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単車屋お天気屋 3-2



 そんなに飲んだわけでもないだろうに、その晩の親父はあっという間に出来上がった様子で、晩飯を片付けると夜もまだ浅いうちに眠ってしまった。
 寝室から規則正しくいびきが聞こえてくるのを確認したオレたちは、大きな音を立てないようにこっそりと外へ出た。
 今夜は集会がある。
 リュウジをリアに乗せて一度昇龍軒へ。そこでリュウジも愛車に跨って、2台連なって河川敷へと向かった。
 いつもの場所に降り立ってみたものの、そこには仲間の姿はまだなかった。
「やっぱりちょっと早かったようだな」
「だね。いつもの時間まであと30分くらいあるし」
 だったら先に国道をすこし流そうか、と言いかけたけれど、リュウジの言葉に遮られた。
「なあ、ハヤト。親父さん、思いつめてるみたいだよな……」
「あはは、なにもリュウジがそんなに深刻になることないって」
「って、お前。笑ってる場合なのか? 俺、すげえ心配になってきたぜ。集会の時間ちょこっと遅らせて、今からハヤトの母ちゃんとこ行ってみるか?」
「え。ちょ、リュウジ……」
 冗談とは思えないリュウジの声。暗いながらも覗けば真剣そのものの目の色。
 それを見てしまったオレは、いくら自分がどう思っていようとリュウジの懸念を払拭させないといけないんだと気がついた。
「リュウジ。ウチのことは心配いらない。オレが自分でなんとかするから」
「でもな、ハヤト。あんな親父さん見ちまったんだしな」
「まったく、ウチの道楽親父ときたら世話がかかるよな」
 すこし声のトーンを上げてオレは言う。虚勢を張るのだってテクニックだ。
「オレ、こう見えても親父のお守りはけっこう得意だから。第一、オレも親父もリュウジにお守りしてもらったんじゃ、ほら。ノブオが機嫌悪くするしね」
 通りのほうからこちらへ近づいてくる単車の音が耳に届いた。その主が頭に浮かんだから、最後にそう付け加えておいた。
 ノブオとダイゴのマシンが見えてくる。
 相次いで、ほかの仲間たちもちらほらと姿を見せ始めた。
 今夜は集会。夏休み明け一発目の気合を入れる大事な、いわばひとつの儀式なんだ。
 ここぞという時にリュウジが些細なことに気をとられてる、なんて絶対に善しとしない。

「そしたらみんな、秋も気合入れてくぜ!!! 夜露死苦ぅ!!!」
「夜露死苦ぅ!!」
 響く漢の声。合わさって怒号となる男たちの声。
 いつもの4人だけではなくて、都合のつく構成員たちがこぞって集まった河川敷一帯はそれなりに柄のよろしくない雰囲気が出来上がっていた。
 鬼工女子の夜に行きたくない場所・不動のナンバー1とされる理由がよくわかる。
 こないだまでの夏模様はいつのまにか薄らいだようだ。海のほうから流れてくる、潮の香りが混じった夜風は心持ち涼しさを増している感じ。
「よっしゃ!!! そしたらみんなで走るか」
「お~!!」
「そうこなくっちゃな、総隊長」
 リュウジの叫んだのへ、みんなこぶしを突き上げて同意を示す。

 夜の国道をみんなで走った。単車の数は50とちょっと。リアに乗ってる構成員もいたので、実際の人数はその1.5倍弱というところか。
 どの単車も爆音なので――その大半は親父がチューンしたやつだけど――夏の賑わいが去ったとは言えそれなりに車の数のある海沿いの国道は、あっという間に騒々しくなる。
 それに呼応するかの如く、お巡りさんが現れて。
 こんなところでとっ捕まるのもいただけないので、オレたち一団はなるべく礼儀正しく、ってのも妙だけど、できるだけおとなしく走って、そこらを一周して元の河川敷へ戻った。
 秋の初めの鬼浜爆走愚連隊の大きな集会はこれにて終了。
 もちろんシメにはもう一度リュウジの夜露死苦コールが響いた。
 その瞬間、草むらで鳴いてた虫が黙ったような気がした。




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