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疾走ロード 2

 南町は川向こうの町、わりと栄えている大きな町だ。
 その南町の駅前にあるホテルがオレ達の目的地だ、と信号待ちの間にリュウジに告げられた。

「10時まであと5分か。微妙だな」
「ハヤト、頼むぅ!!! なんとか間にあってくれい」
「オス、了解。飛ばすぜ」
 オレは頷いて、青になった信号に突っ込んでいった。

 通り過ぎた交差点の前にある交番からお巡りが視線を送っている。やべぇ、昼間からノーヘルだよ、オレ達。
 捕まるわけには行かねーぜ、とオレは速度を上げてゆく。

 道を急ぎながら感じる、背後のリュウジの手にした包みから漂う香り。
 訊ける状況ではないのだが、何らかの食べ物が入っているらしい。
 リュウジが店の上っ張りを身につけていることから察するに、これは或る意味「出前」なんだろうな。しかも、よっぽど重要な。

 こう見えて、リュウジは手先が器用だ。
 実家がラーメン店ということもあるし、料理の腕前は大したものなのだ。
 先週、選択科目『家庭科』の調理実習で、リュウジの作ったチャーハンは先生をもうならせた逸品だった。

 オレはリュウジと同じ班だったけど、まったくもって出る幕なしだった。
 リュウジは手早く作り上げ、おまけに自分で食材を持ち込んでまで、オプションでスープとシュウマイを付けるという荒技に出た。

「へえ、リュウジさすがに職人芸だね」
「当然!!! って、見とれてないでさっさと卵割れや、ハヤト」
「ああ──あ、いけね。殻入った」
「気合いが足りねえぞ!!!」
 調理室のフライパンではなく、こちらも持ち込みの自前の中華鍋を振るうリュウジの顔。確かに気合い入ってたなあ。

 実習が終わって放課後に試食したダイゴとノブオもそろって絶賛していた。
「すげえっす、うまいっす、さすがっす、泣けるっす~~~」
 とノブオが涙声を上げるやら、
「おお、ごっつあんです」
 ダイゴも彼にしては目を見開いてたたえるやら。
「喜んでもらえて光栄だぜ。な、ダイゴ。こっちのシュウマイどうだ?」
「最高ス」
「そうか、ならよかった。ダイゴは確かシイタケ嫌いだったよな」
「ウス。あの匂いがどうも」
「フフフ、それでも旨いと言ってくれるなら成功だ」
「ああ、そういえば入れてたな、シイタケ」
「オウ。シイタケ嫌いにもイケるようにと思ってな。生シイタケにしてみたぜ」
「芸が細かいっす、兄貴~~~!!!」
 本当に泣き出さんばかりのノブオの顔を思い出して、オレはちょっと笑ってしまった。

 いよいよタイムリミットまであと2分。
 どうやら間に合いそうだ。
 次の信号のきわに、リュウジの指定したホテルがある。

 折しも差し掛かった最後の信号は、赤。駅前だけあってぶっちぎるには交通量がありすぎた。
「間に合いそうだぜ」
 ブレーキを掛け、振り返ってオレが言うのを聞いてリュウジは頷く。
「よくやった、ハヤト!!!」
 一言返すや否や、リュウジはバイクを降りて、信号の変わる前に駆けだした。
 胸の前には大事そうに抱えた包み。
 リュウジの後ろ姿がホテルの正面扉に滑り込むのを見送って、オレは青になった信号を通過した。

 さて、リュウジの大事なお得意さまはどんな人なんだろう?

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