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我が名にかけて 6-1

 
 ひとしきりリュウジがノブオに読み終えたばかりの新刊漫画を褒めちぎっているのを聞いていた。よっぽど感動したらしい。
 リュウジの話を聞いただけで瞳を潤ませているノブオも、これまた単純だ。
 やれやれ――なんて、ダイゴと顔を見合わせて、話が終わるのを待っていた。

 「リュウジ。さっきさ、リュウジを尋ねておばあさんが鬼工に来たんだ」
 ようやく口を挟める段階になって、オレは機を逃すまいと早口で言った。
 「うん? ばあちゃん? 誰のだ?」
 「昨日の午前中にリュウジに助けられたっていう幼い姉妹のおばあちゃんだったんだけど」
 「――?」
 なんだそれは、とかリュウジは言いかけたみたいだ。口の形はそんな雰囲気だったから。
 けれどもリュウジはそれを言うより先に、オレたちの背後に現れた奴らに視線を奪われたらしかった。
 「なんだ、お前ら」
 リュウジの荒々しい物言いに振り返ったオレとダイゴの目に入ったのは、たった今まで物語の感動を語っていた漢を現実に引き戻すには充分すぎる奴ら――暗黒一家だった。

 時には町ですれ違うこともある暗黒一家。
 とはいえ、いつもいつも顔を合わせるたびに喧嘩になるというわけではもちろんない。
 大概はどちらかが、または双方が自尊心をかけて対峙すると決めたときのぶつかり合いがそれを引き起こすわけで。
 今日は――確実に暗黒一家側はその気だったのだと思い知らされるような8つの視線がオレたち4人を鋭く刺した。

 「貴様」
 コウヘイは迷わずリュウジのそば近くにいたノブオを見据えている。
 その視線を受けて一瞬怯んだように見えたノブオだったけれども、その小柄な体にコウヘイの向ける注視を真っ向から受けていた。
 「な――なんっスか?」
 「ほう。威勢がいいじゃねえか……」
 そう言ったあとにコウヘイはひとつ咳払いを挟む。それが落ち着いたあとはまったくもっていつもの調子でこう凄んだ。
 「鬼浜の若いの、貴様、昨日うちのを可愛がってくれたようだな?」
 
 ああ、そうだった。
 昨日、ノブオはタカシと一騎討ちに臨んだのだった。
 通りすがりに聞いたというタカシの戯れ言がノブオを逆上させて、結果として喧嘩になって――その勲章はノブオの頬を飾る、リュウジと揃いの位置の絆創膏。
 見やればタカシのほうは、口の左横が紫色に腫れているようだ。
 へえ、これ、きっとノブオがつけたんだな――などとオレは妙な感心にとらわれる。

 「だからどうしたってんだ、コウヘイ? ウチのノブオは立派に、正々堂々と闘ってお前んとこの若いのに勝ったんだろ? 俺はそう聞いてるぜ」
 「そのような青臭い正義感なぞ俺は知らねえな。ただ……」
 また言葉を切って、コウヘイは声の調子を整える。
 「俺はなあ、うちのタカシが可愛いのだ」
 コウヘイの言を受けて、オレたち4人は揃ってタカシを見た。
 トレードマークのピンクのモヒカンに、痩せた体躯。見るからに強くはなさそうなギターの上手な彼は――オレたちの視線に怯むことなくしっかりと大地に足を据えて、前を見ていた。
 へえ――昨日、ノブオもずいぶん成長したって思ったけれど、こいつもなんだかんだいっていい目をするようになったんじゃないのか?

 「それが何だってんだ? コウヘイ!!!」
 リュウジが声を荒らげる。
 受けたコウヘイは、自らの可愛がる後輩の肩に手を回しながらこう言った。
 「こいつはなあ、恥を雪ぐと言っているのだ。貴様等の若いのごときに遅れをとったおのれを許すまじ、とな」
 言ったコウヘイに視線を移したタカシがふたたび前――オレたちのほう――を向く。
 その目にはいつにない強い光が宿っていたのかもしれない。


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