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単車屋お天気屋 6-1



 かつて通りなれた駅前の道は、夕方近くになってきたのでかなりの人出があった。
 そういえば中学の頃は免許なんて持ってなかったから、ここらへんの公道を単車で走ったことはないんだ、と今更思う。
 かつては歩いて通りなれた道。久しぶりに通る懐かしさと、眺める視点が違う新鮮さがないまぜになって不思議な気分。
 駅前の通りを抜けて1kmほど走ると、お袋の実家はもうすぐそこだ。
 なるべく吹かさないように注意しながら――若干無駄な抵抗ではあるが――ばあちゃんちにたどり着いた。
 古風な、というか、実際に古い一軒家。平屋建てでけっこう広い、昔の日本家屋みたいになっているばあちゃんち。門の前に立つと、もうしばらく嗅いでいないこの家特有のにおいが鼻の奥に感じられるような錯覚。もちろん気のせいだけど。
 呼び鈴を鳴らす。
 反応なし。
 まだ外出中なのかな――もう一度呼び鈴を鳴らす。
 やっぱり反応なし。
 念のため、門を開いて庭先から様子を伺ったけれども、家の中はどこも電気がついていなかった。やっぱり留守みたいだ。
 さて、どうしたものか。このまま諦めて来た道を引き返すしかないのかな。

「あれ、ハヤトじゃね?」
 門の前で悩んでいたら、後ろから声をかけられた。振り向けば幼馴染のタクミが学ラン姿でにっと笑って立っていた。そういえばこのすこし先に住んでたんだっけ。
「あ、タクミ。久しぶり……ってほどじゃないか」
「だな。こないだ会ったもんな。つーか、珍しいな。こっち来たんか。おばあちゃんに会いに来たんか」
「うん、そんなとこ。でも留守みたいでさ」
「そかそか。んじゃ、人待ちがてらってことで、おやつでも喰わね?」
 オレの中学卒業を機に鬼浜町へ引っ越したオレたち一家。
 この町を出て以来、1年とちょっとぶりにタクミに再会したのは先月のこと。
 飛び入り歓迎の触れ込みで開催された、リュウジとダイゴたちの鬼浜中学同窓会にお互い偶然参加したんだった。確かにそのときは「久しぶり」だったけれど、それ以降はたまに連絡を取り合っていたこともあって、今や「旧友」ではなくて現在進行形の「友達同士」のタクミとオレ。

 タクミに誘われて、駅前のファミレスへ行った。
 注文はタクミがグラタン――あくまでこれがおやつらしい――、オレはチーズタルト、ドリンクバーを2人分。それで時間つぶしの復活したくされ縁どもである。
「んで? おばあちゃんに急用?」
「正確にはばあちゃんに、じゃないんだ。いまお袋が里帰り中で、ちょっと話したくて」
 軽く訊いたタクミに、オレもごく軽く答えた。コーヒーがちょっと濃いので砂糖を入れてかき回す。
 そんなオレの手元が狂うだけの言葉をタクミは継いだ。
「へー。里帰り。って、もしかしてハヤトんとこのおばさん、お産とかだったり?」
「え? ……え、ま、まさか――」
 思いもよらないタクミの発言に、オレは勢いあまってカップから引き抜いたスプーンをテーブルに落とした。けっこう大きい音がした。
「っていうか、なんでそう思う?」
「や、俺の母ちゃんも弟産むときそうだったし。俺が幼稚園ときだけどな。だから里帰りっつったらそうかなー、なんて。言葉の響きがそんな感じじゃね?」
 からからとタクミは笑ってる。その向かいでオレは渋い顔をしてると思う。
 まさか、まさかとは思うけど。でも、その可能性がないわけじゃないのか。
 親父から直接、喧嘩したって聞いたんじゃないし。それにお袋、まだけっこう若いし。
 なんだか考え込んでしまうオレに、タクミはそれ以上突っ込んでは来なかった。
「それはそうと、今度の連休、空けてるよな? ハヤト」
 タクミとは次の連休に単車で少し遠出する約束になっている。
 そこからはその打ち合わせに時間を使った。電話であれこれ話すよりも手っ取り早くて、気分もかなり盛り上がった。
 しばらく時間をつぶして、ドリンクも我ながら元を取ったと思える程度にいただいて。
 ばあちゃんちの前で、それじゃまた、とタクミと別れたのは夕暮れ直後のことだった。

 もう暗いのにばあちゃん家にはまだ電気が点っていない。
 念のため呼び鈴を鳴らしてみたけれど、案の定反応してくれる人はいなかった。
 仕方なく置かせてもらっていた単車にエンジンをかけて、親父を寂しがらせるのも哀れなので遅くならないうちに帰ろう――と思ったところでふと、ある案が湧き上がった。
 道すがらで買った梨のうち5個を玄関にメモ付きで置いて、残り3個を袋へ戻して、オレはもうひとつの心当たりの場所へ行き先を定めたんだ。
 次なる目的地は従姉の亜由姉さんのところ。
 絵描きの亜由姉さんの仕事場兼住居は、ここから鬼浜町へ続く県道の途中にある。
 亜由姉さんとオレのお袋は、年齢にして10も違わない。そんなこともあって、ふたりは姉妹のような付き合いをしているんだってことに思い至った。
 もしかしたら亜由姉さんなら何か知っているかもしれない。



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