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商店街で君と握手!! 2-1



 昇龍軒のテーブルで、亜由姉さんが描いた絵を前にリュウジが話すのを聞いている。
「あのな。ここらで毎年、盆踊りやってるの知ってるか? ハヤト」
「盆踊り……ああ、そういえばやってたね。夏の終わり頃だっけ?」
「そうだ。いつも盆休みの次の土日にな」
 それはオレにも覚えがあった。ゲーセン裏の公園にやぐらを組んで、提灯を吊して。気合いの入った太鼓の音を去年も確かに耳にしたはずだ。
 それが――? と声に出さずに目顔で問うと、リュウジはこう続けた。
「その盆踊りってのは毎年ここらの、鬼浜町商店街が主催しててな」
「へえ、そうだったのか。知らなかった」
 なるほど。いかにもリュウジが好きそうだ。
「盆踊り自体は夕方から始まるんだが、毎年は日曜の昼間にカラオケ大会をやっててな。まあ、おっちゃんおばちゃん向けの企画だな。こう、やぐらとは別にステージ組んで」
「あはは。まさに町内仕様のイベントだ」
 そう言ったらリュウジは笑って頷いた。

 リュウジはコップに注いだコーラをくいっと飲んでから続ける。
「それでな、今年はステージの空いてる土曜の昼間に、子供向けのイベントやろうぜ、っていう話になって。ヒーローショーでも呼ぼうってことだったんだ、最初は」
「ああ、なるほど。頼めば来てくれるらしいからね、プロの興行が」
「そうなんだけどな。でも、それじゃ面白くねえだろ?」
 え、そうかな? おもしろくないってこともないんじゃないかな――とは思ったけれど、口を挟む余地はなかった。リュウジが続けてこう話す。
「しかも、その話をたまたま聞いてたノブオが思いついたことがあってな。試しに商店街の集まりで提案したら、すんなり通って。プロ呼ぶより安上がりだし、ってことで」
 なるほど、なるほど。ここまで来たら、さすがに察しのよくないオレにだってわかる。
 やっと話がつながった、とばかりにリュウジの目を見る。リュウジが笑ってこう言った。
「わはははは!!! まあ、そんなとこだぜ。せっかくだったら俺がヒーロー役やったらいいんじゃねえかって。まったくノブオの奴、面倒なこと思いついたよな」

 やれやれ、って言いたそうな顔ではあったものの、明らかにリュウジはにこやかだ。
「とか言って。リュウジ、すごい乗り気のくせに」
「うん。そうだね、亜由姉さん。リュウジ、楽しそうだもんね」
「そうそう。それで、リュウジはあたしに、ポスター作成の仕事を持ってきてくれたの。あと衣装デザイン案ね。それで、ほら。この前あそこのトイショップで資料探してたわけ」
「そういうことか」
「それっぽい衣装はそのへんでも買えるけど、それを仕立て直して自分らしさを出したいとかって、なんだかんだこだわってるんだよ、リュウジってば」
「わはは、いいじゃねえかよ。こだわりは漢にとっては必要条件だぜ!!!」
 亜由姉さんが暴露したことについて、リュウジはちょっとだけ照れた顔をする。

 しばらくあと、とにかく用事は済ませたから、と亜由姉さんは帰ることにしたようだ。何でも、これから1件別の打ち合わせがあるんだ、とか。
「今日はわざわざ悪かったな、亜由姉」
「全然。当たり前だからさ、こういう場合はクライアントのところに出向くのが」
「暗い――なんだって?」
「あはは、クライアントね。お客さんって意味よ、リュウジ」
「ほう。なんか難しいな。けど、亜由姉。ほんとはな、ストーリーとか考えるのにも付き合って欲しかったんだけどよ」
「え、ストーリー? あはは、それ、あたしパスだってば。だって、あたしはただの絵描きだよ? むしろ、ほら。それだったらコレ置いて帰るから。ウチのとぼけた従弟がそっちのほうなら多少は役に立つはずだもん。ね、ハヤト?」
「うん。オレ、そうかも。ちょっとはアイディアとか出るかもしれない」
 亜由姉さんのご指名を受けて、オレは即座に答えている。

 オレの即答を、逆にぎょっとした目でリュウジは見てた。
「ってかハヤトが単車以外のこういうことに積極的だっての、珍しいんじゃねえか?」 
「いや、でも。オレ、ほんと好きだったからさ。子供の頃。だからけっこう詳しいよ?」
「だったらOKね。そしたらリュウジ。悪いけど、ほんとに時間だから。また連絡して」
「オウ!!! 気をつけてな!!! ってか、単車で送ろうか?」
「……それは遠慮させていただきます。次のクライアント、ごく普通の善良な企業だから、あんたの爆音マシンはちょっとどころか全然ムリ」
 じゃあね、と手を振って、亜由姉さんは昇龍軒を後にした。




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