目次

過去の記事をまとめて表示できるようにしてみました。 【 】がついている項目をクリックすると、それぞれのタイトルの記事を一括でお読みいただけます。 【 】内の数字が若い順に古い記事となっております。 【 】内の冒頭数字が同じものはそれぞれ対になるおはなしです。

これまでのおはなし

全タイトルを表示

御来訪感謝

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

すべての不思議を解く者 1-2


 「しかし、桜ってのは理想的だよな」
 重そうなほどに枝を飾っている花を見ながら歩くリュウジがそう言った。
 「うん? なんだって?」
 「いやな。桜って、枯れねえだろ? その前に散るから」
 「ああ、そうだね」
 「一番きれいな時に散るっての、潔いってか。漢字に『女』って入るのに、漢らしいよな」
 舞い落ちる花びらを触ってみようとするように、リュウジはてのひらを広げながらオレを振り返ってこう続けたんだ。
 「……なるほどね。言われてみればそうかも知れないな」
 「兄貴、ご明察っス!!! オレもね、ずっと思ってたんっスよ。兄貴って桜吹雪がすっごく似合うっス!!!」
 「お、そうか? それはうれしいぜ、ノブオ」
 うん。そうかも。リュウジの赤い髪にふわりと降る、限りなく白に近い桜色の花びら――けっこう似合ってるよな。

 さて、そのままのんびりとした足取りで歩いて、オレたちは体育館の近くまで来ている。
 すこし離れたところから見てもオレたちの目指す場所ははっきりとわかる。校庭ぐるりを埋め尽くす今こそ満開の桜の木の中で、たった1本だけ未だつぼみが赤くなったばかりの頃の木。
 『鬼工七不思議』で言うところの、開花の瞬間を見た者にしあわせをもたらすという1本だ。
 この木の開花を見守っているのはオレたちではなくて、園芸部のふたり組だった。『鬼工七不思議』とは関係なくて、ただ部の昔の記録からこの木を知って研究しているんだとか。
 件の木の根本には、青いレジャーシートが敷いてある。園芸部の持ち物だ。
 そこには毛布も用意されていて、食べかけのお菓子なんかも置いてある。
 けれども――現在は無人だった。
 
 「ん? いないな、園芸部」
 「そのようだな。買い物にでも行ったか?」
 「どうでしょうね~。荷物このままで、ふたりで出かけるなんて不用心っスね」
 「あはは。用心しなきゃいけないほど人なんかいないってば、ノブオ。春休みだし」
 「それはハヤトの言うとおりだとは思うけどな。でも、絶え間なく見守っていないと意味ねえんじゃねえか? もしかしたらそろそろその瞬間かも知れねえし……」
 なんてリュウジに言われてオレたちはその木を見上げる。
 実はオレも去年、花が遅いことに気がついていたその木。オレは単にそういう種類なんだろうと親父に言われてそのまま受け流していたその木。
 ほかの木々が満開を過ぎた今でも、未だ静かに体育館の脇に鎮座している――そんな感じ。
 この木に花がついたとき、いったい何が起こるのか。なんてちょっと大袈裟かな。

 「ああ、でも開花は近いようだな。ほら、つぼみがふくらんでいる」
 「ホントっすね、ダイゴさん。触った開きそうに見えるっス」
 「こら、ノブオ。触ったらダメだろ? この木は特別なんだから」
 「物のたとえっスよ、ハヤトさん。ね、兄貴――?」
 そしてノブオがリュウジを振り返る。
 木に見入っていたリュウジは、ノブオに答えなかった。その変わりにちいさく嘆息を漏らす
 「お……」 
 「ん? どうかした?」
 
 オレがリュウジに問い返したそのときだった。
 「これはこれは、総隊長以下おそろいで」
 「ダイゴ。春休みなのに学校か? 珍しいね」
 口々に言いながら、園芸部のふたり――長髪氏と小柄氏が戻ってきた。
 「押忍。ちょっと用事が。な? リュウジ」
 「お、オウ――ってか園芸部。持ち場を離れちゃまずいだろ? 観察を続けないと、な? 今にも咲きそうに見えるじゃねえか」
 リュウジの言にはじかれたように園芸部のふたりは桜の木を見上げた。
 そして――
 「おお!!! 咲いている」
 「ああ、本当だ!!!」
 歓喜の叫びを校庭に響かせて、園芸部はもうオレたちにはお構いなしに桜の木に寄っていっていった。そう、最初の花の咲いた桜の木に――。
 なんだかんだ、オレたちは立ち会うことができたみたい。『鬼工七不思議』に言われるところの桜の開花の瞬間に。リュウジに視線をやったら、微笑みながら園芸部の様子を見ていた。


テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

<< すべての不思議を解く者 2-1 | ホーム | すべての不思議を解く者 1-1 >>


コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 BLOG TOP 


  1. 無料アクセス解析
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。