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トラブルメーカー女史 8

 コウヘイたちの単車が見えなくなってから、ようやくリュウジが腑抜けたように言った。

 「亜由姉ちゃん、なんでコウヘイにあんなこと……。俺もう生きた心地がしなかったぜ」
 「ほんとだよ、オレ、亜由姉さんに何かあったら伯父さんに何て言えばよかったわけ?」
 「ふふふ、まあいいじゃないの。何もなかったんだし」
 「コウヘイに絡んで、何もなかったほうが不思議だぜ」
 「うん、リュウジの言うとおり」
 
 「まったく亜由姉ちゃんときたら、どういう神経してるんだ?」
 「あんたに言われたかないわよ、リュウジ」
 あっけらかんとしている亜由姉さんは、不思議な女性だと今さらながら強く思った。

 「つーか、亜由ねえさんに武術の心得があったなんて、オレ知らなかったよ」
 「ああ、ハヤトも信じた? あれね、はったり。だってあたし、運動神経ぜんぜんないもん」
 と、亜由姉さんは笑う。
 「なんだって?」
 「あはは、そんなおっかない顔しないの、リュウジは。だってさ、時には必要でしょ? 虚勢張ったりするのもテクニックよ。ある意味かけひきってやつかな?」
 オレとリュウジは……顔を見合わせて力無く笑ってみた。オレたちも完敗である。

 「でも、亜由姉ちゃんすげえな。あのコウヘイに負けを認めさす女の人がいるなんて、俺は信じられねえよ。なあ、ハヤト?」
 「ああ。しかもオレの身内にいるなんて、考えてもみなかった」
 「そう? でもさ、わたしから見たらあの子、ほんのだだっ子みたいなもんよ? ちゃんと諭してやればいいのよ」
 ふわりと笑って言う亜由姉さんに、オレもリュウジも今後一切アタマが上がらなくなるきっかけとなる道標と、今夜はなったのだ。

 そしてオレたちは、何事もなかったかのような顔をして、鬼浜町へと凱旋していった。
 さっきより格段に交通量が減ったので、帰りの国道はめちゃめちゃ走りやすくて楽しかった。
 単車のリアに乗ってカッ飛ぶことを満喫しにきたという亜由姉さんの当初の目的は、この時間をもってようやく成し遂げられたのだった。

 亜由姉さんの思いつきから走りに来て、これまた亜由姉さんの気まぐれからコウヘイとハンゾウに出くわし、オレはハンゾウに勝負を挑まれて、リュウジはコウヘイに因縁つけられ、それでもってなぜか亜由姉さんがコウヘイに勝利して──
 まったく、妙な展開だったなあ、今夜は。

 鬼浜駅に到着したのは、そろそろ23時も目の前という頃だった。
 駅前に単車を停めて、オレたちは別れの挨拶がてら、次の電車までの10分ほどをしゃべりながら潰すことにした。

 「なあ、亜由姉ちゃん。俺ずっと考えてたんだが」
 「何? リュウジ」
 「姉ちゃんさ、きっと将来は肝っ玉母ちゃんだよな」
 あまりのリュウジの想像に、オレはつい吹き出してしまう。
 「ハヤト、笑うなよ。あ、亜由姉ちゃんまで!!!」
 「わはははは、でもそういうのも悪くないかもね。サンキュ、リュウジ」
 亜由姉さんがうれしそうで、オレは満足だ。

 「ところでさ、コウヘイだっけ? 彼」
 「うん?」
 「彼、やっぱりいい体してたわ。思ったとおり」
 「え──?」
 オレとリュウジは、含み笑いの亜由姉さんに言葉の真意を聞き返す。

 「さっき、一瞬組んでみたじゃない? あれでわかったよ。彼、リュウジに負けないくらいの見事な筋肉だったわ」
 「亜由姉ちゃんって、一体……」
 リュウジは口をぱくぱくしながらオレを見る。オレは、ただ肩をすくめて見せた。
 「でも、大丈夫! リュウジのほうが胸板厚いと思うよ。負けてない、負けてない」
 「ええと、そういう意味じゃ……」
 もはやリュウジもたじたじである。

 嗚呼、やっぱり亜由姉さんはスゴイ女性だ。
 暗黒一家の総帥も、鬼浜爆走愚連隊の総隊長も、ふたりとも彼女の手のひらで転がされているように見えるなあ。
 
 「あ、そろそろ時間だね、亜由姉さん」
 ロータリーの時計を見て、オレが告げる。
 「あら、そう? じゃあ行こうかな」
 「おう、気をつけてな」
 「うん。それじゃね。リュウジもハヤトも、ほんとにありがと。昨日も今日も助かったよ」
 言って、亜由姉さんはオレとリュウジにかわるがわる右手を差し出した。握手、だって。

 「いい仕事できそう?」
 「おかげさまでね」
 にこりと笑った笑顔は、オレたちよりだいぶ年上のはずの亜由姉さんを幼く見せた。

 改札を通る亜由姉さんに、手を振って見送るリュウジとオレ。
 最後にこう言ってから、亜由姉さんはホームへの階段を上がっていった。
 「あたしは転んでもただじゃ起きない女。あんたたちも見習っていいわよ?」

 「なんか、昨日と今日は俺、だいぶ勉強させられたなあ、亜由姉ちゃんに」
 いつもの調子が狂わされっぱなしのリュウジだった。言葉尻に幾分ため息が添付されていた。
 「そうだね。やっぱり大人の女性って包容力が違うのかもね」
 「って、ハヤト、包容力とか、アレはそういうもんか? 大人の女の人って、みんなあんな感じか? 違うんじゃねえの?」
 「あ、違う──か。わはは」

 どうもオレも調子狂わされたかな、と思ったけれど、リュウジいわく。
 「ほんとにハヤトはいっつもどこか視点がずれてるんだよなあ」
 ──どうせオレはいつもとぼけてばかりいますよ。

 「さて、ハヤト。まだ時間あるか?」
 「ん? ああ、まだ夜はこれから、ってこと?」
 「当たり前!!!」
 「じゃあ行こうか。もうひとっ走り」
 
 オレはひとつ大きく伸びをしてから、リュウジと同時に単車のエンジンをスタートさせた。
 鬼浜町の夏の夜は、まだまだ長い。

テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

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コメント

強い女性って

素敵ですよね♪かわいい女より憧れるかも。
あ、どっちでもいいかな・・両方とも私にはないから・・
でも「包容力」とは違うと思うぞ、ハヤト!(笑)

華丸さんのお話を読んでると
彼らがすっごくイイ子に感じるんですよね。
そのせいか久々に鬼浜打ったら、まぁ画面上の彼らの
人相の悪いこと(笑)コウヘイはやっぱ卑怯モンだし。
そのギャップにおかしくなってしまいました。

悪餓鬼こそカワイイかも

>>ピノコさま
どんなに人相風体が悪くても、なんかカワイイです、彼ら。
実際町でああいう子たちに遭ったらヒくかもしれませんけど。だはは。

コウヘイは卑怯モンかもしれませんけど、ピノコさまが強くてかわいい女性として諭してやってくださいませ。

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