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ジグソーパズルの1ピース 9-1



 次第に距離を詰める数騎の単車。その姿が見分けられる位置まで迫ってきている。
 互いに絡み合うマシンの放つ音は3つだった。
 オレたちは、無言のままそれらが目前に停まる様をただ見ていた。
 腕を組んだリュウジを中心に立つオレたち。
 そして単車を降りて居並ぶ3人――ハンゾウ、ゴンタ、タカシである。
 皮切りはハンゾウだった。
 ハンゾウがそうするのに倣うように、ゴンタもタカシも同じ姿勢をとる。
 3人はオレたち――というかリュウジに向かって深く礼をした。

 何だろう、と思ってあっけにとられるこちらの同格3人は抜きにして、リュウジは不思議に思ったら口に出さずにいられない漢であるのはご存知のとおりだ。
「何だ、お前ら。奴の遣いで来たのか? そんなので俺が納得するわけねえだろうが!!!」
「違う。総帥は俺たちがこうしていることなんか知らない」
 リュウジに応えたのは、先に頭を上げてこちらに視線を送るハンゾウだった。両脇ではまだゴンタとタカシが頭を垂れている。
「奴が知らねえだと? ハンゾウ、お前ら勝手に俺らのところへ来たのか?」
「俺の独断で来た。俺と一緒に来ることはゴンタとタカシの個人的な判断だ」
 ハンゾウはそう言って、リュウジを真正面から見据える。そして――
 
「礼を言う、総隊長。今日は総帥と闘ってもらえて助かった。感謝する」
 ハンゾウは再度一礼をした。あまり響く方ではないハンゾウの声が風に舞う。
「うん? 何だ、それは?」
 リュウジはその展開に、不思議を通り越して驚いているようだった。
「別に感謝されることなんてした覚えはねえぞ、俺は」

 リュウジへのハンゾウの答えはこうだった。
「俺たちの誰もが総帥には何も言えなかったし、何もできなかった。それを総隊長がしてくれたことへの礼だ」
 早口で言ったハンゾウは一度ここで言葉を切り、息継ぎをしてから続ける。
「総帥の将来を考えれば、留学に異を唱えるのがいいことだとは思えないし俺たち如きにとやかく言う資格もない。けれども、やはり総帥がいての俺たちだというのは明白。俺たちの誰しもがどうしたらいいかわからずにただ憔悴していただけの数日間を、情けないと思ってもらっても構わない」
「周りくどいぜ、ハンゾウ。お前、一体何が言いたいんだ?」
 ハンゾウにしては珍しいと思われる長広舌に、リュウジは焦れたように口を挟む。

 それへ、今度は礼ではなく頷きを返してからハンゾウが言い継いだ。
「その話が出てからずっと、総帥はどちらを重視すべきなのか決めかねているようだった。留学するとしたら総隊長から、しないとしたら将来から逃げることになる、と。実際口に出してそう言っていた。さっき総隊長と一戦交えるまでは。それを経て総帥は決断したらしい。今現在、この町で一番であろうとする在り方を選んだようだ」
「この町で一番の決断だと?」
「ああ。総帥はこの町に存在すること、留学しないことを選ぶと言った。なぜなら――鬼浜町には総隊長がいるからだ」

 すとん――と音を立てて嵌ったような気がした。
 おそらく『鬼浜爆走愚連隊』という名前のジグソーパズルから欠落しそうだったひとつのピースが、すんでの所で元に戻った音。
 転がって行きかけたそのピースを、なんだかんだと言いながらも定位置に押し留めたのはリュウジで――それに対して感謝する、横に並んだ別のピースの絵柄たち。
 本当のところ、転がっていこうとするのを戻したのが結果的によかったのかどうかは誰にもわからない。
 けれども今現在の一枚絵からその部分が消えるとしたら、それはやっぱり居心地がよくないかもしれないから。
 たとえちょっと離れた部分を構成する絵柄だって、きっとそう感じるだろうから。


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