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春風到来 3



 「親父、お前、酔っぱらってるな?」
 桜並木のど真ん中で、リュウジは見知らぬ親父さんと対峙していた。
 いくら奇襲をかけられたとはいえ、そこはリュウジの鍛え方。小柄で、とうてい使い手とは思えない親父さんの拳がリュウジの膝をつかせることはなかった。
 体勢を立て直したところで、リュウジは親父さんに向かってそう言葉を放ったんだ。
 
 「だったら何だ? 酒は大人の権利だ」
 「権利だ何だってぬかす前に、人としての分別つけろや、親父!!! やっていいことと悪いことがあるだろ?」
 「……偉そうに。所詮は不良のくせに」
 「何だと~~~?」
 吐き捨てるように言った親父さんに向かって――拳を振り上げたのはオレの隣でなりゆきを見守っていたノブオだった!!
 ノブオは止める隙もなく親父さんに駆け寄って、拳を開いて平手を繰り出す――寸前に、リュウジに手首を掴まれて阻止された。
 「コラ、ノブオ!!!」
 「あ、兄貴、どうして……」
 「そんなこともわかんねえのか!!!」
 「ノブオ。無用な喧嘩をリュウジは善しとせぬ」
 「あ――」
 ダイゴのとりなしを聞いたノブオは、ゆっくりと一歩下がってリュウジに頭を下げた。
 
 「兄貴、オ、オレ――」
 ノブオが口を開きかけたのに、別の声が被さった。
 「所詮、不良のくせに」
 そうちいさく呟くと、親父さんはなぜだか突然、すすり泣きをはじめたんだ。
 「ふ、不良のくせにぃぃぃ」
 「オイ、親父? 何だよ、急に――」
 困惑したようなリュウジの胸板を弱い拳で叩く親父さんの姿は、だだをこねる子供のそれによく似てた。
 「ハヤト。酔っ払いってのは、こんな意味のわかんねえもんなのか?」
 「うん。そんなもんかもね」
 リュウジはオレに苦笑いを寄越してこう訊く。オレも似たような表情を作って返した。
 「あと10年くらいしたら、ハヤトもこんな風になるんだろうな」
 「オレ? なんでオレが?」
 「なんとなく、そんな予感がするぜ」
 「……リュウジも充分、意味わかんないって」
 
 しばらくリュウジは困った顔をしたまま、ノブオは詫び損なった申し訳なさそうな顔をしたまま、ダイゴはとりたてて表情は変えないままの時間が過ぎて。
 やっと親父さんが落ち着きを取り戻したのは、ノブオがリュウジの命を受けて買ってきた、ミネラルウォーターをいくらか飲んだときだった。
 
 「……済まなかった」
 うつむいたまま、親父さんはほんのちいさくこう口を開いた。
 「オウ!!! わかればいいんだぜ、親父。桜の花には何の罪もねえからな。ほら、謝るんだったら後を向けや。相手は桜の木だろ?」
 「ああ――」
 リュウジの言うことは正しかった。
 親父さんはリュウジに手を挙げて暴言を吐いたことを詫びたようだったけれども、リュウジには親父さんの拳骨なんて、蚊に刺されたほどのものでもなかったみたいだし。
 それに、『不良』って言われることなんて日常茶飯事だし。慣れてもいるから。
 親父さんはリュウジに逆らうことなく、さっき登ろうとしていた桜の木に向かって頭を下げている。
 「そうだ。それでいいぜ、親父!!!」
 晴れ晴れとした顔でリュウジは頷いた。うん、いい表情だ。
 
 「さあ、親父。気が済んだらそろそろ帰れな。ここ、けっこう風あるからな。風邪でもひいちまったら大変だろ?」
 「兄貴――なんて優しいお言葉」
 なんてノブオは感激しているけれども、リュウジの言葉の裏くらいは、オレにもわかる。
 不良を云々していた親父さんがまた激することになるような場所だからなんだ、ここ河川敷は。似たようなほかの集団を親父さんがまた目にしないとも限らないしね。
 
 けれども――親父さんがリュウジに返答をするより早く、一瞬の隙を突いてダイゴがこう切り出した。
 「我等のようなものが憎いと言っておられたが。何か話したい事があるのではないか?」
 なだめるような口調のダイゴの重い声が、小柄な親父さんの頭の上から降り注ぐ。
 「俺達のようなものでもよければ話を聞こう。内心に面白くない事柄があると、おそらくそれが酒によって増長されるのだろう。またこのようなことにならぬよう、少しは荷物を下ろしてもよいのではないか?」
 「ダイゴ、さすがだぜ。聞き上手もいい坊さんになる条件ってことか?」
 「押忍。何事も修行ゆえ」
 「たしかに精神的に何かを抱えてるときにお酒は、ちょっとね。オレにもわかる」
 「ん? ずいぶんと知ったようなこと言うな、ハヤト?」
 「あ――まあ、うん。あはは」
 「ハヤトさんって不良ですからね~」
 「……一言多いなあ、ノブオ」
 
 ひとしきりオレたちのやりとりを聞いていたのかそうでもないのか。
 親父さんはダイゴのほうを向いてこんな話を聞かせてくれた。
 親父さんには息子がいる。大事な跡取り息子なんだそうだ。
 息子はオレたちと同じ、高校生らしい。
 どうも彼が最近不良に心酔しているということで、それが面白くないんだそうだ。
 顔を合わせれば信じられないような冷たい視線や冷たい言葉で両親に向かうらしい。
 それ以前に、家に寄りつかなくなってしまったことこそが最大のポイントなんだとか。
 そんなことを、酒のせいで呂律のあやしくなった口調で話していた。それをダイゴは黙って受け止めている。
 
 「なるほどな。それで、か」
 ダイゴの横で聞いていたリュウジが大きく首を縦に振る。
 「うん。ちょっと耳が痛いね、リュウジ。オレたちも決して親孝行とは言えないし」
 「それはハヤトさんだけっス!!! 兄貴は親孝行っスよ~」
 「……もう、いいから、ノブオは」
 「とにかく、事情はわかったゆえ」
 ダイゴが言うと、親父さんは安心したように大きなため息をついたんだ。
 うん、オレにもわかる。ダイゴの声って、そういうときは安心できるんだよな。
 「もしも私の息子に出会うようなことがあったら、家に帰るように言ってもらえないだろうか?」
 すっかり落ち着いたのか、思いついたように親父さんはリュウジにこう切り出したんだ。
 「オウ!!! それくらいはお安い御用だぜ!!! で? 親父の息子ってのはどんな顔をしてるんだ? 俺らで見分けられるのか?」
 「この写真を――」
 ジャケットの胸ポケットから財布を出した親父さんは、それを探って1枚の写真をリュウジに託した。
 「よっしゃ、わかったぜ、親父。もし見つけたら絶対に伝えるからな!!!」
 
 それから親父さんは多少ふらついた足取りで、駅の方に向かって歩き出した。
 その背中を見送りながら見せてもらったら、リュウジが受け取ったのは息子さんがまだ小学生くらいの頃の家族写真だった。
 「ずいぶん古いね。これでわかるかな? リュウジ」
 「当然!!! 俺は会ったらわかると思うぜ。早いとこ会えるといいな、親父の息子に」
 なぜだかリュウジは自信満々だった。それに頷いているダイゴも、また。
 「は~い!! オレも大丈夫っス!! だってオレ、将来はスナイパーっスからね~」
 「ふうん。オレだったらあんまり自信ないなあ」
 「わはははは!!! ハヤトって、そういうタイプだもんな」
 笑いながらリュウジがオレの背中をばしばし叩く。うん。反論できないや、オレ。



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コメント

ノブオは将来、私の弟子かw

ちょーww久しぶりぃぃ~♪
しかも前回ここにコメントしたのちょうど1年前だよ!
何、このミラクル☆すげ~~!!
そして背番号☆壱万もすげぇぇぇ~(笑)

なにげに華丸さんも「はるさめぱんつw」時代だね(笑)あはー

いや~久々にリュウジだちが私の心に帰ってきたよ♪キュン
さすがに鬼浜も近所にはももう・・ない・・かも・・なぁ・・
打たなくてごめん。ハヤトごめん。めんご。

>ピノコさま

ども~(*^ー^)ノ

いやあ、ほんと久し振りw
ピノコさんとは久し振りじゃないけど、なんかご無沙汰してましたf(^ー^;

ちょうど1年ミラクル☆おめでっす(`・ω・´)ゞ
背番号☆壱万……なつかしいね^^
はるさめぱんつwも――泣きそうになつかしいわ。だはは。
あの時代に、もっとすんなり「華丸」に戻れてたら、ここちゃんと続行してたかも。

そっちのほう、もう鬼浜ないの?
うちのほう、けっこうある。出戻り台が。
いまだに「キュン」ですから~!!! 

えっと、それから。
ノブオのターゲットは、天井じゃないかもしんない(*^▽^*)ェ

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