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6月20日 4-1


 
 梅雨時にしては珍しく傘の心配がなさそうだ、って今朝お袋が言ってたとおりの天気。
 ここぞとばかりに走る散歩中の犬と、必死になって追いかけている飼い主の姿なんかを見ながら、座り込んだ土手から空を仰いだ。
 たまにはぼんやり前のことを思い出すのも悪くないな、なんて考えながら寝ころんだら、土手の上をランニングする赤ジャージの姿が見えた。
 お互いに手を振って、遠ざかる赤ジャージの背中を見送って――そしてオレはまた1年の頃のオレを思い出す体勢。

 ――あのときのオレは、それまで『自信がない』とか、さんざ悩んでいたことなんてすっかり忘れていたみたいだった。
 目の前をゆく2台の単車に挑むことしか頭になかった。
 それらに囲まれて悪戦苦闘している鬼工生――仲間をオレの手で助けなければという思惑に突き動かされていたんだ。

 鬼工の仲間を真ん中に、左右を固めている2台。オレと同じくメットをかぶっていないので、一目でそれとわかった紫色の髪、そしてスキンヘッド。
 ちょっかいを出されている鬼工の仲間は原付、執拗につっかけていっている2台は中型だから馬力の差は歴然としていた。
 原付をおちょくるように中型の2台は走っていた。
 原付が加速しようとすればどちらかが前に出て進路を塞ぎ、原付が減速してやりすごそうとするともう一方が後に回って退路を断ち――信号ひとつ分、動向を探っていたオレの気分を逆撫でするには充分の働きを奴らはしていた。
 
 おそらく奴らのミラーには、オレの姿が映っていたと思う。
 必死の様相だった仲間は気づいていたんだろうか。
 先の信号が黄色を示した。当然、前を行く3台は止まったりすることなく駆け抜けた。
 オレも遅れちゃマズい、とばかりに加速をつけて――よし、ここからが勝負だ!!

 ようやくオレに懐いてきつつあった愛車を、初めての勝負に導いた。
 急な勢いで速度を上げたオレの愛車は、片側2車線の国道を我が物顔で勝手走行している2台のうち、右側車線に近いスキンヘッドの操るマシンに外側からつっかかっていった。
 オレは右側車線に陣取ったハンゾウのマシンの外側から車体を最接近させた。。
 このときまでオレが『可愛い、可愛い』だけの想いで付き合ってきた愛車が、初めて猛々しくうなる瞬間――はじめて「敵」に対して無情なる咆吼を放つ瞬間だった。
 
 激しい火花の散るが如き感覚をそのときオレは体験したんだ。
 コウヘイとハンゾウのマシンを追って走り出したオレ。追いついて、仕掛けていって、追い抜いて、また追いつかれて。
 いつしか国道を走る他の車のことなんて忘れてしまうような恍惚感を味わった。
 背中を駆け抜けるぞくりとした感覚。夜の中に溶け込む爆音、灼けつくような油の匂い。
 ああ、そうか。オレ、こういうのって好きなんだな――そのときオレは自分の中に勝負への渇望が存在していたことを知った。
 だったら、オレはリュウジと出会えてよかったんだ。リュウジの脇を固めるのも、的外れってわけでもないのかも、と、そんなふうに思うことが誇らしかった。

 ふとそんな物思いにとらわれたオレは、気がついたらコウヘイ、ハンゾウ、そして奴らに囲まれていた原付に乗った鬼工の仲間の3台よりも前を走っていた。
 ハンゾウのマシンがオレの背後を粘っこく追って来た。
 このまま加速すればもちろんハンゾウも付いてくるに違いない。
 だが――コウヘイはどうする? 愉快半分に絡んでいたオレの仲間を、奴はどうする?
 答えはオレの都合のいいほうに転んでくれた。
 ハンゾウはもとより、コウヘイもオレを新しい玩具として認めたようだ。
 2台は加速したオレを追うことに決めたらしい。さっきまで『獲物』として扱われていた原付の仲間はお役御免というわけか。置いてけぼりになった様子がミラーに映っていた。
 
 よし、これでひと仕事終わったってわけだ。オレは奴らから、鬼工の仲間を助けてやれたんだ――その満足感は言いようもない大きさでオレの胸を占めていた。
 だったらあとは楽しむだけだ、とごく自然にそんな思いが生まれた。
 なるほど。オレはこうやって単車に乗ることを楽しめるんだな、と納得したら自然と顔がほころんだ。
 湿気をはらんだ海沿いの夜風の中で、そのときのオレはどんな表情をしていたんだろう。




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【鬼浜魂疾走編 登場人物紹介】

☆ハヤト:このおはなしの語り手
鬼浜爆走愚連隊・特攻隊長
単車勝負が得意 実家はバイク店「魔速商会」
一般評=クールなモテキャラ リュウジ評=とぼけた奴 趣味は昼寝

☆リュウジ
鬼浜爆走愚連隊・初代総隊長
喧嘩も単車も最強 実家はラーメン店「昇龍軒」
人情派で人望篤い 女子にめっぽう弱い 実は寂しがり屋の一面も

☆ダイゴ
鬼浜爆走愚連隊・親衛隊長
喧嘩勝負が得意 実家は鬼浜寺
寡黙で頼りになる存在 柔道の使い手 精神世界にも精通

☆ノブオ
鬼浜爆走愚連隊・若手
喧嘩も単車も修行中
総隊長リュウジを誰よりも慕う 打たれ強さは比類なし

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★コウヘイ:暗黒一家・初代総帥
★ハンゾウ:暗黒一家・特攻隊長
★ゴンタ :暗黒一家・親衛隊長
★タカシ :暗黒一家・若手

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◆関連するおはなし
 リュウジとコウヘイが初めて対決したときの件
  → 本編/自転車狂詩曲 ←
  → 承前/新米教官の自尊心 ←

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