「待たせたな、亜由姉、ハヤト」
言いつつ階段を下りてきたリュウジの手には、子供用の絵本が数冊載っている。
「何、それ?」
「これか? まあ、資料ってとこだな。こないだ古本屋で買ったんだぜ」
「ああ、ノブオと行ったときか」
リュウジがテーブルに置いたそれを手にとってみる。内容は――子供時代だったオレが確実に喜びそうなやつ。
悪と戦う変身ヒーローの活躍の本ばかりだった。
オレが好きな戦隊ものもあったし、異星人や怪獣と戦う巨大化ヒーローのやつもある。
「で? 亜由姉、どうだ?」
「ああ、うん。とりあえず第一稿ね。こんなもんでいかが?」
リュウジが問うのに応えて、亜由姉さんは円筒のふたを開けて中身を取り出した。
テーブルの上に広げられたのは大きな画用紙。絵描きの亜由姉さんの作品らしい。
描かれていたのは、ポーズをとるひとりの姿だった。
頭には顔まで覆うヘルメット状のかぶり物、背中にはマント、腰にはいかにも秘密のありそうなバックルつきのベルト。
赤いバトルスーツに変身後と思われる、これはまさしくヒーローみたいだ。
「お、すげえな、亜由姉!!! ずいぶんと本格的じゃねえか」
「でしょ? これでよかったら、この上に題字を入れて、下のほうには日時と会場を入れるといいかな、って」
「オウ、そうだな。今度の会議に持ってってもいいか?」
「もちろん。あ、手直しするとこがあったら遠慮なくね。これでも、こっちは仕事として受けてるんだから」
「当然!!! 最高のもんを作りたいから手抜きはなしだぜ」
リュウジがさも満足そうに頷きながら、亜由姉さんの描いた絵に見入っている。
それを見守る亜由姉さんの表情にはどこか誇らしさが漂っていた。なんというか、プロの風格とでも言うか。
「えっと――」
リュウジと亜由姉がふたりで盛り上がりつつ、真剣に話しているのにおずおずと割ってはいるオレ。
「これはいったい、何の話?」
「あ、そっか。ハヤトに説明してなかったわ」
「言われてみればそうだな。ここまで見られてるんじゃ今更何を隠しても始まらねえな。仕方ねえから教えてやるぜ、ハヤト」
「……って、なんかこっちが申し訳ない雰囲気」
「わはは、いいってば。どうせこうなると思ってたしな? 亜由姉」
「そうね、リュウジ。まあ、あんたがもうちょっと隠し事とかポーカーフェイスとか上手だったらそんな心配なかったんだけどね」
「ちぇ。俺かよ。まったく、敵わねえなあ、亜由姉には」
苦笑いで言いながらも、リュウジが話してくれる気になったみたいだ。
つと席を立って、リュウジが冷蔵庫から瓶のコーラを3本持ってくる。
それぞれ栓を開けて、コップと一緒にオレと亜由姉さんの前に置いてくれた。
「あ、悪いね」
「いや、どうってことねえ」
それで喉を潤してから、リュウジが話を切り出すのを聞いている。
「ほんのちょっとした思いつきだったんだよな、最初は。で、話してるうちにどんどん乗り気になってきた、ってか。せっかく夏なんだし、いつもと違うことやっても楽しいかも知れねえし、って感じか?」
そうか。楽しいんだ。リュウジが楽しいんだ。
リュウジの顔はやんちゃ小僧みたいに輝いてたから、それがよくわかる。
女なのに、そういうのばかり見てました(笑)
私が小さい頃は、デパートの屋上とかでよく見かけた気が…(´∀`;)
例えばの話ですが。
ヒーローのリーダー的存在は、リュウジにピッタリですよね!ww
>鬼ムチコさま
>ヒーローとか戦隊ものって、在り来たりなストーリだけど夢中になっちゃうんですよねぇ(//∇//)
その「定番さ」がよかったりしますよね~。
時代劇とも通じるところがある、っていうか。
……とか、自分あんまり時代劇観ないんですけどf(^ー^;
>ヒーローのリーダー的存在は、リュウジにピッタリですよね!ww
おおお、やっぱりwww
そんな感じですよね、リュウジのキャラって。だはは。
っていうか、鬼浜の世界観って、ソレに近いですもんね。
構造は単純なんですよね~。だからアツいに違いない!!!
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