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6月20日 5-1

 
 
 川からの風が吹いてはいるものの、天気が悪くないとさすがに蒸し暑いもんだ。
 衣替えも何のその、一年中袖を通している学ランを脱いで雑草の上に放り投げた。
 なんか知らないけど、リュウジがそうだからオレたちも自然とそれに倣って夏でも学ランなんだよな。
 付き合いがいいってことだろうか――そう考えたらちょこっと笑えた。
 まあ、いいか。オレに開襟シャツ一枚って格好が似合うとも思えないし。

 ――あのときのオレは、夜風に吹かれながら震えていた。
 もちろん寒かったからなんかじゃなくて、おそらく興奮していたからだ。
 
 鬼工を一周したあと鬼浜町商店街を駆け抜けたオレは、ふたたび川沿いの道に出た。
 相変わらずコウヘイとハンゾウの2台は、未だオレをいたぶるように追ってきていた。
 川沿いに出たとき、オレは速度を出来る限りゆるめた。
 やり過ごそうなんていう意図ではなかった。もとより、今さら奴らがこのままオレを逃がすとも思えなかったし。
 
 目の前にはコウヘイの蛇行運転、右からはハンゾウの執拗な粘り着き。
 それらを一気に抜き去ることもできたとは思うけれど、オレはあえて機が熟すのを待っていた。
 そう。オレが信じた音がオレたちを追いかけてくるのを待っていたんだ。
 なぜだか知らないけれど、オレは確信に近い感覚でそれを待っていた。
 なぜだか知らないけれど、オレはもう少しでそのときが来るはずだと自信を持って言える気がしていた。
 
 だから、オレは『そのとき』を体感できた瞬間、鳥肌がたつほどの興奮を感じたんだ。
 耳に覚えた排気音が近づいてくる。頼もしく聞こえる音は、リュウジのマシンのはず。
 
 ほら、やっぱりだろ? オレのギャンブル、わりといいセンスしてるだろ?
 BIG BONUSは目の前だ――前兆を楽しむときと似た感覚にとらわれて、オレは自信を持って加速した。
 一瞬タイミングを外して、右を塞ぐハンゾウをかわす。
 よし――今だ!! オレは頃合いを見計らって、前を邪魔していたコウヘイを抜いた。
 奴らより先行することを得た。
 そのまま奴らを誘導するように本道を逸れて、脇道へと入る。
 細い道を下りきったら河川敷だ。
 舗装された道が終わった先の砂利道。タイヤの下にごつごつとした響きを感じたところでオレはブレーキをかけたんだ。
 
 先頭のオレにあわせて、追随者たちは正面に向き合うように単車を停めた。
 オレは正面から奴らと向き合うことになった。
 外灯の光も届かない暗がりで、頼りになるのは単車のヘッドライトのみ。やけに青白く奴らの顔が夜に浮かび上がるのを睨みつけながら、オレはあとからくる1台の排気音が次第に大きく響くのを心強く思っていた。

 まもなく最後の1台――リュウジのマシンが河川敷に降りてきた。
 リュウジは迷わずオレの真横に単車を停めると、オレにこう訊いた。
 「ハヤト、呼んだか?」
 「ああ。気づいてくれてよかったよ」
 オレは事もなげにリュウジに応えてみた。とはいえ、本心は安堵でため息をつきたいくらいだったんだけど。
 「気づかねえわけがねえだろ!!! ハヤトの単車、すっげえ楽しそうな音してたもんな」
 そう言って、オレには笑みを。それに次いで、暗黒水産の奴らには怒号を向けた。

 「おい、お前ら!!! ウチのハヤトに何の用だ? なんで追っかけまわしてやがるんだ!!!」
 「別に俺等に用なんてねえよなあ、ハンゾウ?」
 「その通り。むしろそっちが俺たちの遊びに首を突っ込んできただけだ」
 そんな煽り文句にリュウジは動じなかった。
 さすがの貫禄だな、とオレは微笑みたい気分だった。
 「何があったか知らねえが、お前らがハヤトに絡んでたのは事実だろうが!!! ウチのハヤトは訳もなく特攻かけたりしねえはずだ――あとは俺が相手するぜ。こないだっから俺は真実、はらわたが煮えくりかえる気分だったんだぜ? やっとお前らと正面切ってやりあえるってのは、俺には好都合だからな」
 ひときわ声を大きく張って、そしてリュウジは単車を降りてコウヘイの前に立った。
 「オラ、さっさと出て来いや!!!」

 ――あのときのリュウジは、鮮やかな拳さばきをしていたのを覚えている。
 これより前にコウヘイと初めて相見えて、中途半端に水を差されて勝負が棚上げになったときとは格段にキレが違っていた。
 力強くコウヘイに追い縋るリュウジの拳の音は、低い周波数を持ってオレの耳に届いた。
 逆にコウヘイの繰り出す一撃を喰らっても簡単に倒れたりせずに、力強く地面に両足を踏ん張って――オレは心の底からリュウジを頼もしいと感じたんだ。

 「いいか、よく聞け。暗黒水産!!!」
 軍配はリュウジに上がった。
 河川敷のごつごつした砂利の上に背中をついて倒れたコウヘイを見下ろして、リュウジは叫んでいた。
 「こっから先、無闇に鬼工生に手出しするのは俺が許さねえぜ!!! 相手は俺らだけで充分だろ? 俺は意味もなく誰かと闘うつもりはねえが、やると決めたら正義を貫く覚悟だからな!!!」
 リュウジは倒れたコウヘイにそれ以上視線を落とすことはなかった。
 そして、オレの隣に戻ってきてふたたび単車に跨った。表情はすがすがしかった。
 「行くぞ、ハヤト」
 「ああ、了解」
 そしてリュウジの単車の後について、オレたちは町に向けて走り出したんだ。



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【鬼浜魂疾走編 登場人物紹介】

☆ハヤト:このおはなしの語り手
鬼浜爆走愚連隊・特攻隊長
単車勝負が得意 実家はバイク店「魔速商会」
一般評=クールなモテキャラ リュウジ評=とぼけた奴 趣味は昼寝

☆リュウジ
鬼浜爆走愚連隊・初代総隊長
喧嘩も単車も最強 実家はラーメン店「昇龍軒」
人情派で人望篤い 女子にめっぽう弱い 実は寂しがり屋の一面も

☆ダイゴ
鬼浜爆走愚連隊・親衛隊長
喧嘩勝負が得意 実家は鬼浜寺
寡黙で頼りになる存在 柔道の使い手 精神世界にも精通

☆ノブオ
鬼浜爆走愚連隊・若手
喧嘩も単車も修行中
総隊長リュウジを誰よりも慕う 打たれ強さは比類なし

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★コウヘイ:暗黒一家・初代総帥
★ハンゾウ:暗黒一家・特攻隊長
★ゴンタ :暗黒一家・親衛隊長
★タカシ :暗黒一家・若手

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◆関連するおはなし
 リュウジとコウヘイが初めて対決したときの件
  → 本編/自転車狂詩曲 ←
  → 承前/新米教官の自尊心 ←

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コメント

( ^∀^)ノ コンチャ♪

ああ、やっぱり!

ハヤトに気づくだけならまだしも、マシンの楽しそうな音まで聞き分けるなんて!^^
さすが、リュウジ!頼もしい男ですわぁ(*´∀`*)

>鬼ムチコさま

ども~(*^ー^)ノ
お返事おそくなって失礼いたしました。

リュウジ、ハヤトのことよくわかってたみたいですね~^^
ハヤトもうれしかったんじゃないかしら。

やっぱり「器」っていう感じかな。
その「器」に見込まれたハヤトも、なかなかではないかと☆
ちょうどいい組み合わせ、というか。
……これでハヤトまで熱血キャラだと、暑苦しすぎますわねf(^ー^;

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