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勇者的夏休みへの入り方 2-2



 レジの前で亜由姉さんが声をかけると、バックヤードから店長さんが顔を出す。
 店長さんは亜由姉さんの顔を見て、『まいど』って言ってた。顔見知りだったんだな。
 亜由姉さんが買い物する品をカウンターに置くと、店長さんがレジを叩く。
 そのすぐあとに、ダイゴも店長さんと同じところから出てきた――よっぽど懇意にしているのがわかる。
 「ハヤト、気に入ったものはあったか?」
 「ああ、ダイゴ。懐かしいやつ見つけた。そしたら、偶然この人に会っちゃって」
 「こんにちわ、ダイゴくん。一緒だったんだ」
 「押忍、お久し振りです」
 「っていうか、オレがダイゴについてきただけって話だけどね」
 ダイゴにしても見知った顔の亜由姉さんは、そうなんだ――って笑いかけたんだけど。
 何かに気づいたように表情を変えた。
 「ねえ、ハヤト。今日はダイゴくんとふたり? だよね? そうだよね?」
 「うん、ここにはね。向かいの古本屋にリュウジとノブオがいるけど」
 「え――ああ、そうなんだ。あはははは……ま、いっか」
 あ~あ、とあきらめたようなため息をつく亜由姉さん。何だろう、この反応は?

 「して、ハヤト。懐かしいものとは何だ?」
 亜由姉さんが領収書を頼んでいる間にダイゴがオレに訊く。
 「うん。オレが子供のころ好きだった、戦隊ヒーローのソフビ人形。年代物だとさすがに高いんだね、ダイゴ」
 「ああ、美品だとそれなりの値段がつくゆえ」
 「そうだね。オレも夏休みは店で手伝いして稼ごうかな。見たら欲しくなるね。ダイゴの気持ち、ちょっとわかったかも」
 素直に言ったら、ダイゴが大きく頷いた。
 
 「お客さん」
 ダイゴとオレのやりとりを聞いていたのか、店長さんがにこやかに声をかけてくれる。
 「はい? オレ?」
 「ケースの中の品はそれなりですけどね、こっちのだったらお手頃ですよ。ばら売りの中古もありまして。まあ、気に入ったものがあったらラッキーってことで」
 オレは店長さんの手招きに従って、『ジャンク品』って書かれたコーナーを覗いてみる。
 そしたら――あったんだ。懐かしい手触りが。
 子供時代のオレが親しんだ青い衣装のヒーローのソフビ人形が、オレを待ってたような顔でそこにいた。
 オレは迷わずそれを選んで、店長さんに手渡した。
 何とも言えないわくわく感が生まれる。こういう気分そのものが懐かしいんだと思った。
 
 ダイゴと亜由姉さんと3人で店を出たところに、ちょうどリュウジとノブオがいた。
 リュウジもノブオも古本屋の袋を持ってる。
 「オウ、ダイゴ。用は済んだか……って、おい!!! なんで亜由姉が一緒にいるんだ?」
 「うん、偶然、店の中で会ったんだ。ね、亜由姉さん?」
 「あはは、そうなのよ、リュウジ。ちょっと資料を集めに来たんだけどさ」
 「資料ってのは、亜由姉。まさか例の……だったりしねえよな?」
 さあ、と亜由姉さんはしらばっくれてる。さっきから変なんだよな、亜由姉さん。
 
 「例の、って何? リュウジ」
 「うわあ、ハヤトさんには関係ないんっス!! ね、兄貴?」
 「オウ、その通りだぜ!! だよな? 亜由姉」
 「というか、そこで亜由姉さんに同意を求めるのは、むしろ妙ではないか? リュウジ」
 ダイゴの指摘を聞いて、亜由姉さんが笑い出した。
 「あはは、リュウジ。あんたってほんとに隠し事下手だね。ノブオちゃんも」
 「あ、やっぱり何か隠してるんだ?」
 「い――いや、大したことじゃねえんだぜ、ハヤト。ただ――な? 亜由姉」
 「だから、そこであたしに話を振るからマズいんじゃん、リュウジは」
 亜由姉さんは苦笑いでリュウジに言って、次はオレに向き直る。
 
 「まあ、ちょっとしたお楽しみってことよ、ハヤト。どうせすぐわかるから、もうすこしだけ知らん顔しといてあげな。リュウジの面子ってのがあるだろうからさ」
 「ちきしょう、言いたいこと言ってるぜ、亜由姉」
 「なんか文句あるの?」
 「わああ、亜由お姉さん、ここはひとつ穏便にぃぃぃ!! って、兄貴も!!」
 「ハヤト。よいではないか。ここは赤いヒーローの顔を立ててやってはどうだ?」
 ダイゴが言った『赤いヒーロー』っていうのは、オレの好きだった戦隊ヒーローの赤い衣装のリーダーに、リュウジをひっかけただけだったんだけど。
 やけにリュウジがそこにつっかかってくる。
 「何? なんでダイゴがそんなこと知ってるんだ?」
 「え――? どういう意味?」
 「あはははは。だからもう、リュウジは黙ってたほうがいいってば」
 亜由姉さんは笑ってて、リュウジはかなり苦い顔をしてて、ノブオはおろおろしていた。
 
 そういえば、何かイベントがあるんだってこないだリュウジがうっかり言ってたんだったな、とオレは思い出していた。もしかしたら関係あるんだろうか。
 詳しいことはわからないけど、何か楽しいことが待っている予感がする。
 ダイゴとオレは首を傾げながらも、それでも顔はしっかり笑ってた。


   * 勇者的夏休みへの入り方 完 *


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