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単車屋お天気屋 1-1



 夏休み明けの最初の日。
 授業のない今日は、ホームルームと掃除のあとで解放の身となったところで視聴覚室へ乗り込んだ。
 リュウジが赤ジャージに交渉して使用許可をもらったらしい。
 仰々しく暗幕まで引いて、さっきから大きなスクリーンに映し出されているのは先日の鬼浜町商店街でのイベント――鬼浜戦隊ショウテンジャー・ヒーローショーを録画したものだった。
 視聴覚室を陣取っているのはオレたちと、出演願った野球部の面々。それからゲストに千晶ちゃん。
 千晶ちゃんは乙女な男子で鬼工のアイドル。リュウジとオレの同級生だ。さっき教室で玉城に上映会のお知らせをしてたのを聞きつけて、自分も観たいと言ってついてきた。

 場面転換になる区切りのところで、それまで黙って見てた千晶ちゃんが口を開く。
「へー。ハヤトとダイゴが悪役なんだ」
「ハヤトな、自分から志願したんだぜ」
「そうっス。ダイゴさんは道連れっスけどね。こんなに優しい人なのに」
「ってノブオ。それはオレだけ悪役が似合うってこと?」
「え、あれ、そう聞こえちゃいました? そんなつもりってこともなくって、えっと……」
「まあな、ノブオは素直だからな!!! そう絡むなや、ハヤト」
「あはは。リュウジ、それフォローになってないから」
「押忍。千晶さんに同意だ。だがハヤト、俺はもらった役は自分に向いていたと思うゆえ」
「うん。ありがとう、ダイゴ。本当に優しいな。やっぱり怪人にしとくのは悪かったってオレ思ったよ……」
 そして映像は、場面が切り替わったタイミング。全員の目はスクリーンへと戻った。
 しかし自分が喋ってるのを見るのって、妙に気恥ずかしいよな。
 みんな平気なんだろうか。どんな表情で画面を見ているのか暗いせいでわからないけど。
 怪人の手下役の野球部がスタンバイした場面の映像になった。それを見た千晶ちゃんが盛大に声を出して笑ってる。
 森園主将と玉城は「そんなに笑わなくても……」って同時に言った。
 確かにこうやって落ち着いてみると、けっこうおもしろいとはオレも思うけどね。

 上映会はにぎやかで、なごやかなうちに終了した。
「面白かったか? 千晶ちゃん」
 リュウジはこの中で唯一、当日の様子を知らない千晶ちゃんにそう訊いた。
「もち、楽しかったよ。みんなけっこう舞台度胸あるんだね、感心しちゃった」
「そうそう。本番前に緊張してたのオレだけだったしね」
 ノブオに言われる前に慌てて自己申告するオレである。我ながら情けない。
「え? ハヤトが? あはは、それは意外すぎ」
「だよな。でも俺、ちょっと安心したんだよな。ハヤトも人間だったんだな、って思って」
「リュウジ。それはハヤトが人間よりは怪人寄りだったとでも?」
「え~と、ダイゴ。できたらそこはフォローしてほしかったんだけど。オレとしては……」
 がっくりしつつ言ったら、ノブオが黙ってオレの肩に手を置いてくれた。なんだかな。

 千晶ちゃんは「あたしも出たかった」なんて残念そうにしていた。
 玉城は「文化祭のクラスの出し物でもう一度やらない?」とか言ってる。
 森園主将に至っては「クラスは違うが自分も主役を獲る自信がある」んだそうだ。
 それを聞いたリュウジは「かかって来いや!!!」なんて、ポーズをとってみたりして。
 どうなることやらわからないけど、こうしてみんなで話してること自体が楽しいんだな。
 視聴覚室の鍵を返しに、赤ジャージのいる体育教官室へ向かっている。渡り廊下から見上げた空は青くて、それでも盛夏のころよりは幾分湿気が少なくて、澄んでいる感じ。
 夏休みの余韻を残しつつも、こうしてオレたちの元に日常が戻ってきたっていう実感がオレを包んでた。悪くないね、うん。

 再開した日常への充実を感じていたオレが異変に気づいたのは、帰宅した直後だった。
「ただいま、親父」
 しばらくぶりの日常の断片である。学校から帰ると玄関ではなくて店先から家へ入る。
 そこで親父が仕事してるんだかサボってるんだかの姿に帰還を告げるのがいつものこと。大概そこで親父は軽くオレに「おかえり」なり何なり返してくれるんだけど、今日の親父はなんだかいつもと様子が違う。
 オレのただいまに対して、親父は無言を貫いてこちらを振り返ろうともしない。
 修理預かり中の単車の前に座り込んではいるが、手には工具すら握られていない。
 どうやら親父は機嫌が悪いらしい。
 年に何度も見ないけど、そんなときの親父はいつでも何かに怒ってる時なんだ。



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コメント

ヒーローショーも、無事終了しましたね。
ゲストに千晶ちゃんを招いての、上映会ですか^^
もし、千晶ちゃんがヒーローショーに出たとしたら。
悪役に攫われたヒロインみたいな、位置付けが合いそうですね(^ω^)
そういうパターンでも面白そうです(’∀’*)

おっと、ハヤトの親父さんのご機嫌が悪いようで。
目の前にある、単車に関係がありそうな気がしますね…^^;

>鬼ムチコさま

ども~(*^ー^)ノ

>もし、千晶ちゃんがヒーローショーに出たとしたら。
>悪役に攫われたヒロインみたいな、位置付けが合いそうですね(^ω^)
攫われる――っ!!!
おおお、それは見所満載ですわ~☆
千晶ちゃんも出してあげたかったですねえ。うん。
いろいろ想像ってか妄想できますw

>おっと、ハヤトの親父さんのご機嫌が悪いようで。
そのようでございます。
さあ、いったいどうしたんでしょうか。えへへ。

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