目次

過去の記事をまとめて表示できるようにしてみました。 【 】がついている項目をクリックすると、それぞれのタイトルの記事を一括でお読みいただけます。 【 】内の数字が若い順に古い記事となっております。 【 】内の冒頭数字が同じものはそれぞれ対になるおはなしです。

これまでのおはなし

全タイトルを表示

御来訪感謝

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

麗しき白薔薇の素顔 9-3



 手みやげのケーキの箱を大事そうに抱えた白鳥先生を連れて、やっとのことであおいさんの花屋に着いた。
 中をのぞいたら、リュウジがオレたちより先に来ていた。
 オレたちの姿に気づいたあおいさんが手招きしてくれたのに従って、3人で店内に入る。
 出迎えてくれるのはいつもと同じあおいさんのアニメみたいなかわいらしい声。
 「いらっしゃいませ、こんにちわ」
 「オウ、なんだ。遅いじゃねえか?」
 続けて言ったリュウジは、丸いスツールに腰かけてあおいさんと向き合っていた。
 「お待たせ――って、リュウジ?」
 あおいさんの手には消毒液と絆創膏、リュウジの顔には眉間の縦皺とあごに擦過傷。
 「やっぱり、か」
 「わはははは!!! かすり傷だぜ……っ、それ、滲みるってのに、あおい姉ちゃん!!!」
 「しかたないでしょう? リュウジくんがいくつになってもやんちゃ小僧なんだから」
 「やんちゃ小僧……って。あおい姉ちゃん」
 「そうじゃない。あなた、わたしよりも背の低いころから、全然変わっていないんだもん。やってることが」
 「……言ってくれるぜ」
 それ以上言い返すことができないリュウジの顔が、やたらと子供じみていたような。
 
 ああ、なるほど。
 ほんとにここ、鬼浜町商店街そのものがリュウジの『家』みたいなもんなんだね。
 それで、商店街の人たちは、きっとみんなリュウジの『親戚』なんだろうな、気分的に。
 あおいさんの手慣れた感じを見るに、たぶんリュウジが小学生のころから、絆創膏貼ってやってたんだろうな、なんて。

 「リュウジ君、先ほどの連中とやり合ったのか?」
 「オウ。まあな、ほんの軽い挨拶程度だぜ」
 「商店街で騒ぎを起こすな、と言っていなかったか?」
 「ああ、あれな。そりゃそうだぜ。俺んち同然の場所で『よそ者同士』に勝手に喧嘩なんかされたら、俺の沽券に関わるって話だぜ。だから何か騒ぎが起きるようなときには俺が立つのが筋だろ? なあ、ハヤト?」
 うんうん。リュウジらしいや。オレは大きく首を縦に振る。
 続けてリュウジは、白鳥先生を真っ正面から見つめてこう言った。
 「だからな、白鳥先生。ここで喧嘩したかったらな、鬼浜町商店街の人間になったらいいんだぜ!!!」
 「ここの――人間に? 私が?」
 「オウ!!! 今はほら、遠いとこに住んでるって話だけどよ。来年大学卒業したら、またこっち戻って来いや。でもって、春から鬼工で本物の先生になれたら、俺がここの人間だって認めてやるぜ。な、あおい姉ちゃん?」
 「あら、それはいいわね。白鳥さんはリュウジくんと違って、お花の似合う美青年だもの。わたしも大歓迎だわ」
 「俺と違って、って。あおい姉ちゃん、俺、そんなに美しくねえのか?」
 頬をほころばせるあおいさんに、リュウジはちょっとすねたような顔をして笑って。
 オレと千晶ちゃんはリュウジの顔を見て笑って。
 そして――白鳥先生はただ、うっとりと目を閉じていた。
 
 ひとしきり陶酔したあとに、白鳥先生は思い出したようにケーキの箱を差し出した。
 「それより、あ――あおいさん。これ、お口に合うと、か……感激です」
 「あら、白鳥さん。わざわざどうもありがとうございます。ここの、おいしいですよね」
 「あ、よかった~。ケーキ、お好きですか?」
 「ええ。とっても好きよ。ええと……あなたは?」
 「リュウジとハヤトの悪友です。千晶って言いま~す」
 「あら、そうなの。ずいぶんかわいらしいお友達がいるのね」
 「えへ。ありがとうございます」
 千晶ちゃんは照れたように笑う。店内を飾る花にも埋もれないようなスマイルだった。

 それから、あおいさんと千晶ちゃんがにこやかに話したりしているのをオレたちは見ている。白鳥先生は相変わらずうっとりした表情を崩さないでいるのがおかしい。
 さすがに女の人だけあって、あおいさんは千晶ちゃんの本当の性別を最初から勘違いしたりはしなかったみたい。
 まあね。千晶ちゃんも学ラン着てるからね。いまだに女子だって信じてるのはコウヘイたちくらいのものなのかも知れないけれど。
 
 「っていうか、ここ、居心地よさそうですよね、鬼浜町商店街。あたしもここの人になっちゃおうかな~」
 思いついたように千晶ちゃんが言った。それを聞いたオレはこう言ってみた。
 「いや、千晶ちゃん。それはまずいんじゃない? 誰かが千晶ちゃんとここを歩いてるだけでコウヘイに因縁つけられちゃうかもしれないし」
 「うん? ハヤト、どういう意味だ、それは? なんでコウヘイが出てくるんだ?」
 「え。あ、わかんない人はいいんだけどね。でも、そうすると、当のわかんない人だけが忙しい思いをするかもしれない、なんて思ったりして」
 「あ、言えてる~。そのたびに出動させたら、リュウジに悪いか」
 「って、オイ、千晶ちゃんまで!!! どういう意味なんだって聞いてるんだぜ?」
 リュウジを除いたみんなで笑いあう。察している白鳥先生も、雰囲気で理解しているっぽいあおいさんも一緒に。
 「ちきしょう。鬼浜町商店街は俺んち同然なのに、俺だけ置いてかれてる気分だぜ」
 リュウジはおもしろくなさそうだけど。

 笑いながらオレも思っていた。
 オレんちの店も、駅の向こうからこっちに引っ越してきたらもっと楽しいかもしれないのにな、って。



   *  麗しき白薔薇の素顔 完  *




にほんブログ村 スロットブログへ

===============================

【鬼浜魂疾走編 登場人物紹介】

☆ハヤト:このおはなしの語り手
鬼浜爆走愚連隊・特攻隊長
単車勝負が得意 実家はバイク店「魔速商会」
一般評=クールなモテキャラ リュウジ評=とぼけた奴 趣味は昼寝

☆リュウジ
鬼浜爆走愚連隊・初代総隊長
喧嘩も単車も最強 実家はラーメン店「昇龍軒」
人情派で人望篤い 女子にめっぽう弱い 実は寂しがり屋の一面も

☆ダイゴ
鬼浜爆走愚連隊・親衛隊長
喧嘩勝負が得意 実家は鬼浜寺
寡黙で頼りになる存在 柔道の使い手 精神世界にも精通

☆ノブオ
鬼浜爆走愚連隊・若手
喧嘩も単車も修行中
総隊長リュウジを誰よりも慕う 打たれ強さは比類なし

===============================

★コウヘイ:暗黒一家・初代総帥
★ハンゾウ:暗黒一家・特攻隊長
★ゴンタ :暗黒一家・親衛隊長
★タカシ :暗黒一家・若手

===============================

◇千晶ちゃん
ハヤトとリュウジの同級生
本当の性別は男子ながらも、見た目も心も乙女な鬼工のアイドル
コウヘイは千晶ちゃんを女子と信じ続けており、恋している模様

 《千晶ちゃん初登場》
  → 本編/叢中に咲く一点の紅い花 ←
  → 承前/アイドルの放課後 ←
 《ハヤトが千晶ちゃんをサポートをする件》
  → 本編/歌と和弦の日々 ←
  → 承前/不器用な特攻隊長 ←
 《コウヘイが千晶ちゃんを想う件》
  → 本編/贈り物を心より ←
  → 承前/特別な日ではなく ←

===============================

<< 花冠の若君 1-1 | ホーム | 麗しき白薔薇の素顔 9-2 >>


コメント

( ^∀^)ノ コンチャ♪

>「いや、千晶ちゃん。それはまずいんじゃない?
 誰かが千晶ちゃんとここを歩いてるだけで
 コウヘイに因縁つけられちゃうかもしれないし」

分かっていないのは、リュウジだけなんですね…!
だって、コウヘイは千晶ちゃんに恋してるから…!( *´艸`)プププ…!!
最後の最後まで、良い味出してます。リュウジは(笑)

今の時代、商店街ってガラーンとしてますよね…。
それに比べ、鬼浜商店街は賑やかで暖かいし。
ここで育ったリュウジは、幸せものなんだなーって…
ふと思っちゃいました。(^^;)ゞ

>鬼ムチコさま

ども~(*^ー^)ノ

リュウジ、肝心なところで鈍いんですわw
そんなリュウジがカワイイわけです。だはは。
でもって、コウヘイも「リュウジ以外にはバレバレ」だとは
感づいていない模様なわけで……。
それはそれで想像するとウケるw

……どんどんこうして妄想がふくらむらしい(〃∇〃)

鬼浜町商店街は、古き良き時代の商店街、っていう感覚ですね^^
駅ビルとか、ないですもん。鬼浜駅の前には。
実際は、なかなかこういう活気のあるとこってそんなには
残ってないのかも、ですね~。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 BLOG TOP 


  1. 無料アクセス解析
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。