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単車屋お天気屋 5-2



 授業を終えて放課後のこと。
「ただいま、親父。何サボってんの?」
 習慣どおりに店先から帰還すると、親父は書類棚の前の机についてぼんやりと天井を見上げていた。
「べつに何も」
「何も、って。仕事は?」
「今日は暇だ。修理品も預かっていないし、午前中に1台新車を承ったし。もう今日の仕事は充分こなしたさ」
 そう言って、親父はため息をついた。机に飾ってあったラジコンの単車をいじっているのは、よっぽど手持ち無沙汰なんだろう。
「ああ、そう。まあ、こんな日があってもいいかもね」
 オレの言葉へ返事はなかった。代わりにもうひとつため息。
「皮肉なもんだ。こんな日に限って暇とはな……」
「こんな日って? 天気いいじゃん、今日」
「そういうことではないのだ、我が無粋な息子よ」
 覇気なく言って、親父はキャスターのついた椅子をくるりと回転させて、オレに背中を向けたんだ。
 そうか。今日の親父どのは、寂しいんだな。
 お袋と喧嘩をした一昨日は怒ってて、出て行ったお袋が帰ってくる気配がないまま昨日は開き直ったようにテンションが高くて――今日は落ち込み気分なのか。せわしない人だ。

 これまでの経験上、こんなときの親父には何を言っても無駄なはず。
 問題の根本が解決するまでころころと気分を変え続けるに違いない。
 それも厄介だ――そう結論したオレは、脱いだ学ランをハンガーに吊るした手で単車のキーをとった。
 自称親孝行息子としては、ここはひとつ動いてみるか。
 
 玄関でブーツを履こうとしたところで、思い立って電話をかけることにした。
 まずは昇龍軒だ。
「ども。駅裏の魔速商会……あ、リュウジか。うん、そう。ちょっと出てくる。でさ、悪いんだけどウチの閉店するころに、何か出前――そしたらリュウジのオススメのほうで……うん。じゃあそれで。よろしく」
 よし。これで親父が飢えることはないだろう。
 そして、今度は別の番号を呼び出す。
 1コール……5コール――10コールしたところで諦めて受話器を戻した。
 どうやらばあちゃんち、お袋が戻っている実家は留守のようだ。
 きっと買い物かどこかに行っているんだろう。オレがつくころには誰かしら、できたらお袋がいてくれるといいんだけど。
 電話機に願を掛けてもしょうがないけど、なんとなく拍手なんて打ってみるオレ。
 ともかく動かなくちゃ何も起きないから。だからオレは愛車のエンジンをかけた。
 向かう先はお袋の実家。オレが中学時代までを過ごした町を目指して。

 海の方角を背にして県道を北上する。
 アスファルトから照り返す熱気は、このごろ随分と凌ぎやすくなってきている。さわやかな季節へと移っていくこの時期が、実はオレはけっこう好きだ。
 過ごしやすい時期っていうのは、昼寝にも向いてるしね――とか、いつか言ったことがあるんだけど、お前の睡魔には気候なんて無関係だろってリュウジに爆笑されたんだった。
 国道ほど信号が多くないので、混雑する時間でなければそれほど走りにくい道ではない。
 郊外ならではの駐車場が広いパチンコ屋が数軒あって、その誘惑に駆られないわけではないけれど、それなりに使命感があるので今日はスルーしておこう。
 道の途中に果樹園が集まっている一帯がある。思い立ってそこで梨を買ってみた。ばあちゃんの好物だ。手土産持って、さて急ごうか。鬼浜町から20kmのオレの昔の地元へと。



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