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若手強化計画 1


 気付いてみれば、夏休みも残りあとわずか。
 リュウジ以下のオレたちは、鬼浜工業高校野球部の森園主将のお招きを受けて、野球部合宿の最終日の打ち上げの宴に参加していた。
 公立高校っていうこともあって、鬼工の運動部の合宿といったら学校で行うのが常。野球部も例に倣っているので、合宿打ち上げももちろん学校の中で開催だ。

 プールの横の藤棚の下で、肉の焼けるいい匂いが漂っている。
 「さあ、どんどん食ってくれたまえ、リュウジ。それからお仲間の皆さんも」
 「オウ!!! 森園、遠慮なくいくぜ!!! ほら、お前らもありがたくいただくぞ!!」
 「押忍!!」
 なんて言いながら、オレたちは野球部の面々と入り混じって、宴に興じることとなった。
 ちなみに、メニューはバーベキューだ。

 「で、どうだったんだ? 夏の合宿は」
 野球部の1年生に盛ってもらった肉を箸でつつきながら、リュウジは森園主将に訊いている。
 「ふふふ、なかなか成果あるものだったよ、リュウジ」
 「そうか。それならいいやな。ああ、そう言えばこの夏は、俺らも合宿したよな?」
 「ああ、鬼浜寺のことだ。あれはあれで成果あったな」
 オレはリュウジに頷いた。
 「そう言ってもらえれば俺としても幸いだ」
 と、ダイゴが返す。

 「そうか。ならお互いよかったな」
 「おうよ!!」
 言い交わしながら、リュウジと森園主将がコーラの入った紙コップで乾杯するのを見ていた。

 「ときに──リュウジよ。お前のとこの若いのは、どうかしたのか? 顔が幾分腫れているように見えるが」
 「ん? ノブオのことか? ああ、あれはな──」
 
 肉を焼く鉄板の前で野球部の1年生諸君に混じって立ち働いているノブオに目をやりながら、リュウジが答えた。
 「昨日の夕方、ハヤトんちの店──ああ、バイク屋なんだが、そこへ向かう途中に暗黒水産の輩に因縁つけられて、喧嘩を買ったらしいんだよな」
 「ああ。オレんとこに来たときは、ぜんぜん目も開かないような悲惨な感じだったぜ。あれでも昨夜よりはマシだな」
 「ほう、そんなことがあったのか」
 顎に手をやりながら、森園主将はノブオのほうを見る。

 「リュウジのとこの若いのは、ずいぶんと血気盛んだな」
 「まあな。その、喧嘩っ早いのが玉に瑕って気もするんだがな」
 苦笑混じりにリュウジが答えた。

 森園主将が言うとおり、今日のノブオは顔を腫らしている。
 昨夜、裏通りで行き会った暗黒一家のゴンタと一戦交えた結果がそれだった。
 単車のウインカーの電球が切れたのでウチの店まで来ようとして、途中で鉢合わせしたゴンタに睨まれただか何だかで、つい手を出したら返り討ちに遭ったのだとか。

 「でもな、森園。ノブオは打たれ強いのが俺の自慢だぜ。ノブオは誰に何度やられても、とにかく再び立ち向かっていく勇気があるのを俺は買っているんだ」
 「ほう。それは見上げたものだな」
 「おうよ!!! まだあと一歩というところの成長過程だが、そこんとこは認めるよな、ハヤト、ダイゴ?」
 「押忍。もちろん」
 「ああ。実際ノブオはよくやってるよ。ときどき信じられないような凄い技出すし」
 リュウジがノブオに期待しているのを、ダイゴもオレも知っている。リュウジが言うように、ノブオはあと少し突き抜けたらかなり強くなるとオレも思う。

 「奇遇だな、リュウジよ」
 と、森園主将は、肉をあぶっている後輩たちの方に目をやりながら言う。
 「うちの1年生にも、将来有望だがあと一歩ってのがいる。ああ、うちのエースのことだけれど」
 「エース……投手か?」
 「その通り。天宮といって」
 森園主将が指さした先にいたのは、先だっての試合のときにピッチャーマウンドを定位置にしていた彼だった。そう大きくはない体つきに、やんちゃそうな瞳をもった彼。
 
 「天宮は、普段はいい投球センスをしているのに、一度打たれはじめると精神的に追いつめられるようで。まあ、打たれ弱いってことか。おたくの若いのと逆といえば逆かな」
 森園主将は苦笑いでリュウジを見ている。
 「とにかく、あと一歩というのは同じだな。その成長を見守るのが先輩冥利に尽きるというか」
 「おお、森園!! まさにその通りだよな。けどよ、実際即戦力になってほしいと思わねえか?」
 リュウジは森園主将にこう切り出した。

 「ふふふ、まあそれは望ましいがね。そう一気に成長したら苦労はないさ、リュウジ」
 「まあな、そう急には望めねえだろうが、それでも森園よ。俺にひとつ策がある。乗る気はねえか?」
 「策──?」

 森園主将に聞き返されて、リュウジは胸を張るようにしてこう答えた。
 「こんど、浜でビーチバレーの大会があってな。俺、それにノブオを出そうと思っているんだ」
 「ほう? ビーチバレー」
 「ああ。たまには別の面から鍛えさせるのもいいんじゃねえか、ってな」
 「ふむ。別の切り口から、ね」
 縁なし眼鏡の奥の森園主将の瞳がきらりと光った。
 「なるほどね。視点を変えるのは悪くないかも」
 
 奇しくも似たような懸念を抱くリーダーふたりが共謀するのを、止められるものは誰もいないはず。
 リュウジの策とやらは初耳だけど、オレは秘かにノブオに憐れみの目を向けた。
 きっと──ただごとじゃすまされないんだろうな。
 

テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

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