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単車屋お天気屋 4-2



 しばらくぶりの対決に、リュウジは熱を迸らせてコウヘイに視線を向けていた。
 対するコウヘイは冷静というか、それを通り越して冷徹とも言える空気を発している。
 排気量の大きい単車の発する爆音がアスファルトに響く。真夏よりは乾いた空気に混じってオレの鼓膜を揺さぶるそれは、やけにオレの興奮を煽る音だ。
 仕切り役はハンゾウだった。いまや遅しとコールを待つ2機を見据えて、大きく手を振りかざす。
「Ready――Go!!」
 言ったのだろうけれど、その響きのほとんどはノイズに紛れてかき消されていた。

 リュウジとコウヘイのマシンは瞬く間に立ち並ぶ倉庫の群れを抜け、国道へと向かっていった。
 スタート直後に早速リュウジがコウヘイに突っかけていったのが見えた。もちろんコウヘイも負けじと突っぱねる。
 遠ざかるテールランプを見送るオレたちにできることと言ったら、ただリュウジを信じて待つだけである。
「ハヤトさん。兄貴、大丈夫っスよね?」
 ノブオが若干心配そうな顔でオレを見た。
「ああ。リュウジ、気合入ってたし。な、ダイゴ」
「押忍。簡単に先行を許したりはせんだろう」
「ですよね!!」
 オレとダイゴがそう言うと、ノブオはほっとしたような表情で大きく息を吐き出した。
 目の前で繰り広げられる喧嘩勝負とは違って、戦況が具に見られない単車勝負の途中経過は待つ身にはまったくわからない。
 できるのはただ信じることだけ――オレが出ているときも、みんなは似たような気分でいるのか、と思うと、信じられているってことへの責任感が今更ながらに身に沁みる。

 対面では暗黒一家の連中が、今日はやけに盛り上がっている。
 どちらかと言うと黙して勝負がつくのを待つのが奴らのスタイルなんだけど、今日は3人して話したり、笑ったりしているようだ。
「なんか笑い声がしゃくに障るっス……奴ら、余裕じゃないっスか?」
「そのようだな。まあ、仕方ないのではないか? おそらくコウヘイが旅先から帰ってきたばかりなのだろう」
「うん。ほんの3日くらい前には3人で走ってたのを見たし」
「だったらノブオなら奴らが盛り上がるのもわかるのではないか?」
「え? なんでっスか、ダイゴさん」
「ノブオとて、リュウジがしばらく留守にしたあとに戻ってきたとしたらどうだ?」
「そうそう。ものすごいテンションになるんじゃない? コウヘイと勝負したって負けないくらいの気分にはなるだろ、少なくとも」
「ああ、そか。ナルホド」
 ノブオは納得したみたいだ。

 たしかに暗黒一家は上機嫌だった。
 ちょっと前までしょげていたゴンタは俯いておらず、タカシも調子よさそうに甲高い声で喋っていて、ハンゾウでさえもタカシに軽くちょっかい出しているような気配。
 決してオレたちが不機嫌なわけではないけれど、確実に奴らのほうが楽しそうだった。
 付き従う者どもの上機嫌と同調しているんだろうか。
 それらを従える者も好調だったらしい。
 決して勝負を買った側が不調だったということじゃないはずだが――

 オレたちの待つ地点に戻ってきた2機は、ゴールラインのすれすれまでデットヒートを繰り広げていた。
 火花が散るかの如く。
 路面をこすったタイヤから生じたのか、その気迫が幻となってオレの目に届いたのか。
 最終の直線を真っ向勝負で駆け抜けたノイズのうち、オレが聞きなれたほうの音が一歩遅れてにラインを超えたようだった。



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