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勇者的夏休みへの入り方 2-1



 そしてオレはダイゴのあとについておもちゃ屋のはしごをすることになる。
 本日の2軒目は、ダイゴの行きつけらしい。
 一歩店内に入ってみると、なるほど。親父を連れてきたら興奮しそうな感じがする。
 「うわ、すごいな。こういう店があるんだ」
 「押忍。俺はさきほどのような店よりも、この手の店に来るほうが多いな」
 「なんとなくわかる」

 店内に並ぶガラスのショーケースには所狭しといろんなおもちゃが並んでいる。
 アニメのキャラクター人形、木製の電車のおもちゃ、ウチにあったのと似たようなクルマの模型、いかにも年代物っぽいカプセルトイの中身らしきちいさいもの。
 新しいものから古いものまで。高価なものからいかにもチープな品まで。
 そんないろいろの前を通り過ぎて、ダイゴがレジに向かって挨拶した。
 カウンターにいた人のよさそうな、丸い眼鏡の人がにこりとダイゴに手を振るあたり、なるほど常連なんだと思わせる。
 「ハヤト。俺は店長と話しをするので。悪いが適当に物色していてくれるか?」
 「ああ、うん。OK。親しいんだね、店の人と」
 「そうだな。月に何度かのペースで通ううちに、いつの間にか」

 そしてダイゴが丸い眼鏡の店長さんと話をしている間、オレはひとりで店内徘徊。
 よし、親父の誕生日にはここに連れてきてあげよう、とか思いながらガラスケースをのぞき込んだら、それがいた。
 「あ、これ――懐かしいな」
 見た瞬間、懐かしさでいっぱいになったオレの目はそこに止まって動かない。
 それは5体で一組のソフビ人形だ。
 悪の組織と戦う、変身をした5人組――戦隊ヒーローの人形。
 そうだ。オレがまだ子供のころ、これと同じものを持ってた。
 お袋にねだったけど、5体全部は買ってもらえなくて、自分が一番かっこいいと思ってた青い衣装のヒーローを選んで。近所の友達が赤いヒーローを持ってたから一緒に遊んで。
 今にして思えば、親父にねだったら5体とも買ってもらえたのかもしれないけど。
 その頃のオレ、大人になったら全部揃えるって友達に宣言してた気がするな。

 まだ子供だったオレは、いつか自分も変身できるようになるって信じてた。
 それで、悪い奴らをやっつける、って息巻いてた。
 一番かっこよかった青い衣装のヒーローは単車乗りだった。やっぱりかっこいい男には単車がつきものなんだって、当たり前のように思ってた。
 そう考えると、単車で極悪非道の奴らと勝負してる今のオレって――意外と子供時代のオレの理想に近いのかな?
 ……そんなことないか。
 
 ガラスケースの中では、5体セットのヒーローがこっちを見てる。
 値札を見たら、びっくりするくらい高い値段がついてた。
 新品って書いてあるから、プレミアとかがついているんだろう。
 ……オレはまだ、コンプリートできる大人にはなりきれていないんだな。

 「あれ? ハヤト?」
 急に背後から名前を呼ばれて、思いっきり肩をびくりとさせたオレ。
 郷愁からあっという間に現実に引き戻されたオレの目には、見知った顔が映ってる。
 「うわ、亜由姉さん――? びっくりした」
 「何よ、そんなに驚くことないじゃないの。失礼ね」
 くすっと笑った彼女は、オレよりひとまわり年上のいとこの姉さんだ。
 「でも、あたしもちょっと驚いた。まさかここであんたに会うとは思ってなかったもん」
 そうだよね、とオレも頷いてみる。

 「亜由姉さんは買い物?」
 「うん、そう。ちょっとね、仕事で使う資料集めみたいなもんかな」
 「なるほど。仕事熱心だね、相変わらず」
 「まあね」
 意味不明に忍び笑いをしている亜由姉さんは、絵を描く仕事をしている人。
 雑誌なんかの挿絵やイラストを描いているわけで、そう考えればこういう店にもいろんな資料が並んでるんだろうなと想像がつく。
 「ハヤトは何見てた?」
 「うん。これ。オレ、子供のころ好きだったなあ、って懐かしくて」
 「どれ? あ――」
 オレが指さしたガラスケースの中を見て、亜由姉さんはどういうわけだか言葉を切った。
 「ん? どうかした?」
 「え、あ、あはははは。何でもないけど……そっか。そうだよね。ハヤトって子供のころ、こういうの詳しかったもんね」
 オレとガラスケースの中の戦隊ヒーローを見比べて、亜由姉さんは勝手に納得してる。
 
 「そっか。ハヤトに相談すればよかったのか」
 「何? 相談って?」
 「あ、でもさすがにソレはまずいか……あはは、気にしないでいいや。忘れていいよ、ハヤト」
 「って、逆に気になるじゃん」
 「いいから、いいから。っていうか、そこちょっといい? 実はあたしもそれに用があるのよ」
 「え――? 戦隊ヒーロー?」
 「そう。探してる資料はまさにそれなのよ。って、ほんとはそういう話もしちゃダメだったかな……まあ、今さらしょうがないか」
 言って、亜由姉さんはオレが譲ったガラスケースの正面に立ってのぞき込んでる。
 しばらく考えたあとに、わりと最近の作品と思われるヒーローを5体セットで買うことにしたみたいだ。
 亜由姉さんがレジに向かうのについていったオレはせつなく思う。
 ……大人買いって、やっぱり憧れるな。



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