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単車屋お天気屋 8-1



 翌朝、リュウジが迎えにきたとき、親父はまだ布団の中だった。
 いつもだったらオレが支度するまで店先でリュウジをからかったりしてるんだけど、今日はその予定がないらしい。
「待たせて悪い、リュウジ」
「オウ、慣れてるからどってことねえぜ!!! わはは」
「……そりゃどうもね」
 リュウジの笑い顔に苦笑いを返すオレ。
「それはそうと、学校には遅刻するって電話しといたからな」
「え? 間に合わない時間じゃないよ、まだ」
「そうじゃねえよ。ほれ、病院行くぞ、病院。俺が付き添ってやるから」
 リュウジはオレの足首を指差してそう言った。湿布を貼っているから、今日は革靴ではなくてスニーカーを、左だけかかとをつぶして履いている。
「病院――? いや、2、3日すれば治るだろうから大丈夫だって」
「おい、ハヤト。お前、素人判断ってのは良くねえぞ? 骨がどうとか、なってるかもしれないだろうが。ちゃんと診てもらえ。そうじゃないと俺が安心できねえからな」
 きっぱり言い切る付き添いさんに、無理やり病院送りにされるオレであった。

 リュウジに連行されたのは、町立病院だった。
 レントゲンも撮ってもらった上での診察結果は骨に異常なし。
 湿布薬を処方されて、市販のものより安いのにちょっと得した気分になった。
 さて、無事に務めを終えた怪我人のオレは、待合室で時間をつぶしてる。付添い人が帰ってくるのを待っているところ。
 前に盲腸でここへ入院したときに、リュウジは退院後も大部屋の同室だった人たちのお見舞いに何度も来ていたのを知っている。
 で、当時の同室さんが退院しても、また次にその病室へ入った患者さんと知り合って、またお見舞いに来て、というループになっているみたいで、今でもたまにここへ顔を出すんだそうだ。
 さっき処置室でオレの足に湿布を貼りながら、看護師さんが教えてくれた。リュウジらしい話だな、と素直に思った。

「待たせたな、ハヤト」
 待合室へ現れたリュウジは、鞄のほかに紙袋を持っていた。
「いや、大丈夫。なに、それ?」
「これな、看護師の姉ちゃんに貸してた漫画だ。ついでだから返してもらったとこだぜ」
「なるほどね。仲いいんだな」
「まあな。って、それはどうでもいいぜ。ハヤト、どうだったよ?」
「ああ、うん。どうってことないって。何日か負担をかけなければ治るって言われた」
「そうか!!! それはよかったぜ」
 オレの背中をぽんと叩いて、リュウジは安心した顔を見せてくれた。
「ってことは、幾日か単車は禁止だな」
「うん。しょうがないな、それは。自業自得だ」
「よし、ちょうどいい。返ってきたら次はお前に貸してやろうと思ってたとこだ。ほれ、ハヤト。これ謹慎中に読んどけ。あとで感想聞くから、どっか抜け出したりしねえでちゃんと読めや!!!」
 リュウジはオレに漫画の入った紙袋を持たせた。
「ハヤトなら気に入ると思うんだよな、この漫画。お前の好きなジャンルだからな」
 リュウジは至って満足そうな表情で紙袋を持たされたオレの顔を見る。
「……あの、まさか重いからオレに持たせてるだけじゃないよな?」
「何だと? ハヤト、俺がそういう奴に見えるのか?」
「え。いや、いや――あはは」
 ふざけて拳を握ったリュウジを、ふざけてかわす。ちょっと油断して重心を左にかけると……やっぱり怪我人なんだな、という自覚が戻ってくるオレである。
「あ、痛っ。ちょ、待った。やっぱり痛いって、足」
 まったくもう、心配してくれるやら、いじめるやら。
「こらっ、リュウジ君。けが人を攻撃しちゃダメじゃないのっ」
 ちょうど通りかかったさっきの看護師さんに、リュウジがたしなめられてる。
「たいしたことねえって。ほんの冗談だよな、ハヤト? まったく、お前が大袈裟なんだってのに」
 憎まれ口とか言ってるけど、さっきは心配してくれてたから水に流しておくか。


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