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ハヤトという名の単車乗り 2-2

 いつもよりもだいぶ時間をかけての鬼浜町周回コース。1周目を終えてもとの河川敷に戻って、こんどは千晶ちゃんが千尋ちゃんを乗せて走ると言い出した。
 「大丈夫か? 千晶ちゃん」
 「うん。リュウジとハヤトがついててくれたら平気そう。っていうか、実はあたしも慣れておきたかったんだ、二人乗り」
 「そうか。んじゃ、ちょうどいいな!!!」
 そして今度は千晶ちゃんを真ん中にしてオレが最後尾について、同じルートを行くことになる。
 途中で国道沿いのファミレスに寄ろう、という話になっていた。

 2週目も順調に進んでいた。
 かなり速度をセーブしているリュウジから、最初はさすがに遅れ気味になることもあった千晶ちゃんだけど、慣れてきたのか商店街を駆け抜けるあたりになってからは余裕が出てきた感じ。
 そのまま国道へ出て、しばらく先のファミレスへ予定通り入っていった。
 
 夕飯時にはまだ間があるから、店内はわりと空いている。
 ウエイトレスさんに案内された席。窓際にリュウジが座って、その向かいに千晶ちゃん。オレはリュウジの隣の通路側、千尋ちゃんはオレの向かい。
 それぞれに軽く注文を済ませて――リュウジはしっかり食べる気らしい――、運ばれてきた品々を前にあれこれ話に花が咲く。
 
 「は~。でも二人乗りってけっこう疲れるね」
 ぽんぽん、と肩を叩きながら千晶ちゃんがリュウジに言う。
 「ああ、慣れないとな。そうかも知れねえな」
 「えと、ごめんね、千晶くん。疲れちゃった?」
 「え? あ、大丈夫。そんなつもりじゃないから」
 「そう? ならいいんだけど……」
 千尋ちゃんは、千晶ちゃんを『くん』付けで呼ぶ。彼女の中での認識は男の子なのかもしれない。
 どっちにしても、なんかいい雰囲気のように思えるな。
 
 「ところで、千尋さんはなぜ単車の免許をとろうと思ったんです?」
 それなりに打ち解けたように見えるわりに、なぜか敬語のリュウジがおかしい。もっとも本人は大真面目だからうかつに笑ったりできないけどね。
 「ええとね、前からいいなって思ってたんだけど。真剣に思ったのはね、千晶くんがかっこよかったから」
 「え、やだ、照れること言うね、千尋」
 「そう? だってかっこいいじゃん、実際」
 あはは、と千晶ちゃんは笑った。……これも照れてる笑いに違いない。
 「千晶くんといっしょに走れたらいいな、って思って。そしたらリュウジくんたちにも合流できるかな、って」
 「千尋……あんた、カワイイこと言うねぇ」
 冗談めかして千晶ちゃんが言った。あ、うれしそうだな。
 「そしたらその節は千尋ともどもよろしくね、リュウジ」
 「オウ、歓迎するぜ!! な、ハヤト?」
 「うんうん。楽しそうだね」
 もうすぐ春だ。あったかくなったらそういう華やいだ雰囲気も悪くなさそうだ。

 ケーキを食べる合間に、千尋ちゃんがポケットから手鏡を出して、髪の毛を気にしているのを見ていた。
 「ああ、やっぱりメットって、髪の毛に癖がついちゃうんだね、千晶くん」
 「そうだね。しょうがないよね。でも、いざって時に女の子の顔に傷がつくよりマシでしょ?」
 「ん~、確かに。でも、髪の毛は重要だからなあ」
 「あはは。それもわかるけど」
 なんて女の子同士な会話を目の前に、オレとリュウジは面はゆいような心持ち。
 
 「っていうか、千尋ちゃんは本気なんだね。すでに自分用のメット持ってるんだし」
 「ああ、これ。千晶くんが、免許とるときには自分のメットを持っていかないといけないって教えてくれたから、こないだ買ったばっかりなの。そうだ、偶然なんだけどね」
 と、オレの目を見て千尋ちゃんが言う。
 「どんなのがいいかわかんなかったんで、たまたまお店に居合わせた人に訊いたの。免許をとることから始めるんだけれど、どれを選んだらいいんですか、って」
 「うんうん。最初はわかんないだろうからね」
 とオレは頷きながら聞いている。
 「そう。でね、わたしが声をかけた人が丁寧に教えてくれたの。あんまり親切にしてくれるかお礼でもしようかと思って、その人に名前を訊いたらね、『ハヤト』って言ってた。その人。名前だけしか言ってくれなかったから、お礼のしようがないんだけれど――でも、偶然じゃない? 同じように単車乗る人で同じ名前って」
 「え――そうだね。オレ、同じ名前の人って会ったことないや」
 こんな偶然あるんだね、なんてみんなで言ってた。
 
 ところが――オレたちは意外なことを知ってしまった。
 そのときファミレスの入り口が開いた気配がした。
 なんとなくそちらを見やったのは、千晶ちゃんと千尋ちゃん。
 「あ、大将」
 そう言ったのは千晶ちゃん。
 「ああっ!!! あの人だ、ハヤトくん。ハヤトくんと同じ名前の単車乗り。スキンヘッドのほう」
 同時に、こう言ったのは千尋ちゃん。
 時を同じくして入り口を見たオレたちが思わず立ち上がりそうになったのは、そこにいたのがコウヘイとハンゾウだったから。
 
 千尋ちゃんが親切にしてもらった、『ハヤト』と名乗った人物の正体は――最初の字しかオレと一緒じゃない名前を持った奴だった。
 なんかもう、こういうのに慣れてきていた。
 結局ハンゾウも――コウヘイと似たようなことしていたんだな。
 オレたちに気づいたコウヘイとハンゾウは、それぞれ違う意味で気まずそうな顔をしていた。
 対するリュウジとオレは、力なく笑い合うのみ。
 
 窓の外には大きな夕陽を映す海があった。
 何かが起こる前に出よう、とちいさく呟いたオレに、リュウジは目顔で頷いた。


   * ハヤトという名の単車乗り  完 *


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コメント

なんというオチ!

珍しく今回は争いごとなし?(笑)

それにしても・・・リュウジの後ろには
千尋ちゃんが乗ってほしかったなぁ。
こう・・・ぎゅっと抱きついちゃったりしてね♪やだぁ。

ま、女の子相手に敬語使ってるようじゃ
今後の発展に期待できないな(笑)

>ピノコさま

ども~(*^ー^)ノ
たまの平和ヴァージョンでした(*^▽^*)ェ

>それにしても・・・リュウジの後ろには
>千尋ちゃんが乗ってほしかったなぁ。
うおおおおお!!!
想像すると……こっちが照れる。だはは。

>こう・・・ぎゅっと抱きついちゃったりしてね♪やだぁ
ピノコさんたら、やだぁ♪ んもう。

リュウジは同世代の女の子には……きっと敬語だよねww
けどわたしらぐらいの世代にはガンガンにタメ口だろな。
なんとなく。


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