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真夏の精神修行 7

 そして、またしてもダイゴは喧嘩勝負を受けてたつ羽目に陥ったのだ。

 今度は応じる覚悟があったせいか、ダイゴは体勢を崩すことなくコウヘイの体を受ける。
 しばらく力同志が拮抗しあうかの如く、最初に組んだままの体制で両者はまったく動きを止めていた。

 じりじりとコウヘイが押し、じりじりとダイゴが戻し、さらに押し──
 静かな力のぶつかり合いが永遠に続くと思われたとき、突然状況が変化の兆しを見せた。
 
 「…………」
 「──?」
 「…………」
 ここまで聞こえはしないが、ダイゴがコウヘイの耳許に何か言ったようだった。
 はじめに一言、さらに続けて一言──
 と、力の均衡が瞬時に崩れた。

 「ぐお──おおおおおお!!!!」
 突然コウヘイがおめき出し、自ら組み手を解いてダイゴから遠ざかってゆき──公園の外へと一目散に駆けだしていったのだ。

 見守る両軍の者どもには、事の成り行きがまったくつかめずにいた。
 オレたちにも、また取り残された暗黒一家の面々にも。

 そして、戦いの局地だった場所には魁偉な風貌のダイゴがひとり佇んでいる。
 その目は、いつもよりも心持ち大きく開いているようにも見えた──。

 「──行くぞ」
 短くハンゾウが言い、タカシがそれに従う。まだのされたままだったゴンタを起こして重そうに肩を貸してやりながら、奴らはコウヘイの後を追った。
 「やっぱり呪うんだ~、きっと鬼浜寺のに総帥、呪われるんだぁぁぁ」
 「タカシ、黙るんだ」
 そんなやりとりが少し遠ざかった奴らのほうから聞こえてきていた。

 「おい、一体どうしたってんだ? ダイゴ」
 暗黒一家の消えたあと、オレたちは訝りながらダイゴのもとへ寄っていった。
 「今日はついていただけのこと」
 「はあ? ダイゴさんがついてると暗黒総帥、逃げちゃうんスか?」
 「まあそんなとこだ。ノブオ」
 ダイゴはすこし笑い顔をつくっている。

 「なあダイゴ、組んでるときコウヘイに何か言ったろ?」
 「おう、俺もそんな気がしたぜ」
 「押忍──ちょっとした脅しが功を奏したのだ。だから、ついていたと」
 「脅し?」
 オレたちは口を揃えて訊ねた。

 「そうだ」
 大きく頷いて、ダイゴは続けた。
 「暗黒水産高校は古戦場跡に建っているようだから、たまには供養をしてやるべきだと言ってやったのだ」
 「ええっ!!!」
 「そして、お主は敗戦した軍の首魁の魂に気に入られているようだから、とも」
 「えええっ!!!」
 リュウジもノブオももちろんオレも、それ以上の言葉を見つけることができなかった。
 口を開けたまま、頭ひとつ上にある、ダイゴの無敵の表情を見つめるのが精一杯だった──。

 ずいぶん時間を無駄にしてしまった後、オレたちは気を取り直して今度こそ河川敷に向かって歩き出した。
 歩きながら、先程の一幕を語っている。
 「それにしてもコウヘイ、ずいぶんびびってたみたいだよな。そもそも最初にダイゴを見たときから顔色が違う気がしたぜ、オレ」
 「そうか? ハヤト」
 「ああ。気のせいかなとも思ったけどね。ダイゴは? 何か感じなかった?」
 「さあ」
 ダイゴは曖昧に返事をしただけだった。

 「あ、思い出した。兄貴、オレそういえば聞いたことあるっす」
 「何だ? ノブオ」
 「暗黒総帥の弱点は幽霊とか、そういうのだって」
 「へええ。人は見かけに寄らねえな。全然知らなかったぜ」
 リュウジが言った。
 「っていうか、ノブオのその情報網ってどこに張ってあるんだ?」
 「へへへ。そりゃ企業機密ですぜ、ハヤトさん」
 ノブオは得意満面でほざいている。まったくこいつときたら。

 「いやあ、でも今度こそ本当に見えたのかと思ったぜ」
 リュウジが片手で花火の入った袋を振り回しながら、ダイゴに向かう。
 「さて、な」
 またしても曖昧なダイゴの返事。
 「見えたかどうかは別としてな、昨夜夢を見たのだ」
 「夢?」
 「押忍、ハヤト。いにしえの合戦の夢だ。コウヘイに似た武者が討たれるシーンで目が覚めた」
 平然と言ってのけるダイゴに、オレたちは血の気が引くのを感じた。
 「あれは何だったのだろう、と思っていただけに、な」

 「おい、ダイゴ──はっきり言って俺もう限界だぜ」
 見れば、やけに憔悴しきったリュウジの顔があった。
 「正直言って、俺もそんなにそういうの、得意じゃねえんだよ……」
 消え入りそうな声でリュウジは告白した。
 「リュウジ──そうなのか?」
 「あ、兄貴?」
 きっと昨夜の鬼火を見たときから、よっぽど我慢してたんだろうな。リュウジ。
 そう思ったら、なんだかリュウジがかわいく見えた。

 今回の修行の収穫は、精神力が勝負を制するんだ、ということ。
 本日の殊勲者がダイゴだったのは、修行の最後にオレたちにお教えくださる仏様のお導きなのかもしれないな、なんて思った。
 
 「さて、気を取り直して打ち上げに行こうぜ!」
 「おう、ハヤト!!! いいこと言うぜ」
 そして、オレが最終的に思ったこと。
 総隊長リュウジの精神力がオレたち鬼浜爆走愚連隊の支柱になるんだ、ということ。
 オレの言葉でリュウジが活力を取り戻すのなら──オレはそういう役目に徹していこうと思う。
 
 なんかオレもちょっとは強くなったかな──と見上げると、ダイゴの細めた目がオレをあったかく見守ってくれていた。
 その視線があまりにありがたくて、オレはココロの中で合掌してみた。

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