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ハヤトという名の単車乗り 1-1


 なんだかんだ、そろそろ春が近いんだなあ、なんてここに来るとそう思う。
 川からの風は先月よりも頬にやさしい感じだし、心なしか土手の桜並木も、ほんの少し赤くなってきているような――まだ早いかな?
 待ち合わせまではまだ時間があるから、オレはいったん河川敷を通り過ぎて国道へと単車を進めた。
 そぞろに走って時間を潰すっていう贅沢。オレの好きなひとときだ。
 
 今日はこれから、千晶ちゃんたちと合流する約束になっている。
 千晶ちゃんがリュウジに頼んだ計画にオレもお供することになっていたから。
 なんでも、千晶ちゃんの音楽仲間の千尋ちゃんが単車の免許をとることになって、その予習じゃないけれど、単車の速度を体感するためにリアに乗せてほしいんだそうだ。
 それを千晶ちゃんから頼まれたのはリュウジなんだけど、リュウジはあの通り女の子にはてんで弱い。それでオレに声が掛かったっていうわけで。
 
 国道をちょっと走って、鬼浜町を大きくひとまわりしてからふたたび河川敷に戻った。
 それでもまだ約束の時間には早かった。まだ誰も来ていなかったらもうちょっと走ってもいいな、なんて思ったけれども、土手から見下ろしてみたら見知った姿が目にとまった。
 オレはハンドルを切って、川原に降りていったんだ。

 「早いじゃん、千晶ちゃん」
 「おっす、ハヤト」
 オレの単車の音を聞きつけたらしい千晶ちゃんは、こちらに手を振って出迎えてくれた。
 さらさらストレートの肩までの髪の毛。きめの細かい肌にぽってりとした唇の鬼工のアイドル・千晶ちゃんは、女の子からも憧れられるかわいい男子生徒としてその名を轟かせている。
 「悪いね、付き合わせちゃって」
 「全然OK。オレで役に立つんなら」
 「あはは。心強いよ、ハヤト。リュウジに頼んだのはいいけどね、ほら、リュウジってアレでしょ?」
 「ああ、そうだね。リュウジは妙に緊張するだろうからな、そこに女の子がいるってだけで」
 「まったくね」
 ふたりして笑ってみる。そこがリュウジのいいとこだよ、なんて言い合ってはいるものの、想像するだけで何故か笑えるんだよな。

 「ところで、千尋ちゃんとは? ユニット、上手くいってる?」
 オレは千晶ちゃんに訊く。千晶ちゃんは歌を唄っていて、秋の終わりごろに一度だけ、千晶ちゃんのライブを手伝ったことがあって。千尋ちゃんは、オレのあとに千晶ちゃんと組むことになったギターを弾く娘なんだ。
 「うん。おかげさまで。けっこう練習してる。最近。ほら、時期的に玉城くんもわりと時間に余裕あるしね」
 「ああ、そうか。まだ本格シーズン前か」
 一緒のメンバーの玉城は野球部在籍のピアノ弾き。いま千晶ちゃんのユニットはこの3ピース構成だ。
 「そうだ。玉城くんにあずかったんだ。はい、これ。新曲入ってるから聴いてみて。ハヤトも時間あるときに弾きにおいでよ」
 「あはは、そうだね。うん。たまにはいいかもね」
 「でしょう? たまには弾いてあげないとギターも泣くよ?」
 「……だね。親父もそんなこと言ってた」
 おかしなもんで、千晶ちゃんも玉城も同じクラスにいるわりにそんな話を教室ですることって多くはない。
 まあ、もっともオレがリュウジと過ごす時間が長すぎるのかもしれないけれど……ね。

 「それはそうと、あたしこないだ、ここで見ちゃったの」
 「ん? 何を見たって?」
 「うん。日曜日にね、暗黒の大将が川に飛び込むところ」
 「え――コウヘイ……が?」
 こくり、と千晶ちゃんが頷いた。
 「流されそうになってたちいさい犬をね、助けてあげてたの。まだ小学生くらいの女の子たちの犬だったっぽいんだけど」
 「ああ、それ、見てたんだ」
 昨日ここであった一幕をオレは思い出していた。


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