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6月20日 4-2



 ――あのころのオレたちは、今みたいに暗黙の了解の勝負コースは持ち合わせていなかった。言わば初めての単車勝負だったんだから仕方ないけれど。
 さて、ここからオレはどうしようか? 2台を振り切ればそれで勝負終了なのか?
 そうする気なら可能だったとは思う。それなりの自信はあったから。
 けれどもオレがとった行動は、奴ら2台を従えたまま鬼浜町商店街に入ることだった。
 勝負熱でほとんどを占めていたオレのアタマの、ごく一部だけが冷静だったのが幸い。
 冷静なひとかけらがオレにこう命じたんだ。
 リュウジに無断で始めた勝負を、事後報告でもいいから知らせるべきだ、と。

 鬼川を左折する。そのまま川沿いに北上していって、町の方角を目指す。
 オレのとったルートを、逃がすものかとばかりに2台も追ってくる。
 ここで奴らのどちらかに先行を許すことはできない。奴らの思うルートに誘い込まれるわけにはいかないんだ――その思いは激しくオレの鼓動をゆさぶった。
 気を抜くとハンゾウが一歩先に出る。
 あ、マズい、と思うと横からコウヘイがオレにつっかかってくる。
 一瞬わざと減速すると、こんどはハンゾウが嫌味のように後退する。
 コウヘイがオレの眼前をふさぐように蛇行して――ちきしょう、奴らはなんて粘着質に絡んでくるんだ?
 嫌な目つきで単車を操っているに違いない前と後の奴らの表情を想像して、オレはさらに加速した。
 マシンだけではなくて、ついでに己の勝負への熱情も急加速だ。

 3台は、夜の時間でさほどの交通量のなくなった鬼浜町商店街へ入った。
 ルートからいくと、昇龍軒の反対車線を走ることになる。
 これは賭け。賭けに勝てば勝負がついたも同然だ。ここでリュウジが気づいてくれると助かるんだけど――そう思ってオレはあえて大きく排気音を響かせた。
 そのまま止まるわけにもいかないので、商店街を抜けて鬼工を目指す。
 このときには、緩急をつけることを学んでいた。先行するだけが脳じゃないようだ。
 ときに退いてペースを整えることなんかも使える技のような気がしていた。
 しかしながら、ここは勝負所だ。
 オレは何としてでも先頭を奴らに譲ってはいけない場面に来ていた。
 ルートを変えられると非常に厳しい――オレの思惑どおりのコースで勝負がつくかどうかが最後の博打だから。

 思えば、このときのコウヘイとハンゾウは『勝負』というよりは『遊戯』か『悪戯』の意味合いでオレを追いかけていたに違いなかった。
 だから、『勝負』そのものの気持ちで挑んでいるオレが負けるわけがなかったんだ。
 それでもオレはこの夜、思惑どおりの展開に持ち込むことの重要さをも学ばせてもらった。奴らの遊びに付き合っただけにしては、感謝してもいいくらいいろんな収穫があった。

 ――あのときのオレは、どうやら賭けに勝てたようだった。
 それはそうだよな。オレ、ギャンブルの嗜みはあったんだから。

 夜の鬼工はしんと静まりかえっていた。
 コンクリートの校舎に3台の排気音が絡みつくようにぶつかって、ハーモニーを奏でるかのように反響する。
 鬼工の外周をぐるりと回って、ふたたび大通りに出た。
 よし、これで方向転換完了だ。
 このまま行くと、さっき来た道の反対車線を通って海のほうへ向かう道。
 そう――リュウジがいるはずの昇龍軒の目の前を、オレたちは通過することになる。
 リュウジは気づいてくれるのか? オレの排気音を聞き分けてくれるのか?
 オレだったらリュウジのマシンの音がわかるんだけどな。
 ちらりと横目で見た昇龍軒の入り口が開いたようにも見えたけれど、あっという間に通り過ぎてしまったので定かではなかった。




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【鬼浜魂疾走編 登場人物紹介】

☆ハヤト:このおはなしの語り手
鬼浜爆走愚連隊・特攻隊長
単車勝負が得意 実家はバイク店「魔速商会」
一般評=クールなモテキャラ リュウジ評=とぼけた奴 趣味は昼寝

☆リュウジ
鬼浜爆走愚連隊・初代総隊長
喧嘩も単車も最強 実家はラーメン店「昇龍軒」
人情派で人望篤い 女子にめっぽう弱い 実は寂しがり屋の一面も

☆ダイゴ
鬼浜爆走愚連隊・親衛隊長
喧嘩勝負が得意 実家は鬼浜寺
寡黙で頼りになる存在 柔道の使い手 精神世界にも精通

☆ノブオ
鬼浜爆走愚連隊・若手
喧嘩も単車も修行中
総隊長リュウジを誰よりも慕う 打たれ強さは比類なし

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★コウヘイ:暗黒一家・初代総帥
★ハンゾウ:暗黒一家・特攻隊長
★ゴンタ :暗黒一家・親衛隊長
★タカシ :暗黒一家・若手

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◆関連するおはなし
 リュウジとコウヘイが初めて対決したときの件
  → 本編/自転車狂詩曲 ←
  → 承前/新米教官の自尊心 ←

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コメント

( ^∀^)ノ コンチャ♪

ううん、嫌みったらしい走行の仕方ですこと!
コウヘイとハンゾウはっ!ヽ(`Д´#)ノ ムキーッ!!
でもハヤトも、思わぬ収獲もあったようで少し成長したんでしょうか^^

3台分の排気音が、家の前を通ったんだから。
リュウジも、ハヤトだと気づいてくれるといいんですがねぇ(´Д`;)ハラハラ
いや、でもリュウジならきっと…!(`・ω・´)シャキーン!!

>鬼ムチコさま

ども~(*^ー^)ノ

ハヤトが今より「小僧」だったころ。
同じように、コウヘイたちも「小僧」だったんですよね~。
今よりも無差別だったんだと思います。なんちて^^
あれやこれやでハヤトも、リュウジも成長してるんでしょうね。
たぶんコウヘイたちもw

さあ、リュウジは――どうでしょう(´∀`)
ご想像どおりに書けてましたかしら?

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