしら」
 赤ジャージの言葉を聞いて、おばあさんがゆったりとした口調でそう言った。
 「こんな真冬に寒い思いをなさったのですから――そうですよね」
 「いえ、そのような。元来、健康だけが取り柄の人間なので、ご心配なさらないでください」
 赤ジャージは慌てておばあさんに答えた。
 このおばあさん、誰なんだろ?


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