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単車屋お天気屋 9-2



 部屋へ戻って、リュウジに出された宿題をこなすことにする。
 リュウジの貸してくれた漫画は、なるほどオレの好みのジャンルだった。
 言うなればヒーローものの作品らしい。
 ヒーローは悪魔的に強くて乱暴でサディスティックに描かれていた。で、敵対する世界征服を企てる悪の組織っていうのが、どこか憎めないいい人たちの集まりで、お決まりのやられっぷりを見ると何故か同情を禁じ得ない雰囲気。
 ごく当たり前の善悪二元論が当てはまらないギャグ漫画だった。
 なるほど、深いな。敵と言っても悪い奴ばかりじゃないということか。それはオレも薄々感じてはいるけれど。
 どこかオレたちの日々と重なるところもあるかもしれない。

 これだったら案外簡単に宿題というか、感想をリュウジに聞かせられそうだと安心しはじめたところで当のリュウジが現れた。
「お邪魔するぜ」
 玄関のあたりで響く声。続いて階段を上がってくる足音。そしてドアのノブが回る音。
「入るぞ、ハヤト」
「ああ、うん。どうかした?」
「いや、亜由姉に電話もらってな。何でも俺の労をねぎらってくれるとか。よくわからねえけど言いつけに従ってここへ来たんだぜ。言いつけ、守らねえとあとが怖いからな」
 亜由姉さんにはお見通しか。この騒ぎではリュウジにもかなり迷惑かけたってことは。
 
 机に積んだ漫画とオレの手許を見て、リュウジが顔をほころばせた。
「お。ハヤト、感心だな。ちゃんと読んでるじゃねえか」
「まあね。宿題は思い出したときにやっといたほうが、あとがラクじゃん?」
「……なるほどな。思い出す気になるかどうかが肝か。俺、今になってやっと宿題とか出す教師の気持ちがわかった気がするぜ」
 なんて感想するリュウジである。願わくば次の夏休みまでその気持ちを覚えておいてほしいけど。どうだろうね。
「けど、面白いだろ? それ」
「うん。まだ1巻の途中だけど、リュウジが勧めてくれたのがわかるよ」
「だろ? ハヤトならわかってくれると思ったんだよな、俺」
「けっこう深いよな、テーマ。正義の味方は優しいだけじゃないしさ。普通じゃないとこが新鮮っていうか。悪の組織のほうが人気あるんじゃないの? これ」
「お!!! そう来たか。ハヤトがそう読むの、俺は満足だ。ノブオは単にギャグ漫画としか捉えてねえけど、やっぱお前の読み方はスジがいいぜ」
 たった一言感想しただけで及第点をもらえそうな感触だった。うん、よかったよかった。

「ハヤト。真面目な話、ちゃんと何日かおとなしくしとけな。でもって、早いとこ治しちまえ、足」
 オレの左足首を見て、しみじみとリュウジが言う。
「そうだね。そのつもり。心配かけてほんとに悪かった」
「まあな、心配は心配だけどよ」
 と言葉を切って、リュウジは視線をオレの目に移した。
「ここへ来る途中な。俺、ハンゾウを見かけたぜ。俺の知らねえ奴と勝負してたようだ」
「あ――それは」
 昨日の奴かもしれない。リュウジの言葉の続きを待つ
「ハンゾウな、それなりに真剣そうだったんだが、何て言うんだ? こう、あんまり望ましいバトルって感じの音じゃねえんだよな。つまらなそうってか、少なくともお前とやってる時とは比べものにならないくらい義務的ってか。とにかく楽しそうじゃなかったぜ」
 リュウジには何か感じるものがあったらしい。
「うん。リュウジ、正解。さっきハンゾウがウチに来たんだ。昨日、オレが割り込まれた相手は多分リュウジが見た奴だろう。ハンゾウもよく知らない奴らしいけど。最近からんでくるようになったそいつとは、勝負しても面白くないって言ってた。速いことは速いって話だけどね」
「そうなのか」
 リュウジは何か考えるような表情で、斜め上を見てる。
「でも、実際にからまれてるのは自分だから、自分で決着つけるってさ。オレには巻き込んで悪かったって言ってたけど。それだけ言いに来たみたいだ、ハンゾウは」
 ちょっとしてから再びオレの顔を見て、ひとつ頷いてリュウジはこう言い切った。
「それじゃなおさら早く治しちまえや。そんなストレスある勝負ばっかり強いられているハンゾウのはけ口なんかにされたら、それこそこっちが面白くねえもんな」
「いや、まさか。ハンゾウはそういう闘い方はしないだろ?」
 そう答えたら、リュウジはうっすら笑った。
「そしたら、こうか。早いとこお前の好敵手が楽しめるような勝負をしてやれるようになれ、って。な?」

 さすがだな、リュウジは。
 ハンゾウと知らない奴の勝負なんて、ほんの一瞬見ただけだろうに。その時と、オレとの勝負との違いとかリュウジには見えるんだ。
 客観的で冷静。いつもの本人の闘いっぷりとはかけ離れているけど、当たっているので文句のつけようがない。
 だからオレはおとなしく同意した。
「そうだね。了解」
「よし。ハヤトの気分が上向いてよかったぜ!!! なんだかんだお前もたまにはお天気屋だからな。さすが親父さんの血をひいてるだけあるな。わはは」
「え? オレが親父並のお天気屋だって?」
 笑うリュウジに抗議しようとしたところで、玄関のチャイムが鳴った。
「お、亜由姉来たな? オウ、今行くぜ!!! ほれ、ハヤトも」
 これ幸いにとリュウジはオレの背中をぴしっと叩いたかと思うと、速攻で階段を駆け下りていった。
 まあ、それはそれでいいことにしとくか。
 痛めた足をゆっくり進めて階段を下るオレ。次にリュウジを追いかけるべき時までには足も完治してるだろう。
 そしたら今度こそ、身も心も快晴のはずだよな。
 

   *  完  *



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