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我が名にかけて 8-2


 それから、得心のいっていないリュウジに、ダイゴとオレとで推測を交えながら説明してやっていたら辺りは暗くなりはじめていた。
 
 「じゃあ、あれか? コウヘイが昨日の午前中にさっきの女の子たちと、それと犬を助けたんだってことか?」
 「押忍。おそらくはそうであろう。あの女の子の口ぶりと、コウヘイの様子を見るに、な」
 「そういうことになるんだろうな。裏付けかどうかわかんないけど、コウヘイちょっと咳をしてたしね。風邪でもひいたかも」
 「そうっスね。川に入って犬を助けたんっスもんね」
 ううむ、なるほど――とリュウジは腕組みをして頷いている。
 オレが会った、リュウジを尋ねて鬼工にみえたおばあさんの孫ってのがさっきの姉妹だろうということから始まった説明を、リュウジは聞いてくれたんだ。

 「いや、そこまでは納得したとして、だぜ?」
 リュウジは眉をしかめてオレたちに疑問符を投げかける。
 「どうしてコウヘイは自分のことを『リュウジ』と名乗ったんだ?」
 「それは――おそらく、な? ハヤト」
 「そうだね。正義とか、弱い者の味方、とか、誰かを助けるっていうのはコウヘイの得意なことじゃないから、だろうね」
 「……は? 何だと?」
 「つまりは照れくさかったんじゃないの? いいことをして、自分の名前を名乗るのが。それでなんとなく、リュウジの名前を使ったんじゃないかな」
 「――ぜんぜん意味がわからねえぜ」
 
 そうだろうな、とオレは思いながら、リュウジにうっすらと笑い顔をつくって見せた。
 「まあ、いいじゃん。都合のよくないことはオレたちのせい、ってのが暗黒一家の常なんだから」
 「……ハヤト?」
 「ああ、そうかも知れんな。己の意図に染まないことがらは常に敵の仕業と騙る、その延長なのだろう」
 「よくわかんないっスけどね。ただ、コウヘイは自分らしくないって思ったのかもしれませんね。そういうことは自分より、兄貴がしそうなことだ、って」
 「うん。そんな気がする」
 ノブオの言に同意して、オレはリュウジを見た。
 リュウジはいまだ腕組みを解かずに、コウヘイの立ち去ったほうを眺めている。

 「とにかく、奴は俺の名を騙ったってことだよな……?」
 「そういうことになるな」
 ダイゴが応える。
 「じゃあ、俺はそのことに対して怒ってもいいんだよな?」
 「兄貴……?」
 「当たり前だろうが!!! コウヘイの奴、次に会ったらただじゃおかねえぜ!!! 人の名前でいい格好をするなんて、あいつどうかしてるぜ。俺の名にかけて――俺の名は俺だけのもんだって思い知らせてやるぜ」
 猛々しくリュウジは吼えた。
 それに呼応するかのように、向こう岸から犬が吠えるのが聞こえてきた。

 納得していないリュウジを囲んでの帰り道。
 こういう時のリュウジはダイゴがなだめるのが常だ。
 リュウジが同じところに居合わせたとしてもコウヘイと同じように行動しただろう、と。それは誰でも想像できるから、と。悪いことに名前が使われたよりはいいだろう、と。
 あの手この手でリュウジをなだめすかすのは――ダイゴ以外には無理なのかも。

 で、そんなふたりの後について、オレとノブオは歩いている。
 「ハヤトさん」
 「ん? なに? ノブオ」
 「結局、あいつら同じようなことしてるんっスね」
 「え? どういう意味?」
 「コウヘイもタカシも、やってること一緒っスよね。意味は違っても」
 「ああ――そうか。そうだよね。ふたりとも『リュウジ』って名乗ったのか」
 「それにしても奴ら、腹立つっス。オレだったら絶対、どんな時だって畏れ多くて兄貴の名前なんて名乗れませんもんね」
 「あはははは。そうかそうか」
 「だからね、オレにだってチャンスがあれば、兄貴のかたきをとってみたいなあって思うっス」
 前を歩くリュウジの背中に視線を寄せて、ノブオはそんなふうに呟いている。
 ある意味、似たもの同士の主従ってことは、ウチも敵方も一緒かもしれないな。
 
 「オレ、もっと鍛えるっスよ、ハヤトさん。それで兄貴の役に立つんなら」
 「お。逞しいね、ノブオ」
 「そうっス。オレはね、鬼浜爆走愚連隊の名にかけて、兄貴の脇を守れる男になりたいんっス」
 ノブオは強くそう言った。
 「うん。がんばろう、ノブオ」
 
 リュウジの名にかけて、鬼浜爆走愚連隊の名にかけて――か。
 名前の持つ不思議な力ってのは確かにあるよな。
 目に見えない、言葉の響きが織りなす呪文のような効果。
 オレの名前もどういうふうにしてか効力があるんだろうか、なんてぼんやり考えてたら、うっかり取り残されていた。
 ノブオの奴、珍しく『兄貴』の前にリュウジの名前つけてを叫びながら、前を行くふたりを追って駆けだしていった。
 
 
   * 我が名にかけて  完 *
  
 

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コメント

うふふふ・・・

なんかちょっと背中がかゆくなるような話ですな(笑)
コウヘイ・・・カワユス。

>都合のよくないことはオレたちのせい
あはは(笑)わかるなー。今回の件はリュウジにとっても
そんなに悪い事じゃないけどね。
でも当の本人は納得いかないのかぁ・・・そりゃそうかw

>ピノコさま


ども~(*^ー^)ノ

>コウヘイ・・・カワユス。
だはははは。カワユスww
最近、なんか憎めなくてね~。コウヘイ。

>でも当の本人は納得いかないのかぁ・・・そりゃそうかw
うん。多分。だはは。
おそらく理解できないんだろうな~。リュウジのほうが
単純だろうからww
コウヘイは繊細そうな気がする。だはは。

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