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単車屋お天気屋 4-1



 三々五々引き上げていく仲間たちの背中をリュウジたちと一緒に見送っている。
 すっかり場が閑散としてきた頃に言ってみた。
「リュウジ。オレ、もうちょっと走ってから帰ろうかと思って」
「うん? そうか? お前早く帰らなくていいのか?」
 と、リュウジは小声で返す。おそらくダイゴやノブオにオレの家の事情を悟られて、不要な心配をさせまいとしたんだろう。
「ああ。それは大丈夫だ。親父は寝たら朝まで起きないよ」
「さすが親子だな。いや、違うか。ハヤトは朝でも起きないもんな」
 くくっ、と笑った顔を見せたら、リュウジも口許をほころばせてる。
「っていうか、親父のお守りで疲れちゃったからさ。夜くらい楽しんでもいいだろ?」
「よっしゃ。そしたら決まりだな!!! なあ、ダイゴ、ノブオ。俺らもうちょっと走ってくけど、一緒に行くか?」
「押忍。せっかくなのでお伴しよう。ノブオも行くであろう?」
「ももももちろんっス、ダイゴさん!! 兄貴、オレも夜露死苦っス~」
 仲間たちの決断は早い。なんか自然でいいよな。

 さっきみたいに大勢で走るのは盛り上がる。賑やかでテンション高くて、本当に楽しい。
 逆に勝手に気の向くまま、ひとりで走るのもオレは好きだ。
 けれどいつもの4人で国道へ乗り入れるっていうのは、言うなれば日常なんだけど、それでも何かしらとても大事なことに思える。
 今宵、お決まりルートを流す2度目の走行は、気心の知れた仲間同士の気安さに満ちていた。それにオレの気分は救われている。
 なんとなく、すぐに家に帰りたくなかったんだ。
 事情を訊くことも許されず、お袋はいなくて、親父はおかしなことを言っていて、普通ではない――お決まりとはほど遠い、どうかしてしまったオレの家に。

 ああ、そうか。そこに意識が行くとちょっと考えちゃうよな、オレでも。単車に乗ってるときはあんまり余計なことを考えないほうだと思ってたけど、さすがに。
 なんて、そぞろに思いを散らしていたタイミングで、奴らはオレたちに姿を晒した。
 リュウジを先頭に信号待ちをしていたオレたち4人の前に横道の県道から国道へと折れてきた奴ら――各々黒の革ジャケットを着て、横切りざまにオレたちへ禍々しい視線を投げて寄越す連中。
 言うまでもなく暗黒一家の4人であった。
 4人揃ったところを見るのは久しぶりだな、とか気楽なことを考えていたのはオレだけだったに違いない。
 コウヘイの態度は明らかにリュウジを挑発している。
 そしてリュウジはそれに逆らわずに、暗黒一家の撒き散らす騒音の巷へと我先に食らいついてゆく。
 コウヘイの挑発そのものは「いつものこと」の範疇だ。奴らは事あるごとに、というか何もなくてもオレたちに因縁をつけることが生き様とでも思っている節がある。
 オレとハンゾウはときどき道で出くわすと、腕比べと称して勝手に勝負気分でスピードを競うこともあるけれど、それはあくまで隊間の『闘い』の域とは異なるという互いの認識がある。
 それとは違ってこんな場面では、いつもだったら闘う意味も見出せない状況で挑発にのるリュウジではない。
 今日はまるで誘われるのを待っていたように諾々とコウヘイのあとを追って、海辺の倉庫街に乗り入れていった。オレたち3人、それとハンゾウらもリーダー達に追従する。
 夜の色の海からは波音が絶え間なく聞こえてくる。
 
 向かい合って列を成すように単車を止めた両軍である。
 口火を切ったのはリュウジだった。
「随分と久々じゃねえか、コウヘイ」
「ふん。貴様に挨拶する為に呼び止めたわけじゃねえがなあ」
「御託はいらねえぜ!!! お前、勝負したいんだろ?」
「貴様が望むならばな」
「俺が、じゃねえだろうが!!! まあいいぜ。今の俺は気合充分だからな。お前がその気なら受けてやる!!!」
 もしかしたら今夜のリュウジはいつものオレやハンゾウと大差ない、いわばレクリエーションの気分なのかもしれない。そうでなければ意味のない勝負なんて受けないだろう。
 それはそれで珍しいけれど、オレには気持ちがわかる。
 夏の間ずっと勝負そのものが棚上げだった好敵手と久々に相見えたのだから。



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