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春風到来 2

 
 
 甘い香りをはらんだ風が桜並木を揺らしてる。
 久し振りの夜の河川敷は、ほんの数週間前とは違う場所のようだ。
 冬の間の河川敷はまるでオレを突き放すように冷たかったけれど、今日のここはオレを歓迎してくれているような気がする。
 ……まあ、単にオレが寒いの苦手だからそう感じるだけなんだろうけど。

 リュウジの招集を受けたオレたちは、夜を待って国道を単車で流した。
 今はちょうど日付の変わったころ。ことによってはもう一周行くかどうか、ってところだけど、ひとまず小休止ということでお決まりの河川敷に来て、他愛のない話なんかに興じている。
 
 「俺な、昨日の夜、漫画読みながらこたつでうたた寝しちまってな」
 「リュウジ。こたつで寝ると風邪をひくぞ? もうさほど寒くはないとはいえ」
 「オウ。ついうっかり――な。ダイゴ」
 「へえ。リュウジにしては珍しいんじゃない?」
 「そうっスよ、兄貴。ハヤトさんならいざ知らず」
 「……って、ノブオ。お前、一言多いな」
 わはは、なんて笑い交わす仲間との夜。うん、オレの好きな時間だ。

 「それでな、そのまま朝まで眠りこけたりしなかったのはハヤトのおかげなんだぜ!!!」
 そこまで言ってオレの顔を見るなり――リュウジは笑いはじめた。
 「わはははは!!! それがもう、ハヤトがおかしくてな」
 「オレ? オレがどうしたんだよ、リュウジ」
 「オレも聞きたいっす、兄貴」
 「いやな、夢の中の教室でオレの前の席にハヤトがいて。でもって、振り返ったんだよな、授業中に。そしたらハヤトの奴、頭がリーゼントだったんだぜ!!!」
 「ええ~!! ハヤトさんが――うははははは!!!」
 「だろう? おかしいだろ? おかしいよな、ノブオ!!! だから俺、笑いすぎて目が覚めたぜ」
 「まったくもって傑作っす、兄貴~」
 「押忍。確かにハヤトにその髪型は、あまり似合う感じではないゆえ」
 ダイゴはまだしも、リュウジとノブオのふたりはオレを指さして、それでもってオレの頭を見て何かを想像しながら笑い転げてる。べつにおかしくないのはオレひとり。
 
 「なんだよ、もう。みんなでオレを見て笑うなんて」
 わかりきっているけど、オレの反論なんて誰も聞いていない様子。
 「っていうか、第一、オレそんな髪型になんかしないし」
 「何だと? ハヤト、聞き捨てならねえな!!! 『そんな髪型』って言ったろ、今」
 「え――あはは」
 ……こんなことだけ聞こえるんだもんな、リュウジの耳ってのは。
 「わかってねえな、ハヤト。リーゼントってのはな、漢の髪型だぜ!!!」
 「そうっすよね、兄貴!! 漢にしか似合わないっス~」
 「それはオレが漢にはなれないってことなんだな……」
 嗚呼、もうオレ、笑われ放題。ぜんぜん意味がわからないまま笑われ放題だ。
 
 「ちぇ。何とでも言えばいい」
 「ハヤト。何もそう落ち込まずとも」
 「ダイゴ……オレ、別に落ち込んでなんていないから」
 まったく。どっしり頼れるはずのダイゴまで頬が笑ってるよ。
 でも、まあいいか。仲間と笑いあえるのはオレの好きな時間だって感じたばかりだし。
 そう考えたら、オレもちょっと笑ってみる気になった。笑うのって悪いことじゃないな。
 
 「さ~て、もうひとっ走り行っとくか?」
 ようやく笑いをおさめたリュウジが言った。切り替えが早いな。
 「OK、行こう」
 「押忍」
 「は~い、兄貴!!」
 それぞれリュウジに応えて、土手を上がる体勢に入るった。
 と――
 土手を見やったオレたちの目に入ってきたものは、大きな風が吹いているわけでもないのに激しく揺れる桜の木。
 しかも並木全体ではなくて、オレたちの目の前の1本だけがゆさゆさと揺れている。放っておいても木から離れてゆくばかりに咲き誇った花びらを、ここぞとばかりに散らしながら。

 「あれ? なんかあそこだけ揺れてません?」
 「オレもそう思った、ノブオ」
 「確かに不自然ではあるな」
 「ダ――ダイゴ、あれはもしや……」
 見やったリュウジが声を低めてダイゴに問う。
 「いや、心配には及ばんな、リュウジ。そのような手合いの気配は感じぬゆえ」
 「オ、オウ!!! それなら安心だぜ」
 ダイゴの言葉を聞いて、リュウジの声はもとの張りを取り戻していた。
 そう、リュウジは『この世のものではない』ものごとに案外弱いらしい。対してダイゴは商売柄――ダイゴの家はお寺だ――、そうした気配には敏感で、判断に間違いがない。
 リュウジの数少ないと思われる弱点も、こうやって補ってやれる組み合わせなんだ。
 
 「ん――? 木のところに誰かいる、リュウジ」
 「何? どれ――」
 オレがそう告げると、リュウジはいち早く駆けだして土手を上がる。オレたちも急ぎ気味にリュウジのあとを追った。
 オレたちが土手を上がりきるより先に、耳にリュウジの叫びが届く。
 「オラ!!! お前、何やってやがる!!!」
 「何だっていいだろう? こっちの勝手だ」
 
 その声に遅れることしばし、リュウジと相手の姿が目に入るところまで辿り着いた。
 リュウジの目の前には、桜の木を背にしてリュウジをにらみつけている男。
 背が低くて痩せていて、眼鏡をかけた――大人の男だった。
 「どうした、リュウジ」
 「ハヤト、この親父がな、桜の木によじ登ろうとしてやがったんで止めたとこだぜ」
 「なるほど。それで揺れていたのだな、木が」
 「そうっスね、ダイゴさん。ってか、おっさんには木登りなんて無理じゃないっスか?」
 「そういう問題じゃねえぞ、ノブオ!!! 桜の木を傷つけるなんて狂気の沙汰だぜ」
 「押忍。リュウジの言う通りだ。桜の枝を折っただけで罪になる」
 オレたちがちょっとした言葉を交わす間に、また木が揺れた。はっとして見れば、親父さんが木にすがりついている。
 
 「ああっ!!! 親父、正気か?」
 「う、うるさい!!! 黙れ!!! お前なんかに私の何がわかるって言うんだ」
 「……ダイゴ、手を貸せ」
 「押忍」
 言うが早いかリュウジとダイゴが左右から親父さんの両腕を捉えて、いとも簡単に幹から体を引き離した。
 その勢いで親父さんは、木の根元に倒れ込んで尻餅をつく。
 「一体何の資格があって私の行く手を阻むんだ、あんたたちは……」
 立ち上がる気もなさそうに、親父さんはうつむいてそう言った。
 「しかくもさんかくもあったもんじゃねえっての!!! 親父、何がしてえんだよ?」
 「……うるさい、もう放っておいてくれ!!」
 何を思ったか、親父さんは突然声音を変えて叫び声になる。
 かと思いきや――急に立ち上がって、見合った体勢のリュウジの腹に拳骨を喰らわせる。
 
 突然のできごとに、オレたちは息を呑んだ。
 不意打ちを見舞われたリュウジはバランスをくずして倒れかける。
 それを見た親父さんは、さっきよりも大きな声を桜並木に響かせたんだ。
 「私はあんたたちみたいな若者が、憎くて仕方がないんだ!!!」


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コメント

ありがとうございます!

鬼浜の小説…すごく楽しみにしてました(^^)
再執筆これからも頑張ってください♪(*'-^)-☆

>全国制覇さま

ども~(*^ー^)ノ 華丸です。
コメントありがとうございました(=^▽^=)

ひっそり更新してみました。
読んでいただいて感謝です☆

励ましのお言葉、ほんとにうれしいです♪(*'-^)-☆
ぼちぼちペースの更新になっちゃいますけど。
よろしかったらまた遊びにいらしてくださいませo(_ _*)o


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