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すべての不思議を解く者 2-2


 みんなで集まって走る予定の夜を前に、オレは前哨戦とばかりにひとりで夕方の国道を流した。すこし前まで厳しかった身を切るような冷たい風はどこへやら。
 ほんとに春はいいなあ――心が弾むような感じ。
 そのまま町を一周して、まだ時間は早いけれどもいつもの河川敷の集会所へ行ってみることにした。
 誰か来るまで土手の桜が散るのでも眺めていようかな、とかオレらしくない風流な心持ちで。
 
 河川敷に降りたところで気がついた。見慣れた赤い単車がそこに停まっている。
 あれ、先客か――と見渡してみると、土手の桜の下にリュウジが立っていた。考えることは一緒ってことか。
 
 「リュウジ」
 リュウジのマシンの横に愛車を停めて、手を振りながら土手をよじ登る。気づいたリュウジがオレに手を貸してくれた。
 「オウ、ハヤト。早いじゃねえか」
 「うん。もうひとっ走りしてきたとこだ」
 「そうか。朝じゃねえとちゃんと時間守れるんだな、ハヤトって」
 「……それは褒めてくれてるのかな」
 「そういうふうに聞こえるか? まあいいか」
 リュウジと並んで川の流れるのを見てる。時折吹く風に桜の花びらがのって、オレたちの眼前をかすめてゆく。

 「どうかした? なんかおとなしいけど」
 「俺か? たまにはいいじゃねえか。騒がしいだけが花見でもあるまいし」
 「って、それもリュウジっぽくないな」
 オレの言葉にリュウジからの返事はなかった。ほんのちょっと、何かを考えるような横顔。
 それを見守っていたら、リュウジがようやく口を開いた。
 
 「さっきな、俺、すげえ久しぶりに昼寝してな」
 「へえ。リュウジが昼寝って珍しいね」
 「ああ。ハヤトだったら毎日だろうけどな」
 「……うん」
 「まあ、それはいいや。でな、夢を見たんだ。薄いピンク色のふわっとした軽そうな衣装をつけた、女の人っぽい――神様なんだろうな、きっと。俺が敬虔な気持ちになったんだからな。そんな存在が出てくる夢だ」
 リュウジは声のトーンを上げずに話す。ふたりで喋っていても何かと腹の底から声を出す漢にしてみれば、これも珍しいこと。
 
 「へえ。神様。で?」
 「ああ。願いがあるならきいてやろうと仰った」
 オレではなく眼前の風景に視線をやったままのリュウジの横顔がへんてこに無表情だ。
 「願いって?」
 「さあな」
 「今のままの日々が続くようにって?」
 「……わかんねえけど。俺には答えようもなかったからな」
 「ふうん」
 夢の中のリュウジさながら、オレにも答えようがなかった。

 「でな。その夢から覚める瞬間にな、その神様が俺にこう訊いたのが妙に生々しくてよ」
 「何て?」
 「『サザエさん』を知っているか、と」
 「は? サザエさん――? な、なんで?」
 「さあな」
 どう考えても、ここは笑うところのような気がした。素っ頓狂な夢の話なんて、それが常だし。
 それなのにそうできない何かがリュウジとオレの間を支配していた。

 「サザエさんって言ったら、有名なやつだよな?」
 「多分な」
 「サザエさんはおっちょこちょいな主婦で、小学生の弟と妹がいて」
 「で、サザエさんの子供はいつまで経っても幼稚園に入る前ってやつだ」
 「そういえば赤ちゃんもいたっけ。オレが子供の頃から『バブバブ』とかしかしゃべれないまんまだな」
 「ああ。あの、永遠に時間の流れない漫画だよな」
 「それがどうしたんだろうな?」
 「わかんねえ」
 それからしばらくリュウジもオレも黙っていた。川の向こう岸の桜並木がこっちよりも強い風に煽られているのが遠目に見えた。

 その晩のオレたちは、春らしい春になってから初めての連れ走りだったからすごく盛り上がった。
 リュウジがいて、ダイゴとノブオがいて。リュウジが誘ったらしい千晶ちゃんも来て、千晶ちゃんのリアには千尋ちゃんも乗っていて。
 ほかにも鬼工の仲間たちが大勢合流していた。
 こんな大人数で走るのは、さすがにしょっちゅうあることではないので、それだけで気分が高揚してた。

 途中で対向車線の遠くから警察らしき赤灯が近づいてくるのにリュウジが気づいて、あわてて全機で海岸へ降りてやり過ごしたり。
 さらに暗黒一家とすれ違ったり。さすがにこちらの人数がいつもと違ったので、何かを仕掛けられることはなかったけれど。
 それからいつもの河川敷に戻って、しばらくわいわいやったりとか。

 楽しい時ってのはすぐ過ぎる。
 単車と一緒になって全身で感じる春。
 その日から残った春休みの数日を経て、ついに新学期を迎える日になっていた。
 
 いつもの通りにリュウジに起こされて始まる、学校の日の朝。
 そして辿り着いた学校――いつもの2年B組の教室。
 千晶ちゃんと挨拶して、玉城もいて――いつもの同級の面々。
 チャイムが鳴って、教室の前の扉から竹刀片手に赤ジャージが入ってくる――いつもの朝。
 「え~、諸君。今日から新学期だ。いつまでも春の浮ついた気分でいないように気を引き締めて生活するように」
 「相変わらずいかめしいなあ、赤ジャージ。ってかマキ姉は元気か?」
 「リュウジ! そのような個人的なことは後にするように」
 「わはははは!!! ハヤト、赤ジャージ照れてるぜ」
 「ほんとだ。なんか顔が赤いかも」
 「ハヤト。放課後は職員室に来るように」
 「え――? なんでオレ?」
 「わはは。ハヤト、新学期早々呼び出しか!!! 武勇伝だな!!!」
 「人ごとではない、リュウジ。もちろんお前も一緒に来るのだ」
 どっと教室が涌く。
 いつもの雰囲気がたまらなくあったかい。

 ――あれ?
 4月からの新学期なのに、なんで『いつもの教室 いつもの面々 いつもの雰囲気』なんだ?
 リュウジは気づいているのかな?
 これ、リュウジが願ったことなのかもしれないよな?
 サザエさんって、こういう話だったかもしれないよな?

 周囲一同誰もこれをおかしいと思っていないみたいな気がした。
 どうやらオレ、もう一度2年B組をやるらしい。オレが進級できなかったってことじゃないらしい。となりのC組にはダイゴがいるんだろう。そういや朝、ノブオも普通に階下の教室に入っていくのを見たし。
 
 ああ、もしかしたらこれが失われた七不思議の最後のひとつなのかもしれない。
 図書室で見つけた『鬼工七不思議』。最後まで暴けたのは、最初に見つけたオレだけだったんだろうか……。
 
 奇妙な心持ちになってはみたけど、まあいいか。
 オレもこの環境が大好きだから。
 いつまでも続くといい――そんなふうに思っているのは、きっとリュウジだけじゃないんだ。
 おそらくこれが鬼工の最後の不思議。
 そしてオレたち鬼浜爆走愚連隊が永遠にリュウジのもとにあるっていうことが生んだ不思議なのかもしれない。
 

   * すべての不思議を解く者  完 *
 
 

テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

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コメント

わーわ!!

話の途中でね、「3学期が終わった」なんてあったから
う~ん、次からはみんな進級してるのかなぁ
話はどうなるんだろう・・って思ってたら・・・・・・
こういうオチだったのねぇぇぇ!す、すごい!
サザエさんスゴイッ!(笑)

またこれからも2年生のリュウジたちが
見られるのね。
永遠のシックスティーン・・・・私と同じだ(笑)

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遅ればせ★

やっと全部読み終わったよ!(遅w

ご無沙汰でm(._.)mごめんなさい

ん~あえて…
天才作家様と呼ばせていただきます!
鬼浜爆走愚連隊のメンツがみんなイキイキと描かれ個性豊かな脇役達が素敵な味付けをしスロキャラからの脱却を図ったと!

なんか難しい言葉じゃ書けないけどとにかくねこれ読んでから鬼浜がもっともっと好きになれました★

素晴らしい物をありがとぅ
そして落ち着いたらまたよろしくね!

>ピノコさま

ども~(*^ー^)ノ
お返事おそくなってごめんなさいo(_ _*)o
……うん。1年経ってる。
しかも背番号☆壱万だし。だはは。


なにごともなかったように、永遠の高校2年生を復活させてみることにしました。
ぼちぼち夜露死苦ぅ!!!

>tohkoさま

ども~(*^ー^)ノ
お返事おそくなってごめんなさいo(_ _*)o
1年経ってるね~w

またのんびりと書くことにしちゃいました。
パチ鬼浜出るし~!!!
tohkoさんもちょうど同時に復活ですもんね。
おたがい楽しくいきましょう♪

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