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単車屋お天気屋 2-1



 結局その晩、お袋は帰ってこなかった。
 親父からは何ひとつ話を聞けないまま朝になって、いつも通りに迎えに来たリュウジと一緒に学校へ向かう。
「で? よっぽどの原因があったんだろ? そんな大々的に喧嘩ってことは」
 昨夜頼んだ出前を届けに来たのがリュウジだったから、大体の事情は把握してくれている。だから『お袋は帰って来なかった』と言ったら本気で心配している顔になる。
「さあ。オレも知らない。親父、何も話してくれないし。訊いてもムダだった」
「そうか。わからなくもねえけどな。でも心配じゃねえか?」
「まあね。けど、お袋はきっと実家だろうから。今までも何度かあったし。こういうこと」
「ならいいけどな。ってか、母ちゃんの実家は遠いのか?」
「近いよ。オレがこっち来る前に住んでた町だから。電車でも30分かからない」
「なるほど。けどな、ハヤト。お前あとでちゃんと母ちゃんの実家へ電話して確認しとけな。親父さんは気まずいだろうからな。それは息子の仕事だぜ」
「そうだね。そうする。昼にでも電話かけてみる」
 オレが言ったらリュウジは笑って頷いた。

 夏休み明けの翌日だってのに、いきなり今日から通常どおりの時間割。なんだかペースがうまく戻ってこないもんだから、ってのは言い訳だけど、どうにも眠い。
 それでもどうにか実習を含めた午前中の授業をやり過ごして迎えた昼休み。
 オレは朝リュウジに言われたミッションをこなすためと、それから昼飯を都合するために裏門から学校の外へ出た。歩きながらあくびを噛み殺している最中。
 別に学校で電話をかけてもいいんだけど、なんだか人前だと気恥ずかしいし。
 別に購買で昼飯を仕入れてもいいんだけど、混雑してるし、ってことで。
 学校に一番近いコンビニへ行った。そこの前でまずオレはお袋の実家へ電話をする。
「もしもし? ばあちゃん? うん。オレ……ああ、うん。まあね、そんなとこ。で? ああ、そう。よかった。じゃOKだね。そしたら、うん。近々そっち行くから。うん」
 電話をとってくれたのはばあちゃん――お袋の母上だった。話し好きな人なので、オレが多くを語るまでもなく一方的にオレに必要な情報を流してくれたんだった。
 いわく、昨日の昼前にはオレのお袋はばあちゃんのところへ確かに行っているとのこと。
 お袋はあっけらかんとしたもんで、今日も人に会う約束があるんだと言って、実家からすでに外へ行っているんだそうだ。
 ともかく心配はいらないんだ、とリュウジにも言いたくて、オレは急いでコンビニ店内に入って食料を仕入れて学校へ戻ることにした。

 買い物を終えて外へ出ると、遠くから近づきつつある爆音がオレの鼓膜を刺激する。
 それは2台の単車が奏でるノイズの絡み合う音だ。
 片方は聞き覚えのある周波数だな、なんて思いながら音が次第に大きくなるのを感じながら道を見ていた。
 いくらも待つことなくオレの目の前を通り過ぎたのは、ほら思ったとおりだ。
 単車を駆って通りを走り抜けるハンゾウの姿、そしてそれに追い縋る誰かのマシン。
 2機はあっという間にオレの目前を通過してゆく。辺りの静けさにしばし混じる残響。
 見送るオレに感じられたのは、どうやらハンゾウはそれなりに本気の走りをしていたこと。遊びで走っている速度じゃかなかったと思う。
 おそらく何かしらの『勝負』だったんだろう。
 相手の姿には見覚えはなかったものの、ハンゾウと張り合うのならそれなりの実力がある人物なんじゃないか、なんてぼんやりと考えていた。

 暗黒水産は今日も午前中で帰れる日だったんだ。ハンゾウ、制服じゃなかったよな――とか、どうでもいいことを思索しながら教室へ戻った。
 そしたらリュウジがいきなり訊いてきたので、直前に見た光景はオレの中であっという間に霧消する。
「オウ、ハヤト。どうだ、母ちゃん実家にいたのか?」
「うん。大丈夫みたいだ。安心したよ、オレ」
「そうか。それならよかったぜ。俺もほっとした」
「心配かけて悪かった、リュウジ」
「わはははは!!! 大したことねえって。俺は通りすがりの部外者みたいなもんだからな」
 とか言いながら、リュウジはオレなんかよりよっぽど目に見えて安堵している顔になる。
「ってか、昼飯早いとこ片付けたほうがいいんじゃねえのか? お前、喰うの遅いからな」
「ああ、そうだね。そうする」
 言われてコンビニの袋を開けるオレに合わせて、リュウジも自分の弁当箱を机に置いた。
 そうか。待っててくれたんだ。さりげなくリュウジらしいな。



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