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花冠の若君 2-1

 
 
 白鳥先生の誘いを受けて、花屋のあおいさんは満面の笑みを浮かべてた。
 「ええ、喜んで参加させてもらいますね」
 「感激です。あおいさんがいらしてくれるだけで、殺風景な河川敷も花園になります」
 「あは、そんなそんな」
 「偽りのない、私の本心です」
 白鳥先生がここへ通い詰めてもう10日近く。
 やっとあおいさんの前で自分らしい言葉を話せるようになったんだな、白鳥先生。
 
 「よかったな、リュウジ」
 「ああ。俺も心からうれしいって思ったぜ」
 ふたりの邪魔にならないように、ちょっと離れた入り口近くでリュウジと話す。
 「なんかいい雰囲気だよね、先生とあおいさん」
 「本当だぜ。白鳥先生、ちゃんと電話番号ぐらい訊けるといいんだけどな……」
 「あ、そうか。また遠く離れちゃうんだ。そう考えるとちょっとせつないな」
 「でもな。電車で2時間だって言ってたから、たまには帰ってくるんじゃねえ?」
 「あ、そんなもんなんだ。じゃあ……」
 その気だったらいつでも帰って来られるね、ってオレが言おうとしたときだった。
 
 オレたちの背後の自動ドアが開いて、ひとりの男の人が店に入ってきた。
 ダイゴをちょっとだけ小さくしたようながっちりした体型のその人は、入ってくるなりあおいさんを目に止めて、深々とお辞儀をする。
 「あおい様、ただいま帰還いたしました」
 「え――あ、俊也、久し振りじゃない」
 「って、オウ、トシ兄じゃねえか」
 「うん? お、昇龍軒のリュウジか。背、でっかくなったな?」
 「まあな。それなりに成長してるぜ」
 リュウジも顔見知りの人らしい。誰、と目顔でリュウジに問うと、商店街の魚屋の息子さんだと返ってくる。
 なるほど。リュウジの精神的『親戚』の一員ってことか。

 「何、どうしたの? 里帰り?」
 あおいさんは魚屋の息子の俊也さんに軽く声をかける。対する俊也さんは――なぜかしら緊張している感じ。
 「はい。と言いますか、来週から母校に教育実習で世話になりますので」
 「あら、奇遇。俊也も教育実習なのね。入れかわり、ですね。白鳥さん?」
 突然話を振られた白鳥先生は――奇妙な顔をして、俊也さんを見ていたようだった。

 「失礼だが、そちらは、暗黒水産の――?」
 「その通り。僕は暗黒水産の出身だが、そちらは?」
 「私は――過去に人知れずあなたを敵視していた者だ」
 「敵視、と?」
 ここ2週間ではじめて見る白鳥先生の鬼気迫る表情があった。
 商店街の路地でコウヘイとやりあう寸前だったときよりも、もっと――言うなれば青白い炎みたいなオーラが白鳥先生の背中から出ているっていうような。

 「その通り。私は鬼工OBの白鳥という者。鬼工現役時代にここで、そちらと……あおいさんの仲睦まじい雰囲気を見るにつけ、私は――いたたまれずにいたのだ」
 ああ、そういうことだったのか。オレはリュウジと視線を交わす。
 この間コウヘイの着ている暗黒水産の制服が気に障るようなことを言っていた白鳥先生のトラウマはここにあったのか。
 
 なるほど、なんてオレとリュウジは思っていたんだけど。
 期せずして当時の想いを口にすることになってしまった白鳥先生はそのあとまごついている。まあ、当時と何ら変わらぬ想いでいることを知っているオレたちには無理もないと思えるけど。
 そして、あとふたり――あおいさんと、暗黒水産OBの俊也さんは一瞬顔を見合わせて。
 そのあと、どちらからともなく、くすくす笑いがこぼれ落ちた。
 「オイ、あおい姉ちゃん。トシ兄も。そんな笑うことじゃねえだろ? 白鳥先生、本気だったんだぜ? なあ、ハヤト」
 「うん。っていうか、過去形でもないしね」
 なんて言ったら、白鳥先生は我を取り戻したように前髪を掻き上げながらこう言った。
 「……いいのだよ、リュウジ君。ハヤト君も。私はどうやらいい気になりすぎていたようだね」
 もはや取り繕うこともしようとせずに、白鳥先生はそう言った。
 言うだけ言って満足したように――オレたちのいる入り口付近に身を移す。
 立ち去る気だな、とリュウジもオレも瞬時に察する。

 「では、おふたりとも。引き続き仲睦まじくなさってください。私はこのあたりで――アディオス」
 「おい、ちょっと待てや!!! 白鳥先生!!!」
 「ふふふ、リュウジ君。男は去り際が大事なのだ。美しいまま散るのもまた一興」
 白鳥先生は前髪を掻き上げながら言って、そして店から出て行こうとする。それを引き留めるのは――おそらく白鳥先生が世界で一番美しいと思っている声だった。
 「待ってください、白鳥さん。それって誤解です。俊也――この人は、わたしの子分みたいなものなんです」
 自動ドアの向こうに去っていく白鳥先生をあおいさんのアニメ声が追い縋るのを聞く。




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【鬼浜魂疾走編 登場人物紹介】

☆ハヤト:このおはなしの語り手
鬼浜爆走愚連隊・特攻隊長
単車勝負が得意 実家はバイク店「魔速商会」
一般評=クールなモテキャラ リュウジ評=とぼけた奴 趣味は昼寝

☆リュウジ
鬼浜爆走愚連隊・初代総隊長
喧嘩も単車も最強 実家はラーメン店「昇龍軒」
人情派で人望篤い 女子にめっぽう弱い 実は寂しがり屋の一面も

☆ダイゴ
鬼浜爆走愚連隊・親衛隊長
喧嘩勝負が得意 実家は鬼浜寺
寡黙で頼りになる存在 柔道の使い手 精神世界にも精通

☆ノブオ
鬼浜爆走愚連隊・若手
喧嘩も単車も修行中
総隊長リュウジを誰よりも慕う 打たれ強さは比類なし

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★コウヘイ:暗黒一家・初代総帥
★ハンゾウ:暗黒一家・特攻隊長
★ゴンタ :暗黒一家・親衛隊長
★タカシ :暗黒一家・若手

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コメント

( ・∀・)ノ コンチャ♪

なるほど。
白鳥先生が、暗黒水産が気に障る理由はこれだったんですね。
昔、仲が良さそうにしていた二人ってあおいさんと俊也さんだったんだ…!Σ(゜Д゜)

それにしても…
あおいさん、俊也さんを「子分」みたいなって…^^;
せめて、友人にしてあげて…!

>鬼ムチコさま

ども~(*^ー^)ノ

白鳥先生。
どんな高校生だったんでしょうね~^^
きっと電柱の影から見てたんだろうなあ。あおいさんたちのことw

あおいさんと俊也さんの関係は……
まあ、アレです。だはは。
見た目によらず、の女子キャラってわりと書くの好きかも♪
だって、ここんちの男子どもは、見たまんまだから(*´Д`)=з

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