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鬼工七不思議 9-3


 「なんだ? ここは一体どこだ?」
 「ええっと……どこだろ?」
 リュウジと顔を見合わせていぶかしむ。
 「海がこちらの方角に見えるということは、鬼工はあちらだな」
 「そうみたいっスね、ダイゴさん。あ。ここ、運動場っスね」
 「そうか。見たことあると思ったぜ。ってか、こんなところに出口があるってどういうことだ?」
 「ええっと……なんでだろ」
 地下通路を歩いていて起伏があるなんて思えなかったけれど、オレたちが地上に出たところっていうのはすこし小高くなっている場所にある町営グラウンドだった。体育祭で使ったところだ。
 グラウンドの横にある茂みの一角に、その出口が隠されていたんだ。
 「まったくもって不可解だよな?」
 なんて言い合っていたオレたちのすぐ横で物音がした。
 かと思うと、オレたちが出てきた出口とはすこし離れたところがざわめいて――

 「うおおおおおお!!!」
 かくなる絶叫が場をどよもした。
 オレたちは瞬時に身構えて、そちらに視線を送る――そしてオレたちの目に飛び込んできた大きな奴は必至の形相でオレたち4人のど真ん中を突っ切って、闇雲に走り去る。
 「おい、落ち着くのだ、ゴンタ!! 戻れ!!」
 そして、次に聞こえてきた声。どこかで聞いたことのある声。
 続いてどこかで感じたことのある気配、さらにどこかで見たことのある特徴ある髪型。

 『鬼工七不思議』の6つめの言うところによる、因縁ある場所でオレたちが行き合ったのは、暗黒一家だった。
 奴らはオレたちを認めて同時に一瞬奇妙な表情を浮かべ、コウヘイが何かを言いかけた様子を見せたがそのまま町の方角へと走っていった。そう、最初に駆けだしたゴンタを追いかけて。

 とにかくもう、まったくもって訳がわからなかった。
 鬼工の地下がこんなところに通じていることもしかり、何故だか暗黒一家に出くわしたこともしかり。
 奴らの姿が見えなくなるまでぽかんと眺めていて、一息ついたあとにリュウジが思いついたようにこう言った。
 「そうか。さっき叫び声が聞こえたと思ったのは奴だったのか」
 「どうしたんでしょうね?」
 「さあね。あ、ネズミでも出たんじゃない? ゴンタ、嫌いだっただろ。ネズミ」
 「そういえば何かの鳴き声が一緒に聞こえたのだからな。おそらくハヤトの言うとおりだろう」
 「だな、ダイゴ。ってか、なんで奴らがこんなとこにいるんだ?」
 リュウジの疑問はオレたち全員の疑問だった。

 それからオレたちは、奴らが出てきたと思われるあたりをちょっと調べてみた。けれども茂みの内側に通路があることを窺わせるものなんて何もない。
 それだけではなくて、オレたちが出てきたはずの場所にも、外からそれとわかる『入口』は見つけられなくなっていた。
 もう何が不思議なんだか、何が不思議じゃないんだか――なんてリュウジがぼやいている。
 
 しばらくあちらこちらを検めたあとに、諦めたようにリュウジが言った。
 「しかたねえな。んじゃ普通に歩いて戻るか。教室に鞄とか置きっぱなしだからな」
 「そうだね……。ぼちぼち校門閉まる時間だし」
 「押忍。怪しまれぬ前に南京錠も元に戻しておかねば」
 そうしてオレたちは、奇妙な気分を引きずったままその場を立ち去ることにしたんだ。
 
 と、その時。ちょうど暗黒一家が出てきたとおぼしきあたりを名残惜しそうに眺めていたノブオが声を上げた。
 「あれ? なんだろ、これ? ヤツらが落としていったんっスかね?」
 「どれ――?」
 ノブオの拾い上げたのは折りたたまれた紙切れだった。促されるままリュウジに手渡す。
 それを広げたリュウジは、目が追うままを声にする。
 「なになに……『暗黒七不思議』だと?」
 「ええっ? 何それ?」
 リュウジの手元の紙切れを一同でのぞき込んでみた。
 そろそろ暮れようとしている春の陽差しで読んだそれは――ここ数日リュウジが持って歩いていたメモ用紙と似たり寄ったりのものだった……。

 「どこにでも似たような話ってあるんだな」
 4人で町を目指して歩きながら、ぽつりとリュウジがこう言った。
 「そうだね。これが因縁そのものってことなのかもね」
 「よくわかんねえけどな」
 奴らの落としていったメモ『暗黒七不思議』は、オレたちはそんなに詳しく見てはいない。リュウジが他校の秘密を変に知るのは気が引けると言って、すぐにたたんでしまったから。
 「それよかさ、明日あたり暗黒に顔出してみようぜ!!」
 「え? なんで?」
 「ほら、返してやらねえと悪いだろ、これ。マルがついてるとことそうでないとこがあったから、多分まだ決着ついてねえところあるだろうしな。それに学校の秘密なんてもんは、おいそれと他に知られちゃまずいかも知んねぇし」
 なんとまあ、リュウジって妙に義理堅いよな。それがリュウジの仁義ってやつなんだろうか。

 「そしたら明日の放課後はまず暗黒行って。それからだね」
 「ん? それから何するんだっけか?」
 「あれ? リュウジ、これで終わりじゃないだろ? オレたちのほうも。失われた7つめを探すんじゃなかった?」
 「お!!! そう言やそうだな、ハヤト!!! お前、なんだかやる気じゃねえか!!!」
 「だって、なんか気になるじゃん? すごい不思議なことが何か待ってるかもよ?」
 「よっしゃ、いい心意気だぜハヤト!!!」
 リュウジがわはははは、と笑いながらオレの背中をどやしつける。

 そろそろ春の匂いの混じり込んでいる夕方前の鬼浜。鬼工にも鬼浜町にも、まだまだいろんな不思議が潜んでいるのかも。
 オレが鬼工に入ってリュウジたちと巡り会って――そのこと自体が不思議だったのかもな、なんてリュウジに叩かれた背中が痺れるのを感じながらひとり思ってくすりと笑う。
 オレの気持ちの落ち着く居場所。ここにはいつも仲間がいる。
 
 
   *  鬼工七不思議 完  *


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