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未だ熱りの冷めない拳 2-2



 目を開けたら、見慣れた天井があった。
 ああ、ここはオレの部屋でオレのふとんの中なんだな、という理解。
 額に違和感を覚えて手をやると、濡らしたタオルが置かれていた。
 ふとんの中でもぞもぞしていたら、いつもより抑えめの声がかかる。
 「お。気がついたか? ハヤト」
 「ああ――リュウジ」
 珍しく声のトーンを低くしたリュウジがオレの顔をのぞき込んでいた。
 「えっと……オレ?」
 「まったく、結局は心配させるんだよな、ハヤトって」
 「え――」
 「病気だってのに無理するからいけねえんだぞ?」
 「いや、病気っていうか……ぶっちゃけ、仮病だったし」
 「だから、強がるのもいい加減にしろって言ってるんだ。もっとも、俺がもうちょっと早く気づいてやらなきゃいけなかったんだろうけどな」
 「……?」

 リュウジが言うにはこうだった。
 コンビニに行った帰り道、オレは倒れたんだそうだ。
 熱があったらしい。っていうか、たぶん今もそれは継続中のようだ。
 突然倒れたオレを背中に担いで、リュウジはここまで運んでくれたんだと言う。
 「あ、それでか。絶叫マシンに乗ってるような感覚だったのは」
 「うん? 絶叫マシン?」
 「そう。リュウジ、オレを担いで全力疾走とか、したんじゃない?」
 「オウ。それなりに、急いでたからな。慌ててたしよ」
 「そっか」

 「でな。親父さんがハヤトの様子見て『ああ、やっぱりこういうことか』って言ったぜ」
 「親父が? やっぱりって、何だろ、それ」
 「おとといからのハヤトの調子を見てたら、こうなる前兆かもしれねえと思ってたらしい。中学のころはやけにたくさん食ったり、やけに苛ついたり、それと喧嘩して帰ってきたあとって、ハヤトは必ず熱を出してた、ってな」
 「オレ――? そんなこと……ああ」
 「なんだ。心当たりあるんだな?」
 「うん。無くもない。すっかり忘れてたけど」
 そうだ。オレの記憶の中の『喧嘩っ早い中学時代のオレ』って、喧嘩に勝ったとしても決まって寝込んでいたような気がする。
 ……いまさら大事なことを思い出しているオレって、とぼけた奴だからしょうがないか。
 
 「っていうか、わかってるんだったら忠告してくれたらいいのにな、親父も」
 「……いや。親父さんはハヤトに自覚がなかったのかってため息ついてたぜ」
 「あ。そうなんだ」
 苦し紛れに笑い飛ばそうとしたけれど、息苦しかったからできなかった。

 それからリュウジは立ち上がって階段を下りていった。
 多分、親父にオレが目を覚ましたって言いに行ってくれたんだろう。
 部屋に戻ってきたときには、スポーツドリンクを持っていて。ストローを挿してオレに飲ませてくれたんだ。
 喉を潤して満足して。それではたと思い当たった。
 「そういえば、テツたちは?」
 「今日は単車のメンテが上がったとこで引き上げた。また改めて来るって言ってたぜ」
 「そっか。挨拶もできなくて悪いことしたな」
 「まあ、いいんじゃねえの? 仲間なんだし。そのへんはわかってるだろ」
 「そっか。うん。そうだよね」
 オレが言うのに、リュウジは笑みを返してくれた。
 
 なんだか静かな時間がオレの部屋にたゆたっている。
 それは案外、心地よくて。
 だからオレは素直に言いたい気分になっていた。
 「リュウジ。ありがとう」
 「なんだよ、ハヤト、突然。調子狂うぜ――って、ああ、そうか、熱のせいか」
 納得したように、独り言みたいにリュウジは呟いて、もう一度オレの口許にストローを差し出してくれた。
 「まったく、困った病人だぜ。そんなときほど大人しくしていられねえなんてな」
 「あはは。悪い悪い」
 「ハヤトの生態は理解したぜ。だから今日はちゃんとゆっくり寝ろな?」
 「うん、了解」
 オレが答えると、リュウジは部屋の電気を豆電球に変えてくれた。
 
 その晩は、とんでもなくよく眠ったらしい。
 目が覚めてはリュウジが枕元に置いてくれていたスポーツドリンクに手を伸ばして。
 汗をかいたからシャツを着替えて、また眠って。
 おかげですっきりと体を起こせた翌日の昼には、体温は平熱に近かったと思う。
 とりあえず、ほんとに熱が下がっていたらシャワーを浴びたいな、なんて考えた矢先。
 階下に気合いの入った声が響いたのを聞いた。
 「オウ、親父さん!!! ハヤトはどうしてる? 俺、今日はちゃんと探してきたんだぜ!!! これ、ハヤトに食わしてやってくれな。今日のは缶詰じゃねえんだぜ」

 今日の夕飯のデザートはきっと桃。
 たぶんリュウジが探してきてくれた、缶詰じゃなくて本物の生の桃。
 きっととんでもなくおいしいんだろうな。甘くてみずみずしいんだろうな。
 病気するのもたまには悪くないかも――なんて一瞬考えたのは、リュウジには内緒の方向でお願いします。


   * 未だ熱りの冷めない拳  完 *




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【鬼浜魂疾走編 登場人物紹介】

☆ハヤト:このおはなしの語り手
鬼浜爆走愚連隊・特攻隊長
単車勝負が得意 実家はバイク店
一般評=クールなモテキャラ リュウジ評=とぼけた奴 趣味は昼寝

☆リュウジ
鬼浜爆走愚連隊・初代総隊長
喧嘩も単車も最強 実家はラーメン店「昇龍軒」
人情派で人望篤い 女子にめっぽう弱い 実は寂しがり屋の一面も

☆ダイゴ
鬼浜爆走愚連隊・親衛隊長
喧嘩勝負が得意 実家は鬼浜寺
寡黙で頼りになる存在 柔道の使い手 精神世界にも精通

☆ノブオ
鬼浜爆走愚連隊・若手
喧嘩も単車も修行中
総隊長リュウジを誰よりも慕う 打たれ強さは比類なし

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★コウヘイ:暗黒一家・初代総帥
★ハンゾウ:暗黒一家・特攻隊長
★ゴンタ :暗黒一家・親衛隊長
★タカシ :暗黒一家・若手

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◇テツ
美山瀬烈風隊・特攻隊長
海辺の鬼浜町から40kmの距離を地元とする隊の一員
隊での立場が似ているため、ハヤトとは気の合う仲間

◇タケル
美山瀬烈風隊・隊長

 テツとタケルの登場するおはなし
 → 湖畔に吹く烈風 ←
 → 烈風、南へ ←
 → 贈り物を心より ←

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コメント

(´∀`)ナオッタ?

どもども!こんにちは☆

ううん、何だかハヤトって子供みたいですねw
遠足の前の日、わくわくして眠れない類と似たような…
アレ?違う…?
でも、そんなハヤトも萌えー☆

病気の時は、周りの人がえらく優しく思えるような気がするんですよね。
だから、病気するのもたまには良いなとか思っちゃったり(笑)

>鬼ムチコさま

ども~(*^ー^)ノ

ハヤトは、特殊な体質ですなw
なんかもう、体調の異変がおかしな作用をもたらすっぽいf(^ー^;

たしかに。
子供みたいって言えばそうですね~。
眠いとぐずる、みたいな。
……これは赤ちゃんかw

なんだかんだ、本人すら気づいていなかったけれども
リュウジだけが「ハヤト=病気」って思ってたのが正解だったわけで。
ある意味、リュウジはハヤトを理解してやれてるようですわ~^^

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