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単車屋お天気屋 5-1



「ハヤトのせいじゃねえってのに。何度言ったらわかるんだ? そんな顔すんなや!!!」
「悪い。でもオレ、なんか……」
「まったくお前ときたら案外頑固だからな」
 すっきり割り切れないオレの顔を見てリュウジは苦笑いを作っている。
 昨夜、久しぶりに単車勝負と相成ったリュウジとコウヘイ――鬼浜爆走愚連隊と暗黒一家のリーダー対決が勃発した。
 気合に満ちて勝負に臨んだリュウジであったが、コウヘイに遅れをとった。
 そう、昨夜の軍配はコウヘイに上がった。
 あんなに気合の入っている状態のリュウジが負けるなんて、普通のことではないようにオレには思えた。
 もしや、と意識がそこへ至ったら、ひたすら申し訳ない思いでいっぱいになったんだ。
 いつものようにリュウジが家まで迎えにきてくれた今朝、リュウジの顔を見るなりオレは思わずごめん、と口走っていた。
 もしかしたら。リュウジは勝負の最中に喧嘩中のウチの親父とお袋のことを思い出したりしたんじゃないか、と。

 朝の教室で始業のチャイムを待ちながら、リュウジが言い放つをの聞いている。
「ハヤト。俺は勝負の最中に余計なことなんかまったく考えてねえぞ? 申し訳ねえけど、はっきり言ってハヤトの親父さんと母ちゃんのことなんて思い出しもしてねえって」
「そう?」
「当たり前!!! ってか、もし昨夜勝負に出たのがお前だったとして、勝負の最中にそんなこと……って言ったら悪いが、思い出すか?」
「ああ、そうか。言われてみればそうかもしれない」
「だろう? まったくハヤトは肝心なところで鈍いわりに妙なことで悩むんだよな」
 わはは、とリュウジは豪快に笑った。つられてオレも幾分引きつりながらも頬の筋肉を持ち上げることに成功した。

 笑いを収めたあと、リュウジは急に真顔になってオレを見る。
「奴な。昨夜は尋常じゃなかったぜ。気迫とか、そんなの通り越してたってか。鬼気迫る、ってのか? そんな空気を放っててな。でもって、それだけじゃねえんだよな」
「他にも何か?」
「オウ。負け惜しみじゃねえと思ってもらえるといいんだが、何だか駆け引きを吹っ掛けてくるタイミングが夏前とはちょっと違う感じだったんだぜ」
「へえ。コウヘイが」
 オレが口を挟むのにリュウジはもっともらしく頷いた。
「裏をかく、ってのか? 奴だったらこんな時はこのパターン、ってのがあるだろ? その読みがことごとくはずれたって具合だな」
「なるほど――そうか。そしたら珍しくコウヘイは素直な気分だったのかもね」
「素直だと? どういう意味だ、ハヤト」
「コウヘイって『こうして欲しくないんだけど』ってこっちが思ってると、その読みどおりの仕掛け方をするだろ? それが当たらないんなら逆に正攻法だったんじゃないの?」
「む……なるほど。そういう見方もできるのか。さすが賢いな、お前」
「そんなんじゃないって。っていうか、オレ、そんなコウヘイと一戦交えてみたくなった」
「オウ!!! ハヤト、頼もしいこと言うじゃねえか」
 リュウジが満足そうに――そう、前夜負けを喫したとは思えないほど清々しい表情で、組んだ腕を解いてオレの目の前に握りこぶしを突き上げたんだ。

 そのタイミングでチャイムが鳴り、しばらくあとに教室の前の扉ががらりと開いた。
「おーす、お前たち。今日もいい朝だな。出席をとるぞ。席につけ!!」
 赤ジャージの登場である。足取り軽く教卓へ進む姿を見て、リュウジが突っ込んだ。
「お。赤ジャージ、なんか気分よさそうだな? いい朝って何だ?」
「天気がいいと気分がいいだろう、リュウジ?」
「まあ、そりゃそうだがな。それにしても赤ジャージ、いやにニヤニヤしてねえか? なあ、ハヤト。あ、さては昨夜マキ姉と食事でもしたんじゃねえのか?」
「ば……馬鹿者!! 教師をからかうやつがあるか!!」
 赤ジャージはリュウジの頭へ出席簿の角をぶつけるために、オレの隣の席までご丁寧にやってきた。
「痛えって。暴力反対だぜ。顔真っ赤にしてやることじゃねえよ。そんなんじゃマキ姉と結婚できねえぞ?」
「余計なことは言わんで結構だ」
 とか言いつつも、やっぱり密かな笑みが赤ジャージの頬に潜伏しているのがわかった。
「けどさ、結婚なんて、そんなにいいもんじゃないかもしれないよね……」
 オレが頬杖をついたまま言ったら、赤ジャージはぎょっとした顔でオレを覗き込んだ。
 ……失言だったかな。


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