目次

過去の記事をまとめて表示できるようにしてみました。 【 】がついている項目をクリックすると、それぞれのタイトルの記事を一括でお読みいただけます。 【 】内の数字が若い順に古い記事となっております。 【 】内の冒頭数字が同じものはそれぞれ対になるおはなしです。

これまでのおはなし

全タイトルを表示

御来訪感謝

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ハヤトという名の単車乗り 2-1


 「おう、待たせたな!!!」
 単車で土手を降りて来るなりすまなそうにリュウジは言った。
 「そんなことないよ、リュウジ。たまたまあたしたちが早かっただけ。だってほら、今ちょうど約束の時間だし」
 「そうか? ならいいけどな、千晶ちゃん。俺は人を待たせるのが好きじゃねえから」
 「たまにはいいんじゃない? オレ、いつも待たせてるし」
 「ああ、ハヤトはどうでもいいぜ!!! 俺が言ってるのは千晶ちゃんと……ええと」
 「千尋です」
 と、千尋ちゃんはリュウジにぺこりとお辞儀した。
 肩までの髪の裾にゆるいパーマをかけて、ふわっとした感じを持った女の子。アーモンド型のくりっとした目が印象的だ。

 「ああ、そうだ。千尋さん。待たせて済まなかったぜ」
 「ぜんぜん大丈夫。今日は付き合ってもらっちゃって、こちらこそすみません」
 「あ……いや、その……どうせ俺らは暇だし。なあ、ハヤト?」
 「ん? ああ、そうだね」
 いきなり話をこっちに向けてくるリュウジがおかしい。慣れない女の子がいるから絶対に照れているに違いないんだ。
 ああ、そうか。これが千晶ちゃんから見ると可愛いところなのかな? 視線を向けたら、やっぱり千晶ちゃんはくすくす笑っていた。
 
 時間が遅くなると国道の混雑につれて、周辺の道も走りにくくなる。
 だからオレたちはひとしきり挨拶を済ませると、すぐさま単車に乗って道へ出ることにした。
 当初の予定通り、千尋ちゃんをオレのリアに乗せてあげることになった。
 「あ、メット持ってきてるんだ。ならかぶったほうがいいね」
 「うん、そうするね。ハヤトくん」
 にこりと笑って千尋ちゃんは、手持ちの真新しいメットを装着した。手つきがたどたどしい。
 「こんな感じ? 変じゃない? 千晶くん」
 なんて、千晶ちゃんを振り返って訊いてる。
 「大丈夫。似合ってるよ」
 「ほんと? うれしい」

 ……なんというか、千晶ちゃんは別として、輪の中に女の子がいる感覚ってオレにも妙な感じ。
 ほら、リュウジがどうしていいかわかんない顔をしてるし。
 仕方ないからオレからリュウジへ切り出した。
 「リュウジ。出発?」
 「オ、オウ!!! そうだな。んじゃ行くか」
 やっとこさリュウジの号令がかかったところで、今日はゆっくりと単車をスタートさせたんだ。

 先頭はリュウジ。その後ろに千尋ちゃんを乗せたオレが続いて、最後に千晶ちゃん。
 いつもとは違う4人構成の一隊は、いつもよりはかなり大人しく鬼浜町を駆け抜ける。
 最初は海を背に、川に沿ってしばらく走った。もう何週間かしたら満開になるであろう桜の木が並んでいるのを見ながら。
 それから鬼工の前も通って、商店街を抜けて、川より一本内側を通って海沿いの国道へ出る。
 まだぎりぎり混雑してくる前の時間だ。
 
 ときどきリュウジがオレを振り返ってくれる。
 よっぽど女の子――千尋ちゃんに気をつかってるんだろう。普段そんなことしないから。
 それへ、問題ないよ、とうなずき返して、オレもいつもよりも丁寧に角を曲がる。
 リアに誰かを乗せて走ることもたまにはあるけど、やっぱり気を遣うもんだ。
 背中に体温を感じて走るのは、責任感みたいなのが生まれてくるしね。
 信号待ちで、リアから話し声が聞こえてくる。千尋ちゃんと千晶ちゃんが声を掛け合ってるんだ。
 「どうかした? 大丈夫? なんか怖かった?」
 「ううん。そんなことないよ、ハヤトくん。ただ、気分いいな、って千晶くんに言ってたの」
 「ああ、そうか。それじゃOKだね」
 そして信号が青になる。また振り返ったリュウジと目配せをしてから極力静かに走り出す。
 ……リアに誰かがいるってことよりも、お行儀よく走るってことのほうが緊張するかも。オレ。

 西に傾いた太陽が、、海面近くに輝きを落とす。そろそろ夕方が近いらしい。
 そういえばちょっと前に、しょっちゅうこれぐらいの時間に海沿いを走っていたような気がする。
 リュウジたちと走るのはもっと遅い時間が常だから、この時間に国道を走るのは珍しい。しかも真冬だし。
 どういうわけか好んで、学校から帰ってくると、何かに後押しされるようにして海を見ながら走る日々だった。それも不思議と、闇雲にという感じではなくて、意志を持って方向を選んでいた。
 なんとなくひとりじゃなかったようにも思うけれど、誰かと一緒だった記憶もなくて。
 おかしな話だけど、このオレが寒さすら感じないような何かに突き動かされていた――ような。
 まったく思い出せないってことは、オレの気のせいかな。うん。ただ走りたかっただけなんだろう。だってオレは単車が生き甲斐だから。

 ――って、こんな物思いにふけっている場合じゃないな、今は。
 背中で感じる人の気配がオレに何かを思い出しかけさせたのかもしれないし、そうじゃないかもしれないけど、とにかく今のオレが遂行すべきは安全運転。
 あらためて気を引き締めて、オレはリュウジの後について走った。


テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

<< ハヤトという名の単車乗り 2-2 | ホーム | ハヤトという名の単車乗り 1-2 >>


コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 BLOG TOP 


  1. 無料アクセス解析
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。