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若手強化計画 4


 「よし、それじゃ真剣勝負だぜ!! いくぞ、ノブオ、天宮!!」
 「オス! 兄貴、お願いしま~す!!」
 リュウジの掛け声で最終特訓が始まろうとしていた。
 ノブオは幾分緊張した声を出し、野球部エースの天宮くんは相手コートの先輩ふたりを見据えている。

 「ふふふ、少しは手加減してやろうか?」
 「いいえ主将!! 全力で頼みます」
 「オウ、天宮!! いい心構えだぜ」
 言いざま、リュウジはサーブを放った。

 夜の闇に、すこし小さいバレーボールが白く浮く。まるで満月みたいだ──なんて思いながら見守るオレ、そしてダイゴ。
 鬼浜爆走愚連隊と鬼工野球部、2チームの若手を育成しようという発想から始まった今回のビーチバレー大会への挑戦に至る特訓は、今や大詰めだった。
 本番前夜の最終特訓は、若手チーム対大将チームの練習試合だ。
 オレとダイゴは覚えたばかりのルールを思い出しながら、ジャッジ役に回っている。

 ビーチバレーはラリーポイントシステムの3セットマッチ──1、2セットは21点、3セット目は15点先取だ──、選手は2人で、控え選手は認められていない。決まったフォーメーションもないため、コート上の選手はとにかく多大な運動量を要求されるのだ。

 ここまでの練習量と明日への影響を考えて、この練習試合は1セットのみとリュウジがあらかじめ決めていた。だから、次のセットがあるからという甘えが一切通用しない。
 それもあって、若手の意地と大将の自尊心が開始直後からぶつかり合っている。

 「よ~し、森園。決まったな!!」
 「まあね。これくらいお手の物さ、リュウジ」
 スパイクを決めた森園主将が、颯爽とリュウジとハイタッチ。

 「くそ~、天宮、ごめん。次は取るから、オレ」
 「ああ、ノブオ。でも今のはおれのフォローが遅かった。すまん」
 「いや、そんなことない。さ、次来るから切り替えていこう、天宮!!」
 「だな」
 ノブオと天宮くんは互いを励まし合う──そして、信じあう。
 
 「へえ。なかなかいいチームワークが生まれてるじゃないか」
 ふたたびリュウジのサーブで始まる戦況を見守りながら、オレはダイゴに言ってみる。
 「ああ、そうだな。相手が強いほど、やられるほど燃えるからな、ノブオは。察するにおそらく天宮もそうなのだろう。相乗効果だな」
 「へえ。ダイゴ、鋭いこと言うね」
 
 なんて言っているうちに、今度はノブオのトスを受けた天宮くんの、敵陣コートのど真ん中へ叩きつける攻撃が見事に決まる!!
 「うわ~、やったぁ!! 天宮かっこいい!!」
 「どうも。でも今のはノブオのトスが絶妙だったから」
 言いながら、相手コートに見せつけるように今度は若手チームがハイタッチ。

 「おお、挑発してるな」
 「ははは、ほんとだ。勇気あるなあ、ノブオも天宮くんも」
 そうオレはダイゴに答えて、波打ち際付近まで転がっていったボールを拾いに走った。
 砂に足を取られて、走りにくいことこの上ない。この状況でさんざん走り回っているんだから、ノブオもよほど足腰強くなったんじゃないかな。
 
 結局、練習試合は最後にジュースまで縺れ込んで、結果24-22で大将チーム──リュウジと森園主将側──が若手チームを下した。
 「ふう。どうにか面目が立ったな、森園よ」
 「まったくだね。こんなに接戦になるとはね」
 リュウジも森園主将も、息を弾ませて言う。
 
 「お前ら、よくやったぜ。ずいぶんよく動けてたじゃねえか!!」
 「兄貴……オレ悔しいっス」
 「ふふふ、その闘志、いいね。ノブオ君」
 「主将!! ぜひもう一本お願いします」
 天宮くんは不屈の思いを口にする。ノブオも頷いていた。

 「わはは、受けてたつ、といいたいところだが、天宮よ」
 ペットボトルの水を口に含みながらリュウジが笑う。
 「最初に1セットだけと決めただろ? ならばそれなりの作戦とかペース配分ってもんがあるんだぜ。わかるだろう?」
 「あ──」
 リュウジに言われて、天宮くんがはっと口をつぐんだ。

 「そうだ、リュウジの言うとおり。そのへんの策略を巧く立てることも必要なのだよ、天宮。野球で言えば、打たせるところは打たせる、自ら決めるところはきっちり決める、の見極めはきっちりと、だ。試合中の俺のリードは、そのあたりも考慮しているのだ」
 夏の県大会でベスト4に入った鬼工野球部の捕手が、1年生エースにこう諭す。
 エース・天宮くんは神妙な顔つきで森園主将を見つめていた。

 「ノブオもわかるか? 森園が言った意味」
 「えと、そうですね……」
 「常に進んで仕掛けりゃいいってもんじゃねえ、ってことだ。自分が行きたい気持ちもわかるが、状況を見てどうするか選ぶのも大事だぜ。それに短期決戦になるか、総力戦に展開しそうかって考えると、自然と出方も変わってくるしな」
 「あ、兄貴──そういうことですか」
 リュウジの言葉をカラダにしみこませるように、ノブオは大きく息を吸った。

 「いいか? ノブオの代わりはいねえんだ。だからお前が最大限にチカラを出すにはどうすべきかを常に考えとけや。明日の試合に限らずな」
 「そうそう。天宮もだよ。鬼工のエースは天宮ひとりだ。ほかに投げられる者もいるが、ほかの者はエースではないのだから」
 総隊長リュウジと森園主将の言葉を、若手ふたりはただただ黙って頷きながら聞いている。
 
 静寂の中で、夜の海の波音がやけに大きく鼓膜を揺らした。
 
 

テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

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