目次

過去の記事をまとめて表示できるようにしてみました。 【 】がついている項目をクリックすると、それぞれのタイトルの記事を一括でお読みいただけます。 【 】内の数字が若い順に古い記事となっております。 【 】内の冒頭数字が同じものはそれぞれ対になるおはなしです。

これまでのおはなし

全タイトルを表示

御来訪感謝

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

鬼工七不思議 4-1

 
 「今までぜんぜん気にしたことなんてなかったが、本当にシーズンじゃなくてもきれいなんだな、うちのプールは」
 招き入れられたプールサイドでリュウジが感心したように呟いた。
 「はい。これが僕ら水泳部1年の仕事ですんで」
 「へえ。偉いんだな」
 なんて、やっぱり感心してノブオが同級生に声をかける。

 昨日たまたま図書室で見かけた本に書きつけてあった『鬼工七不思議』を追っかけているオレたちの、本日の昼休みのメニューはこれだった。
 『3)水辺:プールにはちいさきものが棲むという 冬でも頻繁に水を入れ替える慣例はそこから』
 
 私立高ならいざ知らず、鬼工のプールは普通に屋外にある。校庭の端っこだ。
 おそらく水泳部に訊いたら何かわかるのでは、とダイゴが言ったのを承けたのはノブオ。同級生に水泳部がいるから呼んでくる、と連れてきたんだ。
 どこかで見たことのある水泳部の1年生くんは、夏の終わりにビーチバレー大会でノブオと対戦した人物。
 
 「それでな、早速なんだけど、ここの水を冬でもきれいにしてるって、なんか意味あるのかどうか知ってるか?」
 プールサイドに屈んで、豊かに湛えられた水に指先を浸しながらリュウジが問う。
 「ええ。これは代々のしきたりなんです。リュウジ先輩
 応えた水泳部くんは、さすがといった肩幅をしていた。学ランの中はきっといい筋肉がついているんだろう。
 「しきたり、と」
 「そうです、そうです。ダイゴさん。なんでもここは神様が守ってくださっているから、って」
 「水の神様?」
 オレが言ったら、水泳部くんはゆっくりと首を縦に振る。
 「部室には神棚もありますし」

 水の神様といったら龍神だろう、とダイゴが言った。
 それから、更衣室脇にある水泳部の部室へオレたちは入れてもらった。
 「運動部の部室っていったらもっと雑然としてるかと思った」
 なんてノブオが目をまん丸くしている。うん、オレも同感だな。
 「まあな。神棚の前じゃこれが正しいんじゃねえ? なあ、ダイゴ」
 「リュウジの言うとおりだな」
 「そっか。じゃあここも1年生くんたちがきれいにしてるんだね。偉いな」
 「ありがとうございます、ハヤトさん」
 はにかんだような笑いが健康的な顔に浮かぶ。スポーツマンってさわやかだ。

 そしてオレたちも神棚にむかって柏手を打って、プールサイドに戻った。
 「先輩に聞いたことがあるんですけれど」
 1年生くんがリュウジにこう切り出した。
 「ときどき、ここで見る人がいるそうです」
 「うん? 神様をか?」
 「いえ。直接はそうではないとは思うんですが、もしかしたらそれに近いかもしれない存在を」
 オレは1年生くんの話すことを、やたらと神妙で、そのくせあったかい、懐かしいような不思議な気持ちになりながら聞いていた。
 「練習中に泳いでいて、足がつったりすることがあるんです。どうしても。そんなときに、ですね。すごくちいさい人型の存在を見たって人がいるようで。まるで助けてくれるように、とか、水の流れを変えるように、とか、いろんな話がありますね。その時は極限状態ですから、錯覚ではないかと言う人もいるんですが、僕は信じています。その存在を」
 
 オレは感動したような妙な気分でぼんやり水面を眺めていた。
 そんなオレをリュウジとダイゴがどうしてだかじっと見ていたみたいだ。
 「うん。きっといつも見守ってくれてるんだね。ちいさい誰かが。いつも感謝していたほうがいいだろうね」
 「ええ、もちろんです」
 1年生くんは気持ちよくそう答えてくれたんだ。
 リュウジとダイゴがやけに優しい目でオレを見ているのが、むしろ気味悪いような。


テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

<< 鬼工七不思議 4-2 | ホーム | 鬼工七不思議 3-2 >>


コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 BLOG TOP 


  1. 無料アクセス解析
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。