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花冠の若君 2-2



 「うん? 子分って何だ?」
 置いて行かれた格好のリュウジは俊也さんに問いかけた。
 「リュウジ。お前、覚えていないのか? 学生時代のあおい様のことを。この界隈であおい様に頭の上がる者はいなかった、というのを」
 「いや、とくに覚えてねえけどな。その頃の俺はあおい姉ちゃんに、こさえた傷を消毒してもらった記憶くらいしかねえぜ。で、絆創膏貼ってもらいながら、喧嘩指南を受けて」
 「え? リュウジ、あおいさんに喧嘩を教えてもらってた?」
 「――あ、そうだな。話してて思い出したぜ、ハヤト。そうだった、あおい姉ちゃん、いろいろ教えてくれたんだよな。今にして思えば、なんでそんなこと、って……」
 体躯のたくましい俊也さんは、太い首を大きく縦に振ったんだ。
 「なんだ。覚えているんじゃないか、リュウジ」
 「オウ。今まですっかり忘れてたけどな」

 どこか懐かしさを漂わせた目で、俊也さんはこう続けた。
 「あおい様は空手の達人でな、ここら界隈では誰よりも強かったんだぞ? すばしこくて、賢くて。立ち回りの鋭さは天下一だったんだ。だから俺たち同年代の者はあおい様には一目置いていて、それで俺は家が近いのもあって、あおい様の護衛――というと聞こえはいいが、平たく言えばパシリ役を務めていたというわけだ」
 「それでいつもあおいさんと一緒にいた、ってことですか?」
 思わずオレも訊いてみたくなる。
 「その通りだ。あおい様と行動を共にすることは何かと勉強になったし、なによりあおい様に用事を言いつけられるのは、俺の誇りでもあったな」
 「へえ。そうだったのか。俺、ぜんぜん知らなかったぜ」
 「そうかも知れないがな。ちょっと見には、あおい様は小柄でにこやかだから」

 ガラス張りの店内から外をみると、商店街のど真ん中で言葉を交わし合う白鳥先生とあおいさんの姿があった。
 ……確かに小柄で、にこやかなあおいさん。小さなひまわりみたいなあおいさんが最強だっていうのは信じられないけれど。
 まあ、人は見かけによらないっていうのは、白鳥先生を見ていて理解していたから多少は慣れていたからね。オレもリュウジも。
 
 そのまましばらく白鳥先生とあおいさんを見ていたら、どうやら白鳥先生の長年の誤解が解けたらしいことがわかった。
 会話の内容はまったく聞こえないけれど、白鳥先生の表情には――いつも以上の、作り物とは到底思えない笑顔が見て取れたから。
 「なあ、トシ兄。あらためて訊くけどな」
 「何だ? リュウジ」
 「トシ兄は、あおい姉ちゃんと付き合ってたんじゃねえんだよな?」
 「当然だ。そんな畏れ多いことを出来るほどの肝は持っておらんのでな、俺は」
 俊也さんは、筋肉質な体つきを縮める勢いで否定してた。

 「でもって、トシ兄。あおい姉ちゃんって、今、恋人いるかどうか知ってるか?」
 「俺が、か? 知る由もないな。実際にお会いするのは久し振りだし」
 「あれ? リュウジ、こないだ白鳥先生に、あおいさんに今は恋人いないって言ってなかったっけ?」
 「ああ――あれか。あれはな、ハヤト。確信があったわけじゃねえんだよな」
 ちょっと悪戯っぽくリュウジは笑って頭を掻いた。
 「だってよ。あのままじゃ、白鳥先生が浮かばれねえような気がしてな」
 ああ、そうか。逃げ腰だった白鳥先生を前に進ませようとしていた、ってことか。リュウジらしいとは思うけど。
 「だがな、リュウジ。もしかすると、あちらさんといい雰囲気なのかも知れんな。俺はあおい様のあんな表情は見たことがない」
 俊也さんが指で示したほうを見ると、まだ白鳥先生と何か言葉を交わしているあおいさんの照れたような笑顔があった。
 もしかしたら白鳥先生は、彼らしい台詞をあおいさんに投げかけたのかもしれない。
 彼らしい――麗しくて艶やかで、女の人が喜ぶような言葉を。

 日曜の昼前の鬼川は、梅雨の晴れ間の好天できらきらと輝いている。
 今日はリュウジ企画の、白鳥先生送別会。いつもの河川敷にクラスのほとんどの奴らが集まって、バーベキューの準備にかかっているところ。
 話が広まったのか、他のクラスの奴とか、あと他学年の女子生徒なんかも来てる。
 これはリュウジが呼んだんだけど、当然ダイゴとノブオもいて。もちろん赤ジャージもいて。
 「そしたらお前ら、白鳥先生が来る時間まであとちょっとだからな!!! ちょうどいい頃合いで焼けるように見計らっとけな!!!」
 「お~う!! 任せとけ、リュウジ」
 「あ、オレもOKっス、兄貴ぃ」
 「オウ、頼んだぜ、みんな!!!」
 「押忍。合点承知」
 
 みんな自主的に気合い入れて準備作業をこなしている。連帯感あっていい感じ。
 オレも鉄板を設置するのを手伝ったりとか、千晶ちゃんに頼まれてタマネギを切ったりとか――目に滲みるんだよね、タマネギ。
 「あは、ハヤト。大丈夫?」
 「うん。さすがに滲みる。涙が出るね」
 潤んだ目をこすりつつ振り返ってみると、河川敷の土手に座り込んで、あおいさんが一生懸命に手を動かしているのが見えた。

 あおいさん、来てたんだ――なんて思ってそばにいたリュウジに話しかけてみる。
 「リュウジ。あおいさん、あそこで何をしてるんだろ?」 
 オレの指の向くほうを見て、リュウジはかすかに笑って答えた。
 「ああ、あれな。あおい姉ちゃん、きっと冠を編んでるんだな」
 「冠――?」
 「土手に咲いてる白い花、あるだろ? 四つ葉が縁起いいっていう、ええと……」
 「ああ、シロツメクサ?」
 「そんな名前だったっけか。でな、あおい姉ちゃん、それ編むの巧いんだよな。俺も子供のころに教わったことがあるな。もう覚えてねえけど」
 昔を懐かしむ表情でリュウジはあおいさんを眺めている。
 「へえ。シロツメクサの花冠か」
 そうと聞くと納得だ。白い花と緑の葉っぱ、2色のコントラストが丸く編まれていくのを遠目に見る。
 「なあ、ハヤト。あれ、白鳥先生に似合うと思わねえ?」
 「そうだね。オレもそう思ってた。王子様には冠はつきものだから」
 「わはは、王子様か!!! 確かにな。白鳥先生って、そんな感じかもしれねえもんな」

 そろそろ白鳥先生が到着してもいい時間。オレは白鳥先生があおいさんの手製の花冠をつけているところを想像して思わず顔がほころんだ。
 うん、きっと今のリュウジと似たような顔をしてるんだろうな、オレ。


   * 花冠の若君 完 *




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【鬼浜魂疾走編 登場人物紹介】

☆ハヤト:このおはなしの語り手
鬼浜爆走愚連隊・特攻隊長
単車勝負が得意 実家はバイク店「魔速商会」
一般評=クールなモテキャラ リュウジ評=とぼけた奴 趣味は昼寝

☆リュウジ
鬼浜爆走愚連隊・初代総隊長
喧嘩も単車も最強 実家はラーメン店「昇龍軒」
人情派で人望篤い 女子にめっぽう弱い 実は寂しがり屋の一面も

☆ダイゴ
鬼浜爆走愚連隊・親衛隊長
喧嘩勝負が得意 実家は鬼浜寺
寡黙で頼りになる存在 柔道の使い手 精神世界にも精通

☆ノブオ
鬼浜爆走愚連隊・若手
喧嘩も単車も修行中
総隊長リュウジを誰よりも慕う 打たれ強さは比類なし

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★コウヘイ:暗黒一家・初代総帥
★ハンゾウ:暗黒一家・特攻隊長
★ゴンタ :暗黒一家・親衛隊長
★タカシ :暗黒一家・若手

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コメント

( ^∀^)ノ コンチャ♪

「子分」って言うのは…
なるほど、そういうことだったんですね^^
あおいさんが空手の達人かぁ…
可愛らしい外見に似合わず、相当の腕っ節だったんでしょうねw

ところで。
やっぱり、リュウジよりは強いんですよね?
あおいさんって。(^^;)

>鬼ムチコさま

ども~(*^ー^)ノ

男子の子分がいる、って。
なんかあこがれません?

……わたしだけかなf(^ー^;

そういう学生時代を送りたかったなあ、という妄想ですw

まあ、わたしは武道の心得ないですからね~。
ムリですけど。だはは。

あおいさんは――リュウジと喧嘩とか、しないですって((((;゜Д゜)))
もちろんコウヘイともしませんってばf(^ー^;

……たぶん、ね。たぶんw

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