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すべての不思議を解く者 2-1


 鬼工校庭を彩る桜の、最後の1本の開花を見届けたあと。
 園芸部はいろんなデータやら写真やらを忙しそうにとり始めたので、邪魔したら悪いということでオレたちは学校をあとにしてきていた。
 今日は早めの夜から単車で走る予定になっているので、一旦解散ということになった。

 道の途中でダイゴとノブオと別れて、リュウジとふたりの帰り道。なんだかリュウジがいつもに似合わずに神妙な表情をしているのがさっきから気になっていた。
 「どうかした? リュウジ」
 「あ――ああ。まあ、なんて言うか、な」
 「歯切れ悪いね、リュウジ。珍しいな」
 「そうか? ああ、でもそうかもな。いや、俺、ちょっとばかり申し訳なくてな」
 「何が?」
 オレが問うと、リュウジはすこしきまりの悪そうな顔を見せた。
 「実はな。俺、園芸部の奴らよか、ほんのちょっと先に気づいてたんだよな。花が咲いたのに」
 「え――」
 
 ああ、やっぱりな。なんてオレは思ってた。リュウジの様子が微妙にいつもと違うことに気づいていたから。
 「いや、悪気はねえんだ。そんな真剣に見てたわけじゃねえから。ただ、何てんだ? 見上げた瞬間に目に飛び込んできたってか。一輪だけ咲いてるのがな。なんて、こんな言い訳じみたのって俺には似合わねえんだけど」
 「それは、だってリュウジが悪いんじゃないし。たまたま園芸部がいなかったのがついてなかったんだし」
 「そうか? ハヤトはそう言ってくれるか?」
 「もちろんだよ。誰にも言わないしね」
 「――やっぱりハヤトは俺の気持ちをわかってくれるな!!!」
 「あはは、これでも付き合い長いから」
 なんて言ったら、リュウジはいい顔で笑ってた。

 「それに、さ。園芸部はオレたちと同じ意味あいであの木を見守っていたんじゃないしね。純粋に研究してただけだろ?」
 「ああ、そう言ってたな」
 「だから、仮に最初の一輪を見ることにそこまで徹底的にこだわっていたわけじゃないかもしれないし」
 「そう――とも言えるかも知れねえよな。ああ、でもやっぱりなんか申し訳ねえことには変わりないぜ。せっかくあんだけ頑張ってたんだしな」
 「あはは。リュウジらしいな」
 こう見えて努力を惜しまないリュウジ。努力する者には賞賛を惜しまないリュウジ。
 そんなところが総隊長として人を統べる器なんだろう。
 そういうリュウジの横をオレにはちゃんと守れているんだろうか――なんてときどき思うんだけど、リュウジとは縁あって近しい間柄になったんだから。これだってオレの使命だったのかもしれないし。
 
 リュウジが次の言葉を紡ぐ直前のほんの一瞬に、オレがそんなことを考えていたなんてリュウジにはわかっているわけなかった。
 にもかかわらず。
 「やっぱハヤトは俺のことをよくわかってるよな。俺がどんな言葉を期待してるか、とか」
 「ええ、そうかな? オレ、そんなに察しのいいほうじゃないけど?」
 「察しとかそういう、考えた上での言葉なんてどうでもいいと思わねえ? むしろ、ハヤトみてえに深く考えない物言いが、すとんと腑に落ちる、みたいなのって気分いいぜ!!!」
 「……ええと。思慮深くないオレが好ましい、って?」
 「わはははは!!! 別の言い方だとそうとも言うな!!! まあ、あれだ。なんだかんだ言ってハヤトがそばにいると楽でいいぜ。俺にはな」
 
 感謝すればいいのか。照れればいいのか。それとも馬鹿にするなと言えばいいのか。
 どれにも決めかねていたオレの心から、なんとなくこんな言葉が転がり出てきた。
 「これからもどうぞよろしく」
 我ながら妙な言葉の選び方だったと思う。聞いたリュウジが一瞬二の句を継げなかったから。
 それでもリュウジはふと空を見上げてから、オレに向き直ってこう言った。
 「オウ!!! こっちこそな」
 青い空には薄い雲がたなびいている。どこかから甘い春の匂いがふわりと漂ってくる。

 「ところでリュウジ。ここだけの話、最初の花を見たんだろ?」
 「ああ。もう忘れていいぜ、ハヤト」
 「うん。これだけ訊いたら忘れるよ。あのさ、今年1年幸運をもたらすんだろ? リュウジだったらどんなふうな幸運だったらいいと思った?」
 「俺か? そうだなあ。俺は実際、今のままが一番しあわせかもしれねえからな。願い事をするのが有効だとは聞いてねえけど、仮に願掛けしてみるとしたら――今と変わらねえ日々をずっと送れることが一番かな」
 「あはは。ストイックだなあ、リュウジ」
 「そうか?」
 「うん。だってさ、てっきり恋愛成就とかそういうのを期待してるのかと思ってた、オレ」
 「ば――何言ってるんだ、ハヤト!!! こ、恋とか、そのう……そんなん二の次だろ!!!」
 「あ、照れてる? リュウジ」
 「そんなんじゃねえってのに」
 ほんとリュウジってこういうところ純粋だよな。真っ赤になってるよ。
 だったらその辺は、かわりにオレが願掛けしてやっておこうかな。


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