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我が名にかけて 7-1

 
 夕刻を前にした両軍の若手同士の攻防が続いている。
 「喰らえ――!!!」
 「うっ……」
 「効いただろっ!!!」
 「ケケケケケ!!! お返しだ」
 「うお……痛っ――」
 ノブオの繰り出す得意の平手、最初は受ける一方だったタカシの反撃。
 ダイゴやゴンタのような重量級の打撃とは違う、小柄なふたりの勝負ではあったけれどもなかなか雌雄を決するところまではいかない。
 そう――互いに攻撃力は弱いながらも、ふたりともさすがに鍛えられているようで、本当に打たれてもすぐに立ち上がれるんだ。
 
 それぞれに、自分より明らかに攻撃力が上回った相手の拳を受けたりすることもあるわけで。
 そんなことから生まれる強さとでもいうようなものが見て取れるわけで。
 だから近頃、ノブオの出る勝負の行方を見守るリュウジにも余裕があるように思える。
 きつく組んだ腕と広いその肩がこう語っているのが、ノブオには聞こえているんだろうか――ノブオ、俺はお前を信じているんだぜ、と。だから存分に闘ってこいや、と。

 リュウジをもはや崇拝といった域で慕っているノブオには、うん、きっと聞こえているんだろう。
 それはまるで神託のように。

 「オレは、お前を許すわけにはいかない!!! オレのプライドにかけて兄貴の名を騙ったお前をやすやすと許さないからな!!! そう――絶対に」
 ノブオの言葉に嘘はないはず。きっとこれから先のふたりの因縁のどこかにそれが刻まれることになる予感がオレにはしていた。
 そしてそう叫んだノブオの平手はタカシの顔の輪郭を歪ませる勢いで炸裂した。
 タカシはたたらを踏んで、冬枯れの土手に尻をつく。
 
 「ケケケ!! だからどうしたって言うんだ? オレは反骨意識の塊だからな!! 逆らうことと刃向かうことがオレの生き方だ――覚悟!!!」
 言うが早いか、瞬時に口許に浮かべていた笑いを収めたタカシの拳がノブオの腹に埋まったのをオレたちは見る。
 こうした場面で喋ることはあまりないと思っていたタカシの意識――反骨意識と彼は言った――がノブオを圧倒する。
 パンクロックが生き甲斐らしいタカシの意志を思い出す。このへんがコウヘイの生き様とリンクしているのかもしれないと頭の片隅で思いながら、大地を踏んでいたノブオの足が掬われるのを見て思わずあっと声が出るオレ――同時にダイゴも、リュウジもまた。

 「――ちきしょう、絶対許さない……」
 撃たれた腹に手をやりながら身を起こす際のノブオの言葉。熱しやすいタイプのノブオなのに、その声は低く、苦々しく河川敷の空気に乗った。
 痛みだけに言わされているのではない、それは腹の底からの台詞だったのかもしれない。
 
 ノブオはリュウジに、おそらくタカシであってもコウヘイに心酔しているのがわかる光景だった。
 正義をもってするリュウジの名を騙られたのを目の当たりにしたノブオの怒りは、手に取るように伝わってくる。
 対するタカシも、また。反骨の魂はコウヘイにも息づいているのはオレたちには先刻承知。同じくしてタカシもそれを標榜するんだから、タカシの気持ちだってわからなくもない。
 
 ノブオは立ち上がる。おそらく何度でも。
 リュウジが後ろに控えている限り、何度でも。
 そしてノブオは言うんだ。何度だって。
 「兄貴を馬鹿にするなんて100年早いってわかってんのか? オレの尊敬する兄貴は、ほかの誰でもなくって――兄貴ひとりなんだ!!!」
 叫びつつ、見舞うための拳をノブオは作る。
 それを見るや、タカシは素早く自らも構えを立て直して――

 乾いた打撃音がふたつ、オレたちの鼓膜を揺らした。
 音の奏でる波形が耳の奥から消え去ったあとには、ふたつの若い体躯が同じく背中を地面に擦りつけている。


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