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鬼工七不思議 5-2


 いったん帰りかけたのにわざわざ戻ってきてくれた千晶ちゃんの心当たりっていうのは、保健室の遥先生だった。
 オレたちよりひとまわり年上の、きれいな大人の女性。柄のよろしくない鬼工に似つかわしくない、いかにも育ちのよさそうな、おっとりとした雰囲気の遥先生のいる保健室は、校内のどこよりも真実癒されるっていうのがもっぱらの評判だ。
 千晶ちゃんを含めてオレたち5人は、その保健室に押しかけている。会話の中心には遥先生がいた。

 「あんたたちむさくるしい男連中は知らないでしょうけどね。遥先生は、あたしたち女子にとっては偉大なる恋の指南役なのよね~」
 「へえ、そうだったんだ。知らなかったな」
 「そんなに大層なものじゃないわ、ハヤトくん。ただ同じ女として、ちょっと聞き役になってあげられる、って。それだけよ」
 「でも聞いてくれる人がいるってだけで気分的には違うんだろうね、女子は」
 「あ、やっぱりわかる? ハヤト」
 「うん。なんとなく、だけど」
 オレが話しているあいだ、リュウジもダイゴもノブオも黙りこんでいる。こういう話、苦手なんだろうな。

 「で、遥先生の恋愛指南とやらが、七不思議と関係あるんだろ? 千晶ちゃん」
 「うん、そうそう、リュウジ。ね、遥先生?」
 「なに? 千晶さん」
 「あのね。たしか遥先生のオススメするおまじないみたいなのがあるって、あたし聞いたことあるんだけど。女の子に」
 「ああ、あのことかしら。自信のない告白を後押ししてくれるおまじない?」
 「そうそう。多分それだわ。遥先生、それ、このむさくるしい男どもに話してやって」

 そう頼んでくれた千晶ちゃんのあとを承けて、遥先生は話してくれた。
 「たとえば相手が自分のことをあまり知らない人だったりするときね。そんな相手にも好印象を持ってもらえるシチュエーションっていうのがあるんですって。私も聞いた話なんだけれど」
 「遥先生――それって、もしかして、雨の木曜日、早朝に音楽室か?」
 「あら――リュウジくん。そうね、だいたいそんなところかしら。よく知ってたわね」
 遥先生がふわりとリュウジに微笑むのを見て、オレたちは目を見合わせたんだ。

 「なあ、遥先生。鬼工七不思議って聞いたこと、あるか?」
 「七不思議……いいえ、聞いたことないわ」
 「そしたらその話、どっから聞いた?」
 「おととし、だからあなたがたが入学する前に他校に転任になった先生に伺ったのよ。鬼工の伝統ですって。そういうのは近頃では忘れられているようだけれど、っておっしゃってらしたわ。もっとも私が聞いたのは、音楽室ではなかったけれど。単に『静かな音楽の流れる場所』ってだけ」
 「なるほどな。音楽があれば、音楽室である必要はないのだな」
 「そうみたいね、ダイゴ。でもそれには音楽室がいちばん自然ってことよね」
 千晶ちゃんが言ったのに、オレたちは――遥先生も――頷いた。

 「何にせよ、あなたがたがこの話を知っていたことに驚いたわ」
 そう遥先生は感想を言った。確かにオレたちって、そういうのからかけ離れてるもんな。
 「そういえばハヤトくん。1年生だった秋ごろにあなた、そういう告白をされなかった?」
 「え――オレ? 記憶ない……って、あ!!!」
 そうだ、思い出した。オレ、そのころに顔も名前も一致しない当時3年生だった女子の先輩に呼び出されたことがあった。
 うっかり寝坊したから指定の時間に、指定の場所に行けなくて。それを詫びに昼休みになってから先輩の教室を訪ねたら、先輩は悲しそうな顔でオレにこう言ったんだ。
 『もういいの。忘れてね。雨の木曜日に私は味方してもらえなかっただけだから』――

 「ええっと……あれって、もしかして?」
 遥先生はこくりと首を縦に振った。
 「彼女、それで諦めたんですって。ハヤトくんの寝坊癖にはおまじないも形無し、って」


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