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単車屋お天気屋 7-2



「お袋、旅行中なんだってさ。どうもそれが根本的な原因で親父と喧嘩になったらしいけど、それ自体を逆上した親父が忘れてるんじゃないかって。亜由姉さんが言ってた」
 しばらく間をとってから、オレはやっとリュウジに伝える気になった。
「そうだったのか。それ聞くとな、親父さんらしいよな」
「うん。そうだね」
 この点においてはリュウジを納得させられたみたいだった。
 それでもって、話にはまだ続きがあるんだよな。
 先を促す素振りをあえて見せないリュウジに向けて、オレは聞いてほしくてこう続けた。
「で、帰り道にハンゾウと出くわしてさ。お互い単車だったから、行きがかり上勝負みたいになって。そこまではいいんだけど、知らない奴――ああ、ハンゾウは知ってる奴だったっぽいけど、そいつに不意に突っかけられて、バランス失って。地面に変に足をついたらこのザマってとこ」
 こういうときに聞いてくれる相手がいるっていうのは幸せなことみたいだ。
 多分、さっきまでの親父も似たようなものだったんだろう。親子して迷惑な者どもだ。

 たいしてたくさん話すべきこともなかった。あっという間の出来事だったから。
 それでもオレは話したら多少は気分が落ち着いた。
 それに引き替え、聞かされたほうは――
「何だと!!! 知らない奴に不意討ちされただと?」
「そんな大袈裟なもんじゃなかったかも知れない。隙があったのかもね。オレに」
「そういう問題じゃねえだろうが!!!」
 逆にリュウジが熱くなっている。
「おい、ハヤト。その知らねえ奴ってのは、ハンゾウの知ってる奴なんだよな?」
「多分。そんな反応だった。っていうか、そうか。こないだ昼休みに鬼工の周りでハンゾウが誰かとバトルしてるらしいのを見たんだけど、その時の奴かもしれない」
「ってことは、ハンゾウに糾せばいいんだな?」
「え。ちょっとリュウジ、そんな熱くなるなよ」
「何だと? これが冷静でいられるかよ!!! うちの特攻隊長を不意討ちでこんな目に遭わせるような奴をオレが黙って許せると思うか?」
「うん。ありがとう。リュウジがそう言ってくれるだけで救われるから、オレ」
 嘘ではなかった。リュウジが熱くなるのに反比例して、オレはどんどん冷静になってく。
「要するに、今日のは恥ずかしながらオレの不注意だ。知らない奴はいざ知らず、ハンゾウに非はないから。だからリュウジは怒らなくていい。これはオレ個人の問題だ。隊同士のあれこれは持ち出さないでほしい」
「ハヤト――」
「オレはオレが納得できればそれでいいから。ちょっとかっこ悪かったしね」
 無理に笑って見せたけど、それができるくらいまでオレは落ち着いてきていたみたいだ。

「リュウジのおかげで頭が冷えたんだ」
 湿布が効いている足首を見ながら言う。
「オレ、本当はさっきまですごく怒ってた」
「そうなのか? 不機嫌かな、とは思ったけどな。親父さんとのやりとりを見てて」
「うん。それもあるけど、実はものすごく腹が立ってた。足も痛かったし」
「そうだよな。気づいてやれなくて悪かったぜ。ってか、ハヤトが怒るのも怪我するのも珍しいからな」
「確かにね」
 リュウジの言葉はいいとこ突いてた。だからオレは自然にほろりと頬をゆるめて見せる。

「さっきも言ったけど、親父って逆上すると何に対して怒ってるんだかわからなくなるだろ? 昔はオレも同じようだったんだ。親父やお袋と喧嘩すると、学校行っても気分を押さえられなかったり、意味不明に引きずってたりね」
「へえ。ハヤトにも反抗期ってあったんだな」
 リュウジが妙に感心している。
「そりゃね。そんな頃もあった。いくらオレでもね」
 思えばあの頃の不安定さは、よく笑う友達が中和してくれてた気がする。そう、タクミのことだ。
 そして今日。すんでのところで逆上するに至らなかったのはリュウジのおかげだな。
 そういうのを肩代わりしてくれるってのは、オレにとって助かるんだ。
 素直に思えたので、そう言った。
「リュウジがオレの代わりに怒ってくれるって、なんかすごくラクだな、オレ」
「な……んだって?」
 言ったきりリュウジは難しい顔をして黙ってる。
「なあ、ハヤト。俺もだいぶお前については理解できてるつもりだったんだが、さすがに今のは難しかったぜ」
「あはは。難しく考えることないって。気分、気分」
 そうそう。今本気で笑えたことが重要。
 現在のオレにはこの熱い漢が側にいるって思うことが大事みたいだ。
 いつかはオレも親父にとってそうなれればいいけれど。
 親父が怒ってたら、オレに愚痴ってくれたら手っ取り早いよな。
 そうじゃないとリュウジに世話かけすぎるから。親子して頼ったんじゃ申し訳ないし。


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